はじめに
 20年後の2025年には,我が国の人口構成は4人に1人が65歳以上という世界にも類をみない超高齢化社会を迎えようとしている.医療については,保健・医療・福祉による三位一体の強力な医療システムが求められていて,ひとりの患者さんの治療には多数の医療専門職の協力が必要である.このようにチーム医療に参加するメディカルスタッフには高度な知識および確かな技術が要求されている.
 解剖学が医学・医療の中で最も重要な基礎科目であることは言うまでもないことであるが,医療系の大学・専門学校では講義時間数が極めて少ない.それに対して解剖学の内容は時間数に比して膨大であり,国家試験の問題も広範多岐に亘り学生にとっては難しい科目のひとつであると思われる.
 今回,このような状況を鑑みて,医療系の学生にとって「わかりやすい解剖学」を執筆した.この本を執筆するにあたり以下の3点に重点を置いた.まず第1は,担当の執筆者が解剖学教育・研究歴が20年以上の専門家であること.第2は,項目立てを多用し,文章は出得る限り短く簡潔にして読みやすくした.第3は「解剖学は図が生命」の観点から,多数の図の中から理解しやすい図を厳選した.その他に,解剖学用語には難読なものも多く,特に難読な用語は一覧表をつくり,さらに索引の解剖学用語には振り仮名を付けて,慣れない初学者の便を図った.
 解剖学をマスターする方法は普段からの着実な努力が大事である.本書が解剖学の教科書・参考書として,また国家試験対策用のまとめとして学生諸君の学習の手助けとなれば著者たちの望外の喜びであります.本書が関係諸兄のご意見を得て,より充実することにより,少しでも学生諸君の勉学のお役に立てればと考えております.
 本書を上梓するにあたり,終始ご指導を頂いた中外医学社の荻野邦義氏,秀島 悟氏,また原稿の整理・校正等の編集協力をして頂いた埼玉県立大学保健医療福祉学部看護学科の石川美帆先生および埼玉県立大学保健医療福祉学部の卒業生である小川綾乃さん(看護師),近藤恵子さん(理学療法士)にお礼を申し上げます.
 2004年(平成16年)初秋
 著者たち


目次
I. 解剖学総論 1
 I. 解剖学序論 1
  A. 人体解剖学とは 1
  B. 解剖学の歴史 1
  C. 解剖学の分類 2
  D. 解剖学用語 2
  E. 人体各部の名称(大区分 3
  F. 体表区分(細区分)3
  G. 体表の方向線 6
 II. 細胞 8
  A. 核 8
  B. 細胞小器官 8
  C. 細胞膜 11
  D. 細胞の接着装置 12
  E. 細胞分裂 12
 III. 組織 13
  A. 上皮組織 13
  B. 支持組織 15
  C. 筋組織 19
  D. 神経組織 21
 IV. 器官と器官系 22
 V. 人体の発生 23

II. 骨格系 30
 I. 総論 30
  A. 骨の役割 30
  B. 骨の形状による分類 30
  C. 骨の構造 31
  D. 骨の発生と成長 33
  E. 骨表面の形状(性状)についての用語 34
  F. 骨の連結 34
 II. 各論 37
  A. 脊柱 37
  B. 胸郭 42
  C. 上肢骨 45
  D. 上肢の関節 50
  E. 下肢骨 53
  F. 下肢の関節 61
  G. 頭蓋 64

III. 筋系 76
 I. 概説 76
  A. 筋の総数と重量 76
  B. 筋の構造 76
  C. 筋の形態 77
  D. 筋の各部の名称 80
  E. 筋の起始,停止 80
  F. 筋の作用 80
  G. 拮抗筋と協力筋 82
  H. 筋の補助装置 83
  I. 骨格筋の神経支配 83
 II. 頭部の筋 84
  A. 表情筋 84
  B. 咀嚼筋 85
 III. 頚部の筋 85
 IV. 胸部の筋 89
  A. 浅胸筋 89
  B. 深胸筋 90
  C. 横隔膜 91
 V. 腹部の筋 92
  A. 前腹筋 92
  B. 側腹筋 93
  C. 後腹筋 94
 VI. 背部の筋 95
  A. 浅背筋第1層 95
  B. 浅背筋第2層 96
  C. 深背筋第1層(棘肋筋)96
  D. 深背筋第2層(固有背筋)97
 VII. 上肢の筋 99
  A. 上肢帯の筋 99
  B. 上腕の筋 102
  C. 前腕の筋 104
  D. 手の筋 107
 VIII. 下肢の筋 107
  A. 下肢帯の筋 108
  B. 大腿の筋 110
  C. 下腿の筋 113
  D. 足の筋 115

