「図説 分子病態学」の発刊によせて

 山形大学医学部に,我が国で初めて分子病態学という名の講座が開設されたのは,1987年4月1日であった.そもそもその数年前から,主に医・歯・薬学系学生を対象とした生化学の教科書の執筆者兼編集責任者として,私はかなり困難な作業を強いられていたのであったが,その作業の過程で身に沁みて実感させられたのが,遺伝子工学的技術の目覚しい進歩と,それに伴って急速に発展しつつある分子細胞生物学が,医学研究上いかに重要性を増しつつあるか,ということであった.それまでも「臨床生化学」あるいは「病態生化学」などと名づけられた領域で,生化学と臨床医学の融合が図られてはいたが,それらはあくまでも従来の生化学を土台として分化して来たものに過ぎないと言い得るものであった.しかし今や,遺伝子工学の進歩及びそれに支えられた分子細胞生物学の発展は目を見張るべきものがあり,今後更に加速度的な展開を見せると予想される研究分野と臨床医学との接点に,新たな発想に基づいた学問領域を構築することが,焦眉の急であるという思いは,日増しに募る一方であった.

 医学部長に就任早々,私は文部省に赴き,当時の佐藤國雄医学教育課長に,疾病,とりわけ成人病やウィルス性疾患の本質を解明するためには,これからは分子細胞生物学的研究が必要欠くべからざるものとなること,従って分子細胞生物学は,今後の医学研究及び教育に必須の学問領域となること,そのため山形大学医学部への分子病態学講座の新設を熱望していることを,ひたすら訴えたのである.私の熱意を理解していただき,山形大学医学部に,既存の生化学2講座に加えて,我が国最初の分子病態学講座が設置されたのは,それから2年後であった.

 しかし,講座開設4年後に,私は学長に就任することになり,開設に情熱を注いだ講座の発展も,学部外から見守るほかない仕儀となったのであるが,分子病態学会の設立と専門的教科書の出版が私にとって最大の関心事であった.従って,ここに山形大学の一瀬白帝教授と三重大学の鈴木宏治教授を中心とする多くの協力者によって,教科書「図説 分子病態学」が編纂,出版されることとなったことは,私にとって望外の喜びである.執筆陣には,この分野の第一線の研究・教育者が名を連ね,綿密に検討された編集方針に従って組立てられた内容となっており,今日の医系学生にとって必須の教科書になるものと信ずる.特に,標題通り努めて図解を多くしたことで,昨今の学生にとっては大変理解しやすい教科書あるいは解説書となっている.今一つの私の心残りは,分子病態学会の一日も早い設立であり,その日の来ることを切に願って筆を擱く.

山形大学学長 坪井 昭三


2版の序

 1995年に序章の「新しき酒は新しき革袋に盛れ.……」の記述で始まる初版「図説 分子病態学」を出版してからわずか3年であるが,我々はこの度,改訂第2版を出版することにした.本書は,最新の分子細胞生物学的知識に基づいて,ヒトの疾患を遺伝子と蛋白質の分子のレベルで解説することを目的とし,主に医学部学生の教科書,あるいは卒後間もない研修医や関連分野の若い研究者の入門書として編纂されたものである.

 ご承知の如く,生命科学研究は正に日進月歩の凄まじい勢いで発展しており,生命科学研究の成果が日々の新聞や週刊誌の紙上を賑わしている昨今である.とりわけ,ヒトの疾患の原因解明とその診断法,治療法の開発のための基礎学問領域である分子病態学研究の進展は目覚ましく,極めて短期間に生命現象の理解に重要な新しい遺伝子や蛋白質の発見,疾患の発症原因となる変異遺伝子の発見などが相次いでいる.また,これらの発見を可能にした新しい技術の開発・改良も著しい.

 こうした現状を鑑み,この改訂第2版では全ての項目について,初版項目への単なる加筆・修正ではなく,新たに書き直すことを執筆者にお願いした.また,新たに,第I章 分子病態学の基礎知識では「疾病とアポトーシス」および「補体系の分子機構」の項目を,第III章 疾患の分子病態学では「結合織蛋白異常症」の項目を追加し,より網羅的な分子病態学の教科書を目指した.本書の標題どおり,各項目には可能な限り多くの図解を用い,内容の理解を高める工夫をして頂いた.

