3版の序

 医療政策は,毎年変わり,介護保険や老人医療対策なども年ごとに変化していきます.
 この3年間,本書は,コメディカルの学生や卒業生にも好評で,日本全国の大学・短大・各種専門学校のテキストとして採用され,ご購入頂きました.  
 本書のほとんどの部分は特に変更を必要としませんが,厚生の指標である    各種統計には変更が必要とされます.そこで,2006年8月に厚生統計協会から発行された「国民衛生の動向」に基づき,図や表を最新のものと差し替えました.
 今回の大きな変更として,2004年6月に50年ぶりに大きく改正された結核予防法があります.さらに,近年,中国・東南アジアを中心とした鳥インフルエンザの大流行があります.また,近年,肥満,高血圧,高脂血症,高血糖などを構成因子とするメタボリックシンドロームが提唱されるようになりました.そこで,今回は,これらの事項について,簡潔で十分な加筆をさせて頂きました.
 本書が,コメディカルの皆様方,コメディカルを目指す若い学徒の方々の 座右の書として,お役に立つものと確信する次第であります.

2007年2月
北村 諭


初版の序

 様々なドラマが演じられた20世紀も終わり,人類はいよいよ21世紀を迎えました.これからの日本の医療は一体どうなるのでしょうか? 高齢者医療の問題,国民医療費の問題,介護保険制度など,まだまだ解決すべき多くの課題が山積しています.
 振り返ってみると,20世紀は,医師中心の医療でした.しかし,高齢化社会に突入したわが国の21世紀の医療は,医師,看護婦(士),理学療法士,作業療法士,社会福祉士,管理栄養士などによる協同作業になるものと思われます.
 従来,医師以外の医療従事者はパラメディカルと呼ばれていました.パラとは側面,補助といった意味であり,パラメディカルとは医師の仕事を補助する職業であると考えられていました.しかし,これからの医療は,医師のみでは絶対に不可能であります.看護婦(士),理学療法士,作業療法士,社会福祉士などとの密接な協力が必要不可欠であるといっても過言ではありません.したがって,今日ではパラメディカルの代わりに,医療協同従事者という意味で,コメディカルという呼称が用いられるようになりました.
 コメディカルの理学療法士,作業療法士,社会福祉士は,医療の協同従事者という立場にある以上,可能な限り幅広い医学知識を持つ必要があり,また持つことが要求されます.このような医学知識をメディカル コモンセンスと言います.
 本書は,コメディカルのための医学概論,一般臨床医学のテキストであり,コメディカルに必要とされるメディカル コモンセンスをわかりやすく解説したものであります.
 本書が,コメディカルの方々,コメディカルを目指す学生の皆さんの座右の書としてお役に立つものと確信する次第であります.

2001年3月
北村 諭


目次

第1章 医学の定義とその使命
 1.医学とは何か
 2.医学の使命

第2章 医学の歴史
 1.近代医学への道程
 2.20世紀の医学

第3章 近代医学の発展と医の倫理
 1.ヘルシンキ宣言とインフォームド コンセント
 2.脳死判定と尊厳死

第4章 人体の構造と機能
 1.人体の構成
 2.細胞は臓器の基本ユニットである
 3.骨・筋肉
 4.血液
 5.循環器系
 6.呼吸器系
 7.消化器系
 8.泌尿器系
 9.内分泌系とホルモン
 10.神経系
 11.生殖器系
 12.皮膚
 13.感覚器

第5章 臨床医学総論 主要症状からその原因を探る
 1.発熱
 2.ショック
 3.浮腫(むくみ)
 4.悪心・嘔吐
 5.下痢
 6.便秘
 7.腹痛
 8.食欲不振
 9.呼吸困難
 10.胸痛
 11.頭痛
 12.めまい(眩暈)
 13.運動麻痺
 14.不随意運動
 15.排尿異常
 16.咳
 17.喀血・血痰
 18.吐血
 19.動悸

第6章 臨床医学各論 主要な疾患とその対応
 1.国際疾病分類
 2.呼吸器疾患
 3.循環器疾患
 4.消化器疾患
 5.代謝・内分泌疾患
 6.腎臓・泌尿器疾患
 7.血液・造血器疾患
 8.神経・筋疾患
 9.精神疾患
 10.アレルギー性疾患
 11.膠原病その他の全身疾患
 12.感染症
 13.中毒性疾患
 14.運動器疾患
 15.皮膚疾患
 16.婦人科・妊産婦疾患
 17.小児疾患
 18.眼疾患
 19.耳鼻咽喉疾患
 20.メタボリックシンドローム

第7章 人口統計と疾病の変化
 1.人口静態 − 人口の規模と構成
 2.世界の人口
 3.人口動態−保健水準の指標

第8章 健康状態と受療状況
 1.健康状態
 2.受療状況

第9章 医療保障制度
 1.社会保障制度と医療保障
 2.医療保険
 3.老人医療
 4.介護保険制度
 5.国民医療費

第10章 医療関係の職種と現状
 1.医師
 2.歯科医師
 3.薬剤師
 4.保健師
 5.助産師
 6.看護師・准看護師
 7.歯科衛生士・歯科技工士
 8.理学療法士
 9.作業療法士
 10.言語聴覚士
 11.臨床検査技師
 12.衛生検査技師
 13.社会福祉士
 14.介護福祉士

第11章 医療施設の種類と現状
 1.病院・診療所・病床
 2.療養型病床群
 3.老人病院・老人病床
 4.病院の従事者

第12章 保健医療対策
 1.母子保健対策
 2.老人保健対策
 3.精神保健対策
 4.精神障害者福祉および社会復帰対策
 5.歯科保健対策
 6.感染症対策
 7.エイズ(AIDS)対策
 8.結核対策
 9.難病対策
 10.腎不全対策
 11.角膜移植対策
 12.脳死患者からの臓器移植
 13.造血幹細胞移植

第13章 医師法・薬事法・衛生法規
 1.医事法規
 2.薬事法規
 3.保健衛生法規
 4.環境衛生法規
 5.公害関係法規

索引