IV. 循環器系 117
 I. 血管 117
  A. 血管壁 117
  B. 動脈 117
  C. 静脈 118
  D. 毛細血管 118
  E. 吻合血管 118
  F. 動脈血と静脈血 119
 II. 心臓 119
  A. 心臓の位置と外景 119
  B. 心臓壁 121
  C. 心臓の4つの部屋 122
  D. 心臓の4つの弁 123
  E. 心臓の栄養血管 125
  F. 刺激伝導系 125
  G. 心臓の神経 126
 III. 血液の循環系 126
  A. 肺循環(小循環)126
  B. 体循環(大循環)126
  C. 体循環の動脈系 127
  D. 体循環の静脈系 138
  E. 胎生期の循環系 142
 IV. リンパ系 145
  A. 主要なリンパ本幹 145
  B. 主要なリンパ節 145
  C. リンパ節の構造 146
  D. リンパ小節 147
  E. 胸腺 147
 V. 脾臓 148
  A. 脾臓の位置と形状 148
  B. 脾臓の実質 148
  C. 脾臓の血管系 150

V. 消化器系 151
 I. 総論 151
  A. 臓器の一般構造 151
  B. 消化器系の構成 152
 II. 口腔 153
  A. 口唇 154
  B. 口蓋 154
  C. 歯 155
  D. 舌 156
  E. 口腔腺(唾液腺)158
 III. 咽頭 159
  A. 咽頭の区分 159
  B. ワルダイエルの咽頭輪 159
 IV. 食道 161
  A. 食道の区分 161
  B. 生理的狭窄部 161
  C. 食道壁の筋層 162
 V. 胃 162
  A. 胃の各部の名称 162
  B. 胃の筋層 163
  C. 固有胃腺(胃底腺)163
 VI. 小腸 164
  A. 十二指腸 164
  B. 空腸および回腸 165
  C. 小腸粘膜の特徴 165
 VII. 大腸 166
  A. 盲腸 166
  B. 結腸 167
  C. 直腸 168
 VIII. 肝臓 169
  A. 肝臓の位置と形状 169
  B. 肝臓の下面(臓側面)169
  C. 肝臓の微細構造 171
  D. 肝内の血液循環 171
  E. 胆路 171
 IX. 胆嚢 171
 X. 膵臓 173
 XI. 腹膜 174
  A. 組織 174
  B. 壁側腹膜,臓側腹膜,腹膜腔 174
  C. 間膜 175
  D. 大網と小網 175
  E. 網嚢 176
  F. 腹膜腔の陥凹部 176
  G. ヒダ 176
  H. 腹膜後器官 176

VI. 呼吸器系 177
 I. 鼻 177
  A. 外鼻 177
  B. 鼻腔 177
  C. 副鼻腔 179
 II. 咽頭 181
 III. 喉頭 181
  A. 喉頭軟骨 182
  B. 喉頭筋 183
  C. 喉頭腔 184
 IV. 気管および気管支 185
  A. 気管 185
  B. 〔主〕気管支 185
  C. 気管支樹 187
 V. 肺 188
  A. 肺の形態 188
  B. 肺区域 189
  C. 肺の血管 191
 VI. 胸膜 191
 VII. 縦隔 192

VII. 泌尿器系 193
 I. 腎臓 193
  A. 腎臓の位置と形状 193
  B. 腎臓の固定装置 193
  C. 腎臓に隣接する臓器 194
  D. 腎臓の各部 195
  E. 腎臓の前頭断面 196
  F. 腎臓の微細構造 196
  G. 腎臓の血管系 199
 II. 尿管 199
  A. 狭窄部 199
  B. 尿管壁 199
 III. 膀胱 200
  A. 膀胱の形状 200
  B. 膀胱の各部 200
  C. 膀胱壁 201
 IV. 尿道 202
  A. 男性尿道 202
  B. 女性尿道 203