 ヒトには8万〜10万種類の蛋白質をコードする遺伝子が存在すると推定され,ヒトゲノム計画の進展によって,2003年にはおよそ全てのヒト遺伝子の構造が解明されるという.しかし,癌をはじめとして多くの疾患の発症には複数の遺伝子の異常が関わっていることが明らかになりつつあり,個々の疾患の発症にどの遺伝子がどの程度の割合で関わっているのかを解明する分子病態学は,正にこれからの学問であることを痛感する.この発展途上の学問領域を一冊の本で漏れなくカバーすることは編纂上容易ではない.しかし,幸いにも執筆して頂いた先生方はいずれも本邦斯界の第一人者であり,初版にも増して充実した内容になっていると自負している.本書の構成,内容等については,今後も継続的に改善する予定であり,読者の皆さんの忌憚のないご感想,ご意見をお寄せ頂ければ幸いである.

 最後に,貴重な研究時間を割いてご執筆頂いた先生方に心から御礼申し上げる.

1998年9月

一瀬 白帝

鈴木 宏治


序にかえて

 新しき酒は新しき革袋に盛れ.

 分子生物学の進歩に伴い,遺伝子工学のように絶大な威力を持った技術(学問)が医学研究にも応用されるようになった.まさに日進月歩,凄まじい勢いで疾患に関与する遺伝子変異や蛋白質異常が同定されつつある.全ての疾患は程度の差こそあれ,遺伝的因子と環境的因子が複合して発症する.がんやエイズも遺伝子病の一種であり,今や分子生物学の知識なくしては臨床医学雑誌を読むことすら難しくなっている.従来,生命現象を支える生理的な反応機構については基礎医学講座で,その破綻に基づく疾患については臨床医学講座で教育されてきた.しかし,奔流のごとく押し寄せる遺伝子・蛋白質分子と疾患についての新知見を,従来の医学部のカリキュラムの枠内で統一的に学生に伝えることは極めて難しい.そこで,一部の先進的な大学では新しい枠組みで,医学における分子生物学の系統的な講義が開かれるようになった.疾患を遺伝子と蛋白質の分子のレベルで解明し,病態の理解と診断,治療に貢献することが目的である.我々は,この新しい医学研究の賜物を「分子病態学」と呼ぶ.新しい実りの新しい器である同講座の生みの親,坪井昭三先生(山形大学学長)が苦心の末に命名されたと聞く.

 1987年,山形大学に初の分子病態学講座が開設されて以来,群馬,三重,岐阜の国立大学に同名の講座が誕生したが,新しい学問であるだけに講義に用いる教科書がなかった.そこで我々は分子病態学に必要な知識を一冊に網羅した,なるべく解かり易い解説書を刊行することとした.本書は分子病態学を受講する医学部生を主な対象として編まれている.この一冊で分子病態学の概要を理解させる為に,総論では分子生物学の基本的な概念,用語,器具,手技を平易に解説し,各論では各分野の代表的な疾患や特色のある疾患の分子機構を取り上げた.国家試験出題基準にある,分子病態学に関連する用語・概念・疾患・病因・診断・検査・治療に言及することにも留意した.また,分子病態学研究の急速な進展を学生に伝える為に,最新の知見を紹介すべく各分野の第一人者に執筆を依頼した.従って,本書は卒後間もない研修医や他の分野の若い研究者の入門書としても有用なものであると我々は信じている.

 それぞれの遺伝子・蛋白質の精緻な高次構造とユニークな機能は有機的に統合されて,細胞さらには生物個体の反応機構を司っている.その分子構造・機能と発現時期あるいは分子間相互作用の異常が病態を形成する.疾患の本質を学生が理解することを本書が助け,21世紀を担う優れた医師や医学研究者の育成に少しでも寄与することができれば幸いである.編集に着手して18ヶ月間できるだけ知恵を絞ったとはいえ,編者の未熟さ故に不十分な点も多い.改善の指針とする為に,読者の皆さんのご感想,ご意見を是非お寄せ頂きたい.

 最後に,貴重な時間を割いてご執筆頂いた先生方に心から御礼を申し上げる.

