序
近年,医療はチーム医療となり,医師,看護師のみならず,理学療法士,作業療法士,社会福祉士,介護士などの役割が重要視されるようになった.それに伴い,これらのコメディカルに従事する方々の医学知識や医療技術の向上が必要不可欠なものとなってきた.
本書は,コメディカルのための専門基礎分野テキストのシリーズの一巻として企画されたものである.従来は,ともすると,患者の診断,重症度,治療の選択などは医師任せで,コメディカル従事者の医療知識はあまり重要視されない傾向が見られた.しかしこれからは,各領域のコメディカル従事者が主体性を持って,患者の病状をしっかりと把握して,それぞれの医療業務に専念することが要求されるようになった.本書は,このような要望を満たす目的で企画されたもので,コメディカル従事者に必要な最低限の診断学の知識を簡潔にまとめたものである.
全体は3章よりなり,第2章では,診断の実際ということで,診断の手順,病歴の取り方について述べている.さらに現症の取り方については,全身状態,局所状態,血圧の測定,胸部身体所見の取り方,腹部身体所見の取り方,神経学的所見の取り方について,簡潔に記載している.第3章の症候編では,全身倦怠感,食欲異常,悪心・嘔吐,疼痛,心悸亢進,呼吸困難,失神,めまい・耳鳴,痙攣,意識障害,掻痒,肥満,るいそう,発疹,発熱,貧血,出血性素因,チアノーゼ,浮腫,リンパ節腫脹について,鑑別診断表やフローチャートを多用して,わかりやすく解説した.
本書はコンパクトなテキストであるが,内容は非常に高度なものであり,コメディカルに従事する方々の座右の書として役立つものであることを確信する次第である.
2004年 霜月
北村 諭
目次
■1.診断学とは <北村 諭> 1
■2.診断の実際 2
1.診断の手順 <北村 諭> 2
1.病歴を取る 2
2.現症を取る 2
3.臨床検査 2
4.総合診断 2
5.鑑別診断 3
6.処置・治療による確認 3
2.病歴を取る <北村 諭> 4
1.問診の仕方 4
2.現病歴の取り方 4
3.既往歴の取り方 4
3.現症を取る 6
A.全身状態 <北村 諭> 6
1.身長 6
2.体重 6
3.体格・骨格 6
4.栄養状態 6
5.姿勢・体位 7
6.顔貌 7
7.精神状態 7
8.異常運動 7
9.皮膚色・顔色 7
10.その他の皮膚所見 8
11.体毛 8
12.爪 8
13.体温 9
14.脈拍 9
15.呼吸 10
16.リンパ節 10
17.食欲 10
18.睡眠 10
19.性欲 10
20.便通 11
B.局所状態 <菅間康夫> 11
1.頭部 11
2.顔面 11
3.頸部・項部 14
4.胸部 15
5.腹部 15
6.直腸・肛門 15
7.性器 15
8.四肢 16
C.血圧の測定 <菅間康夫> 16
D.胸部の身体所見の取り方 16
1.打聴診総論 <菅間康夫> 16
2.肺の身体的検査 <菅間康夫> 17
3.心血管系の身体的検査 <重永哲洋> 20
E.腹部の身体所見の取り方 <重永哲洋> 28
1.視診 28
2.触診 29
3.打診 32
4.聴診 32
F.神経学的所見の取り方 <重永哲洋> 33
1.精神・知能系 33
2.脳神経系 36
3.運動(四肢・体幹)系 41
4.協同運動(小脳)系 44
5.知覚(四肢・体幹)系 44
6.自律神経系 46
7.失語・失行・失認 46
8.頭蓋内圧亢進 49
9.髄膜刺激症状 51
■3.症候編 53
1.症候とは <北村 諭> 53
2.全身倦怠感・無力状態 <北村 諭> 54
3.食欲異常 <北村 諭> 57
4.悪心・嘔吐 <北村 諭> 58
5.疼痛 <北村 諭> 59
1.頭痛 59
2.胸痛 60
3.腹痛 63
4.腰痛・背部痛 65
5.関節痛 66
6.心悸亢進 <菅間康夫> 68
7.呼吸困難 <菅間康夫> 71
8.失神 <菅間康夫> 73
9.めまい・耳鳴 <菅間康夫> 75
10.痙攣 <菅間康夫> 77
11.意識障害 <菅間康夫> 81
12.掻痒 <菅間康夫> 83
13.肥満 <菅間康夫> 86
14.るいそう <菅間康夫> 88
15.発疹 <重永哲洋> 90
16.発熱 <重永哲洋> 97
17.貧血 <重永哲洋> 102
18.出血性素因 <重永哲洋> 106
19.チアノーゼ <重永哲洋> 110
20.浮腫 <重永哲洋> 112
21.リンパ節腫脹 <重永哲洋> 116
索 引 121