VIII. 生殖器系 204
 I. 生殖器の分化 204
 II. 男性生殖器 204
  A. 精巣と精巣上体 204
  B. 精管,精索,精嚢,射精管 208
  C. 前立腺 209
  D. 尿道球腺(カウパー腺)210
  E. 陰茎 210
  F. 陰嚢 211
  G. 精液 212
 III. 女性生殖器 212
  A. 卵巣 212
  B. 卵管 215
  C. 子宮 215
  D. 腟 219
  E. 外陰部 219
 IV. 会陰 221
  A. 会陰の区分 221
  B. 尿生殖隔膜を構成する筋 222
  C. 骨盤隔膜を構成する筋 222
  D. 陰部神経管(アルコック管)222
  E. 縫線 222

IX. 内分泌系 223
 I. 総論 223
  A. 内分泌系に属する器官 223
  B. 内分泌腺と外分泌腺 223
  C. 内分泌腺の機能 223
  D. ホルモンの種類 224
 II. 下垂体 224
  A. 位置と形状 224
  B. 腺下垂体 225
  C. 神経下垂体(後葉)227
  D. 前葉ホルモンの分泌調節 228
 III. 松果体 228
  A. 位置と形状 228
  B. 分泌ホルモン 228
 IV. 甲状腺 229
  A. 位置と形状 229
  B. 分泌ホルモン 229
 V. 上皮小体(副甲状腺)230
  A. 位置と形状 230
  B. 分泌ホルモン 230
 VI. 副腎(腎上体)231
  A. 位置と形状 231
  B. 皮質 231
  C. 髄質 232
 VII. 膵島(ランゲルハンス島)233
  A. 位置と形状 233
  B. 分泌ホルモン 233
 VIII. 精巣 233
 IX. 卵巣 233
 X. その他 234

X. 神経系 235
 I. 神経系総論 235
 II. 神経組織の構成 236
  A. 神経細胞(ニューロン)236
  B. シナプス 238
  C. 神経細胞の種類 238
  D. 支持細胞 238
  E. 神経系に特有な名称 238
 III. 神経系の発生 239
 IV. 脳室系と髄膜 241
  A. 脳室系と脳脊髄液 241
  B. 髄膜 242
 V. 終脳(大脳半球)244
  A. 大脳皮質 244
  B. 大脳白質 247
  C. 大脳核(大脳基底核)249
 VI. 間脳 249
  A. 視床 249
  B. 視床下部 251
 VII. 中脳,橋,延髄 251
 VIII. 小脳 255
 IX. 脊髄 256
  A. 脊髄と脊髄神経の関係 256
  B. 脊髄の内部構造 257
 X. 伝導路 258
  A. 反射路(反射弓)259
  B. 上行性伝導路 259
  C. 下行性伝導路 263
 XI. 末梢神経系総論 266
 XII. 脳神経 267
 XIII. 脊髄神経 271
 XIV. 頚神経叢 273
 XV. 腕神経叢 274
 XVI. 胸神経 278
 XVII. 腰神経叢 279
 XVIII. 仙骨神経叢 280
 XIX. 陰部神経叢 282
 XX. 自律神経系 282
 XXI. 交感神経系 283
 XXII. 副交感神経系 286

XI. 感覚器 287
 I. 感覚器総論 287
 II. 外皮 287
  A. 皮膚 287
  B. 皮膚の感覚受容器 288
  C. 皮膚に付属する角質器 289
 D. 皮膚の腺 289
 III. 深部感覚受容器 291
 IV. 関連痛(連関痛)293
 V. 視覚器 293
  A. 眼球 293
  B. 眼球の付属器 297
 VI. 聴覚・平衡覚器 299
 VII. 味覚器 303
 VIII. 嗅覚受容器 304

XII. 映像解剖 305
  A. 単純X線 305
  B. 造影X線 309
  C. コンピュータ断層(X線CT)312
  D. MRI(磁気共鳴断層映像装置)316
  E. 核医学 321
  F. 超音波断層 322

索引 323