1995年2月

一瀬 白帝

鈴木 宏治


I.分子病態学の基礎知識  1

 1.遺伝子と染色体の構造  <東中川 徹> 2

  A.遺伝子の本体はDNAである  2

  B.DNAの基本構造  2

  C.RNAの構造  3

  D.真核生物のDNA  3

  E.遺伝子の構造  4

  F.クロマチン  5

  G.ヌクレオソーム  5

  H.染色体の構造  6

 2.遺伝子の発現調節機構  <東中川 徹> 7

  A.RNAポリメラーゼ  7

  B.モデル転写系  7

  C.転写調節シスエレメント  7

  D.トランス因子  9

  E.クロマチン構造と転写調節  11

  F.DNAのメチル化と転写調節  11

 3.蛋白質の合成と輸送機構  <水野 猛> 12

  A.蛋白質合成の概要  12

  B.遺伝暗号  12

  C.遺伝暗号の解読機構とtRNA  13

  D.蛋白質合成装置:リボゾーム  13

  E.蛋白質合成の分子機構  14

  F.蛋白質合成後の細胞内輸送  17

  G.蛋白質翻訳後の修飾  18

 4.細胞の構造と分裂周期  <菊池韶彦 菊池淑子> 19

  A.細胞の構造  19

  B.細胞分裂周期  21

 5.蛋白質の構造と機能の関係  <小出武比古> 25

  A.蛋白質の構造  25

  B.ポリペプチド鎖の折りたたみと分子シャペロン  27

  C.蛋白質の機能  27

  D.蛋白質の構造と機能相関  27

  E.蛋白質の構造と機能の単位  27

  F.蛋白質ファミリーとスーパーファミリー  30

 6.細胞内シグナル伝達機構  <永田浩一 中島 茂 岡野幸雄> 31

  A.受容体  31

  B.GTP結合蛋白質  32

  C.膜脂質シグナリング  34

  D.MAPキナーゼカスケード  35

  E.JAK/STAT系  36

  F.細胞質から核へのシグナル移行  36

 7.細胞の増殖と分化  <守内哲也> 37

  A.増殖と分化の連続性  37

  B.選択的遺伝子発現  37

  C.遺伝子発現の抑制と解除  37

  D.増殖と分化の様式  38

  E.正常な増殖・分化と癌化  39

  F.増殖因子  39

  G.生物の進化と細胞間コミュニケーション  40

 8.老化  <小野哲也> 41

  A.老化に伴う病気の多発  41

  B.寿命は生物の種に固有のもの  41

  C.寿命は変えられる  41

  D.老化に伴う遺伝子の変化  42

  E.老化現象を加速する遺伝子病  43

 9.細胞のアポトーシス  <山田 武 大山ハルミ> 45

  A.アポトーシスとは  45

  B.名前の由来  45

  C.アポトーシスの形態学  46

  D.アポトーシスの過程  47

  E.アポトーシス関連遺伝子  49

  F.特異的検出法  51

  G.アポトーシスの意義  52

 10.疾病とアポトーシス  <太田成男> 53

  A.癌  53

  B.ウイルス感染  53

  C.神経疾患とアポトーシス  55

