2版の序
 「光陰矢の如し」と申しますが,早いもので,本書が上梓されてから,5年近い歳月が過ぎてしまいました.
 この5年間,本書は,コメディカルの学生や卒業生にも好評で,日本全国の大学・短大・各種専門学校のテキストとして採用されご購入いただきました.
 これは著者の持論ですが,コメディカルの看護師・理学療法士・作業療法士・社会福祉士は,医療の協同従事者という立場にある以上,可能な限り幅広い医学知識を持つ必要があり,また持つことが要求されます.このような医学知識をメディカル・コモンセンスと言います.
 最近,話題となっている医療ミスは,コメディカルの医療スタッフが,ある一定レベル以上のメディカル・コモンセンスを持つことにより,ほぼ100%防止することが可能と言っても過言ではありません.
 本書のほとんどの部分は,特に変更を必要とされませんが,厚生の指標である各種統計や,法律の改正に伴う医療従事者の職種の名称などが変更されました.
 そこで,2004年8月に厚生統計協会から発行された「国民衛生の動向」に基づき,図や表さらに法律改正に基づく医療従事者の職種名などについて,慎重に加筆訂正致しました.
 本書が,コメディカルの皆様方,コメディカルを目指す若い学徒の方々の座右の書としてお役に立つものと確信する次第であります.

 2005年2月
 北村 諭


初版の序
 様々なドラマが演じられた20世紀も終わり,人類はいよいよ21世紀を迎えました.これからの日本の医療は一体どうなるのでしょうか? 高齢者医療の問題,国民医療費の問題,介護保険制度など,まだまだ解決すべき多くの課題が山積しています.
 振り返ってみると,20世紀は,医師中心の医療でした.しかし,高齢化社会に突入したわが国の21世紀の医療は,医師,看護婦(士),理学療法士,作業療法士,社会福祉士,管理栄養士などによる協同作業になるものと思われます.
 従来,医師以外の医療従事者はパラメディカルと呼ばれていました.パラとは側面,補助といった意味であり,パラメディカルとは医師の仕事を補助する職業であると考えられていました.しかし,これからの医療は,医師のみでは絶対に不可能であります.看護婦(士),理学療法士,作業療法士,社会福祉士などとの密接な協力が必要不可欠であるといっても過言ではありません.したがって,今日ではパラメディカルの代わりに,医療協同従事者という意味で,コメディカルという呼称が用いられるようになりました.
 コメディカルの理学療法士,作業療法士,社会福祉士は,医療の協同従事者という立場にある以上,可能な限り幅広い医学知識を持つ必要があり,また持つことが要求されます.このような医学知識をメディカル コモンセンスと言います.
 本書は,コメディカルのための医学概論,一般臨床医学のテキストであり,コメディカルに必要とされるメディカル コモンセンスをわかりやすく解説したものであります.
 本書が,コメディカルの方々,コメディカルを目指す学生の皆さんの座右の書としてお役に立つものと確信する次第であります.

 2001年3月
 北村 諭


目次
第1章 医学の定義とその使命  1
1.医学とは何か  1
2.医学の使命  3

第2章 医学の歴史  5
1.近代医学への道程  5
2.20世紀の医学  7

第3章 近代医学の発展と医の倫理  10
1.ヘルシンキ宣言とインフォームド コンセント  10
2.脳死判定と尊厳死  11

第4章 人体の構造と機能  14
1.人体の構成  14
2.細胞は臓器の基本ユニットである  16
3.骨・筋肉  17
4.血液  17
5.循環器系  19
6.呼吸器系  23
7.消化器系  27
8.泌尿器系  31
9.内分泌系とホルモン  33
10.神経系  36
11.生殖器系  40
12.皮膚  42
13.感覚器  43

第5章 臨床医学総論 主要症状からその原因を探る  45
1.発熱  45
2.ショック  46
3.浮腫(むくみ)  47
4.悪心・嘔吐  48
5.下痢  49
6.便秘  49
7.腹痛  50
8.食欲不振  52
9.呼吸困難  52
10.胸痛  53
11.頭痛  55
12.めまい(眩暈)  55
13.運動麻痺  56
14.不随意運動  56
15.排尿異常  57
16.咳  57
17.喀血・血痰  58
18.吐血  59
19.動悸  59

第6章 臨床医学各論 主要な疾患とその対応  61
1.国際疾病分類  61
2.呼吸器疾患  63
3.循環器疾患  66
4.消化器疾患  68
5.代謝・内分泌疾患  71
6.腎臓・泌尿器疾患  73
7.血液・造血器疾患  75
8.神経・筋疾患  77
9.精神疾患  80
10.アレルギー性疾患  82
11.膠原病・その他の全身疾患  84
12.感染症  86
13.中毒性疾患  89
14.運動器疾患  90
15.皮膚疾患   93
16.婦人科・妊産婦疾患  96
17.小児疾患  101
18.眼疾患  105
19.耳鼻咽喉疾患  108

第7章 人口統計と疾病の変化  112
1.人口静態-人口の規模と構成  112
2.世界の人口  112
3.人口動態-保健水準の指標  113

第8章 健康状態と受療状況  121
1.健康状態  121
2.受療状況  124

第9章 医療保障制度  127
1.社会保障制度と医療保障  127
2.医療保険  128
3.老人医療  128
4.介護保険制度  129
5.国民医療費  129

第10章 医療関係の職種と現状  131
1.医師  131
2.歯科医師  131
3.薬剤師  132
4.保健師  132
5.助産師  132
6.看護師・准看護師  132
7.歯科衛生士・歯科技工士  133
8.理学療法士  133
9.作業療法士  133
10.臨床検査技師  133
11.衛生検査技師  134
12.社会福祉士  134
13.介護福祉士  134

第11章 医療施設の種類と現状  135
1.病院・診療所・病床  135
2.療養型病床群  136
3.老人病院・老人病床  137
4.病院の従事者  137

第12章 保健医療対策  138
1.母子保健対策  138
2.老人保健対策  139
3.精神保健対策  140
4.精神障害者福祉および社会復帰対策  140
5.歯科保健対策  141
6.感染症対策  141
7.エイズ(AIDS)対策  147
8.結核対策  148
9.難病対策  150
10.腎不全対策  150
11.角膜移植対策  154
12.脳死患者からの臓器移植  154
13.骨髄移植対策  154

第13章 医師法・薬事法・衛生法規  155
1.医事法規  155
2.薬事法規  162
3.保健衛生法規  163
4.環境衛生法規  164
5.公害関係法規  164

索引   165