  D.自己免疫疾患  55

  E.造血障害とアポトーシス  56

  F.糖尿病  56

 11.生体防御機構  57

 a.免疫応答の分子機構  <渡邊 武> 57

  A.免疫系のしくみと特徴  57

  B.抗原認識の多様性とリンパ球クローン  57

  C.T細胞とB細胞  58

  D.多様性の獲得  58

  E.主要組織適合系複合体遺伝子群と組織適合抗原の多様性  62

  F.主要組織適合系複合体抗原と抗原提示  62

  G.正の選択,負の選択  63

  H.免疫細胞の活性化と補助刺激分子  65

  I.抗体機能の多様性  65

  J.サイトカインと免疫応答の多様性  66

  K.CD4陽性ヘルパーT細胞のサブセットとその機能  67

  L.エフェクターT細胞による生体防御  68

 b.炎症の分子機構  <吉永 秀 大河原 進> 69

  A.炎症反応の基本的な展開  69

  B.炎症の開始シグナル  69

  C.炎症局所における微小循環の変化と血管透過性亢進  70

  D.白血球浸潤  71

  E.炎症に伴う全身現象  75

 c.補体系の分子機構  <長澤滋治> 76

  A.補体系の仕組みと機能  76

  B.活性化機構  78

  C.制御機構  79

  D.補体系に特異的な反応と構造  80

  E.補体レセプター  81

  F.生物活性  82

  G.疾病との関係  82

 12.遺伝子病の概念  <藤木典生> 84

  A.形質と遺伝子  84

  B.単因子遺伝子病  84

  C.多因子遺伝子病  85

  D.形質発現に影響する条件  86

  E.遺伝的異質性  86

  F.配偶子形成とその異常  87

  G.先天異常  90

  H.遺伝相談  90

  I.新しい知見  90

 13.遺伝子変異の機構  <中別府雄作> 93

  A.遺伝子変異の種類  93

  B.突然変異生成の経路  94

 14.遺伝子修復機構の異常−色素性乾皮症を中心に−  <錦織千佳子> 101

  A.遺伝子修復機構の異常と疾患  101

  B.色素性乾皮症の概要  101

  C.XPおよびCS遺伝子のクローニング  102

 15.遺伝子病の分子機構  <服巻保幸> 108

  A.遺伝子産物の質の異常  108

  B.遺伝子産物の量の異常  108

  C.反復配列が関わる遺伝子病  112

  D.ゲノムインプリンティングが関わる遺伝子病  113

 16.遺伝子診断;各種遺伝子診断法  <石川冬木> 115

  A.遺伝子診断の対象  115

  B.遺伝子診断の方法  116

  C.遺伝子診断の結果の解釈  118

 17.遺伝子治療  <鎌谷直之> 120

  A.遺伝子治療の分類  120

  B.遺伝子治療に用いられるベクター  121

  C.遺伝子病の遺伝子治療  122

  D.悪性腫瘍の遺伝子治療  122

  E.その他の遺伝子治療  123

  F.遺伝子治療の効果と将来展望  123

  

II.疾患の分子病態学的解析法  125

 A.遺伝子解析に用いる試薬・器具  126

  1.遺伝子解析のための酵素概論  <武谷浩之 鈴木宏治> 126

   A.遺伝子解析の流れと各種酵素  126

   B.制限酵素  127

   C.逆転写酵素  128

   D.DNAポリメラーゼ  129

   E.DNAリガーゼ  129

   F.その他の重要な酵素  130

  2.ベクター  <林 辰弥 鈴木宏治> 132

   A.ベクターとは  132

   B.ファージベクター  132

   C.プラスミドベクター  134

   D.酵母ベクター  137

   E.バキュロウイルスベクター  137

   F.レトロウイルスベクター  138

 B.分子病態学的解析法  141

  1.ブロッティング法  <井戸正流 鈴木宏治> 141

   A.Southern blotting法  141

   B.Northern blotting法  142

   C.Western blotting法  143

   D.South-Western blotting法  143

   E.West-Western(Far-Western blotting,ligand blotting)法  144

  2.遺伝子クローニングと塩基配列決定法  <惣宇利正善 一瀬白帝> 145

   A.遺伝子クローニング  145

   B.塩基配列決定法  147

  3.遺伝子の発現調節機構の解析  <木田雅文 一瀬白帝> 151

   A.転写開始部位の同定法  152

   B.シス領域の同定  152

   C.シスエレメントの同定  154

  4.PCR  <宮田敏行> 157

    1.ASO(allele specific oligonucleotide probe)法  158

    2.アリル特異的PCR  158

    3.多型分析  158

    4.RFLP(restriction fragment length polymorphism)  158

    5.SSCP(single strand conformational polymorphism)  158

    6.differential display法  159

    7.RACE(rapid amplification of cDNA ends)法  159

    8.denaturing gradient gel electrophoresis(DGGE)法  159

    9.RT-PCR  160

  5.人工的遺伝子変異導入と発現解析  <山崎鶴夫 一瀬白帝> 161

    1.プラスミドを用いた部位特異的変異導入法  161

    2.PCR法を用いた部位特異的変異導入法  161

    3.部位特異的変異導入法の応用  161

    4.先天性凝固第XIII因子Aサブユニット欠乏症の解析(自験例)  163

  6.異常蛋白質のアミノ酸解析  <宮田敏行> 164

   A.異常蛋白質の精製  164

   B.異常蛋白質の酵素消化  164

   C.ペプチドマップ  164

   D.アミノ酸組成分析  165

   E.アミノ酸配列分析  166

   F.質量分析法による異常蛋白質の構造解析  166

  7.蛋白質の立体構造解析とその応用例(CG,MD等)  <松末朋和 梅山秀明> 167

   A.蛋白質の立体構造決定法  167

   B.蛋白質立体構造の予測法  167

   C.ホモロジーモデリング  168

   D.立体構造の解析  170

  8.トランスジェニック動物とジーンターゲッティング  <山村研一> 173

   A.トランスジェニックマウスの作製  173

   B.トランスジェニックマウス作製の進歩  173

   C.トランスジェニックマウスの応用  174

   D.標的遺伝子組換え法の概要  174

   E.相同遺伝子組換え法  174

   F.条件的遺伝子破壊  175

   G.相同遺伝子組換え法を用いた研究  176

   H.遺伝子タギング法を用いた解析  176

   I.疾患モデルの作製は最初のステップ  176

   J.問題点  177

  9.病因遺伝子の解析  178

  a.遺伝子マッピング  <近藤郁子> 178

   A.遺伝子とローカスシンボルの命名法  178

   B.遺伝子マッピング法  179

   C.最近の遺伝子マップ  181

  b.ポジショナルクローニングとファンクショナルクローニング  <山縣英久 三木哲郎> 183

   A.ポジショナルクローニング  183

   B.ファンクショナルクローニング  185

  10.遺伝子多型による遺伝子病の解析  <田中 一 辻 省次> 187

   A.連鎖解析による病因遺伝子座位決定  187

   B.連鎖解析とロッド得点  188

   C.DNAマーカー  189

   D.マイクロサテライト多型  189

   E.コンピュータープログラムによる連鎖解析  190

   F.連鎖解析の実際−MJDの連鎖解析  192

  11.遺伝子多型の統計学的解析法  <西村泰治> 195

   A.抗原頻度および遺伝子頻度の求め方  195

   B.ハプロタイプ頻度および連鎖不平衡の求め方  195

   C.標識(対立)遺伝子と形質との相関の検定法  196

  

III.疾患の分子病態学  199

 A.悪性腫瘍  200

 1.癌遺伝子  <秋山 徹> 200

  A.ウイルスの癌遺伝子  200

  B.癌細胞の癌遺伝子  200

  C.癌における癌原遺伝子の構造変化  201

  D.癌原遺伝子の正常機能  202

 2.癌抑制遺伝子  205

 a.網膜芽細胞腫とLi-Fraumeni症  <宮木美知子> 206

  A.網膜芽細胞腫と二段階発生機構  206

  B.RB腫瘍における13q14のヘテロ接合性消失  206

  C.RB遺伝子の構造と不活性化の機序  207

  D.RB蛋白質の機能  207

  E.Li-Fraumeni症候群とp53遺伝子の異常  208

  F.p53遺伝子の構造と機能  209

 b.Wilms腫瘍  <小田秀明 中鶴陽子 石川隆俊> 211

  A.Wilms腫瘍について  211

  B.WT1遺伝子  211

  C.WT2遺伝子,Beckwith-Wiedemann症候群とゲノムインプリンティング  212

 c.神経線維腫症  <高橋和広 鈴木裕行 柴原茂樹> 214

  A.神経線維腫症1型  214

  B.神経線維腫症2型  216

 3.多段階発癌;大腸癌  <宮木美知子> 218

  A.多段階発癌について  218

  B.大腸腺腫の発生とAPC遺伝子の不活性化  218

  C.大腸腺腫の癌化とp53遺伝子の不活性化  220

  D.大腸癌の進展に関与する癌抑制遺伝子の不活性化およびK-ras遺伝子の活性化  222

  E.大腸癌におけるDNAミスマッチ修復遺伝子の不活性化  222

  F.多段階発癌と遺伝子変化の蓄積  222

 4.癌の転移  <木村成道> 224

  A.癌転移と分子論的アプローチ  224

  B.転移プロセスと関連因子  225

  C.転移のシグナル伝達系  226

  D.転移抑制遺伝子の概念と  nm23/NDPキナーゼ  227

 5.白血病  229

 a.慢性骨髄性白血病  <平井久丸> 229

  A.慢性骨髄性白血病の概説  229

  B.慢性骨髄性白血病の分子病態  229

  C.BCR/ABLの生物学的意義  232

  D.BCR/ABL遺伝子のマウスへの導入  233

  E.BCR/ABL遺伝子の臨床への応用  234

  F.慢性骨髄性白血病の急性転化  234

 b.急性前骨髄性白血病  <平井久丸> 235

  A.急性前骨髄性白血病の概論  235

  B.急性前骨髄性白血病の分子病態  235

  C.RT-PCRによるAPLの遺伝子診断  238

  D.急性前骨髄性白血病の治療とall trans-RA  238

 c.悪性リンパ腫  <平井久丸> 240

  A.悪性リンパ腫の概論  240

  B.Hodgkin病  240

  C.染色体転座と悪性リンパ腫  240

   1.Burkittリンパ腫  240

   2.濾胞性リンパ腫−t(14;18)  242

   3.mantle cell lymphoma(MCL)−t(11;14)  242

   4.B細胞びまん性リンパ腫−3q27転座  243

   5.Ki-1リンパ腫−t(2;5)(p23;q35)  244

  D.染色体欠失と悪性リンパ腫  244

 6.HTLV-1 Taxとウイルスの転写活性化因子  <渡邉俊樹> 246

  A.HTLV-1のウイルス学的まとめ  246

  B.Taxの標的遺伝子とプロモーターのcis-element  246

  C.Taxによる転写調節の分子機構  247

  D.Taxの機能とTリンパ球の腫瘍化  249

  E.DNAウイルスの転写活性化因子  250

 B.止血異常・血栓症  254

 1.血小板の異常  <一瀬白帝> 254

  A.血小板の形態・構造と機能  254

  B.血小板の先天性異常症  254

   1.Bernard-Soulier症候群  254

   2.Glanzmann血小板無力症  258

 2.血液凝固系の異常  <武谷浩之 鈴木宏治> 260

  A.血液凝固反応  260

  B.血友病Aおよび血友病B  260

  C.von Willebrand病  263

  

 3.血液凝固制御系の異常;アンチトロンビンIII欠損症,プロテインC欠損症,プロテインS欠損症,APCレジスタンス  <鈴木宏治> 265

  A.血液凝固系と凝固制御系  265

  B.先天性血栓性素因  266

   1.先天性AT III欠損症  268

   2.先天性プロテインC欠損症  269

   3.先天性プロテインS欠損症  272

   4.APCレジスタンス  274

 4.線溶系の異常  <一瀬白帝> 276

  A.線維素溶解(線溶)現象  276

  B.線溶系の異常  277

  C.線溶抑制系の異常  279

   1.PAI-1欠損症  280

   2.α2-PI異常症  280

 C.脂質代謝異常と動脈硬化  281

 1.肥満  <下村伊一郎 松澤佑次> 281

  A.脂肪蓄積の分子生物学  281

  B.肥満症の分子病態  283

  C.医学的ケア  285

 2.高脂血症  <野秀一 松澤佑次> 286

  A.LDLレセプター欠損症−家族性高コレステロール血症  286

  B.LPL欠損症  291

  C.アポ蛋白  292

  D.CETP欠損症  295

 3.動脈硬化症  <石井賢二 北 徹> 297

  A.粥状動脈硬化症と疾病  297

  B.粥状硬化症の進展に関与する細胞  297

  C.粥状硬化症の発生・進展に関わる主な分子  298

  D.遺伝子異常と治療  301

 D.循環器疾患  302

 1.循環器疾患  <神谷 敦 檜垣實男 荻原俊男> 302

  A.家族性心筋症  302

  B.遺伝性高血圧症  302

  C.本態性高血圧症  302

 E.糖尿病  305

 1.IDDMとNIDDM  <岡澤秀樹 上野博久 春日雅人> 305

  A.IDDM  305

  B.NIDDM  306

  C.グリケーションとAGE  312

 2.インスリンとインスリン受容体の異常  <荒木 悟 春日雅人> 313

  A.インスリン異常  313

  B.インスリン受容体異常  315

 F.内分泌疾患  319

 1.ステロイドホルモンの産生異常と受容体の異常  <佐藤文三> 319

  A.ステロイドホルモンの産生から作用発現までの概略  319

  B.下垂体ホルモン受容体異常によるステロイドホルモン産生異常症  320

  C.ステロイド合成酵素の異常症  321

  D.ステロイドホルモン受容体異常症  322

 2.小人症  <佐藤文三> 325

  A.小人症の病因  325

  B.GH系の分子生物学  325

  C.GH不応症(Laron型小人症)とGH受容体変異  326

  D.その他のGHRH-GH-IGF-I系の異常による小人症  327

 3.甲状腺ホルモン受容体異常症  <佐藤文三> 329

  A.甲状腺ホルモンの作用  329

  B.甲状腺ホルモン受容体機構  329

  C.甲状腺ホルモン受容体変異とその臨床像  331

 G.呼吸器・消化器疾患  334

 1.嚢胞性線維症  <犬童康弘 松田一郎> 334

  A.CFの臨床  334

  B.責任遺伝子の同定  334

  C.CFTRの機能  335

  D.CFTRの機能異常の分子病態  336

  E.CFTRの異常と各臓器(汗腺,呼吸器,膵外分泌腺)の異常  338

  F.CFのモデル動物  339

 H.神経筋疾患  340

 1.神経筋疾患と三塩基反復配列  <山縣英久 三木哲郎> 340

  A.表現促進  340

  B.トリプレットリピート病  340

   1.球脊髄性筋萎縮症  341

   2.筋強直性ジストロフィー症  342

   3.Huntington病  343

 2.進行性筋ジストロフィー  <戸塚 武> 346

  A.MDの遺伝的異質性  346

  B.Duchenne/Becker型MD  347

  C.DMD遺伝子とdystrophin  347

  D.DMDの成因  348

  E.続発性病態の発生機序  349

  F.DMDの胎児診断と遺伝相談  349

  G.治療薬の開発:ステロイド  350

 3.ミトコンドリア脳筋症  <香川靖雄> 351

  A.疾患概念  351

  B.mt脳筋症の主要病型と症状  351

  C.mtDNAの変異と8-ヒドロキシデオキシグアノシン  352

  D.ミトコンドリアの分子遺伝学  353

  E.ミトコンドリア脳筋症の治療  353

 I.脳神経疾患  355

 1.Alzheimer病  <奥泉 薫 辻 省次> 355

  A.Alzheimer病の臨床  355

  B.Alzheimer病の分子遺伝学  355

 2.Parkinson病  <原茂樹 佐々木良元> 359

  A.Parkinson病の疾患概念  359

  B.特発性Parkinson病の病態  359

  C.家族性のParkinson病およびパーキンソニズムの分子遺伝学  361

  D.Parkinson病の治療  361

 3.アミロイドーシス  <前田秀一郎> 363

  A.遺伝性(家族性)アミロイドーシス  364

 4.プリオン病  <片峰 茂> 371

  A.プリオン仮説  371

  B.プリオン蛋白質とその遺伝子  372

  C.プリオン病とプリオン増殖の分子機構  372

  D.遺伝子改変動物を用いたプリオン仮説の検証  373

  E.ウシ海綿状脳症大流行と新型CJD  374

 5.多発性硬化症と自己免疫性脳脊髄炎  <田平 武> 375

  A.多発性硬化症と急性散在性脳脊髄炎  375

  B.実験的自己免疫性脳脊髄炎  375

 J.精神病  379

 1.分裂病,躁うつ病  <南光進一郎 功刀 浩> 379

  A.分裂病と躁うつ病の分子遺伝学的研究の現況  379

  B.分裂病の臨床的特徴  379

  C.分裂病の分子遺伝学的研究(ドパミン仮説と神経発達障害仮説)  380

  D.躁うつ病の臨床的特徴  380

  E.躁うつ病の分子遺伝学的研究(モノアミン仮説)  381

 K.視覚異常症  382

 1.視覚異常症  <深田吉孝 岡野俊行> 382

  A.正常三色型色覚  382

  B.色盲と色弱  383

  C.色素性網膜炎  385

  D.コロイデレミア病因遺伝子  387

 L.結合織蛋白異常症  388

 1.結合織蛋白異常症  <二宮善文> 388

  A.骨形成不全症  388

  B.Ehlers-Danlos症候群  390

  C.Marfan症候群  391

 M.代謝異常症  392

 1.核酸代謝異常  <鎌谷直之> 392

  A.プリン代謝異常症  392

  B.ピリミジン代謝異常症  396

 2.アミノ酸代謝異常  397

 a.フェニルケトン尿症,ホモシスチン尿症  <成澤邦明> 397

  A.フェニルケトン尿症  397

  B.ホモシスチン尿症  401

 b.メープルシロップ尿症  <犬童康弘 松田一郎> 404

  A.分岐鎖アミノ酸の代謝  404

  B.分岐鎖α-ケト酸脱水素酵素  405

  C.メープルシロップ尿症(MSUD)  406

  D.MSUDの分子生物学  408

  E.MSUDの臨床分類とその病態  412

 3.糖質代謝異常;糖原病  <鈴木洋一 成澤邦明> 414

  A.グリコーゲン代謝  414

  B.解糖系と糖新生系  414

  C.糖原病  416

 4.ヘム合成異常(鉄芽球性貧血およびポルフィリン症)  <藤田博美 小川和宏 島田 薫> 420

  A.全体像  420

  B.ポルフィリン症の病態像とヘム合成調節  421

  C.ヘム合成障害の分子病態  422

  D.関連する遺伝疾患  425

  E.治療法  425

 5.ムコ多糖・糖脂質・糖蛋白代謝異常(リソソーム病)  <栗山 勝> 426

  A.リソソーム病の概念  426

  B.リソソーム病の病因と病態生理  427

  C.リソソーム病の臨床症状・診断  429

  D.リソソーム病の治療  430

  E.ムコ多糖症  431

  F.脂質蓄積症(リピドーシス)  431

  G.糖蛋白質代謝異常症  432

 6.重金属代謝異常;Wilson病  <青木継稔> 434

  A.Wilson病の概要  434

  B.Wilson病遺伝子と発現蛋白質  435

  C.Wilson病の遺伝子異常と分子病態  437

  D.Wilson病の治療原則  439

 N.免疫疾患  440

 1.アレルギー反応と疾患  <山下直美> 440

  A.IgE産生のメカニズム  440

  B.Fcεレセプターの構造  440

  C.Th1/Th2細胞の偏倚  441

  D.アトピー遺伝子  442

 2.自己免疫疾患(膠原病)  <鈴木 毅 山本一彦> 444

  A.自己免疫疾患とは何か  444

  B.免疫系の多様性と自己の抗原に対する寛容  (トレランス)  444

  C.自己免疫疾患発症のメカニズム  446

  D.ループスマウス等からの知見  447

 3.慢性肉芽腫症  <栗村 敬> 450

  A.先天性免疫不全症  450

  B.慢性肉芽腫症(CGD)の概説  450

  C.活性酸素  450

  D.常染色体劣性遺伝様式のCGD  450

  E.X染色体劣性遺伝様式のCGD  450

  F.遺伝子治療  451

 4.HIV  <栗村 敬> 452

  A.HIVの性状と遺伝子機能  452

  B.HIV感染症  452

  C.host-parasite relationshipの多様性  454

  D.HIV感染症の疫学  454

  E.遺伝子治療  455

 O.感染症  456

 1.ウイルス肝炎  <井廻道夫> 456

  A.肝炎ウイルス  456

  B.HAV  456

  C.HBV  456

  D.HCV  458

  E.D型肝炎ウイルス  459

  F.E型肝炎ウイルス  460

  G.GBV-C/HGV  460

  H.TTV  460

 2.MRSA  <伊藤輝代 平松啓一> 461

  A.MRSA出現の背景と病原性  461

  B.methicillin耐性の機構  461

  C.mecA遺伝子発現の制御  462

  D.methicillin耐性を規定する外来遺伝子領域(mecADNA)  462

  E.MRSAの遺伝子診断  464

  

IV.疾患の原因遺伝子の染色体地図  467

略語一覧  481

索  引  496