はじめに
腹腔鏡下手術の急速な発展により,わが国でも多数の手術書がすでに刊行されています.
今回中外医学社から,これまでの定型的な手術書とは異なり,「こんな時にどうする」といった質問に答えられるようなタイプの手術書を発刊したいとのお話があり,この書を世に出すことになりました.
形としてはQ&A方式として,それぞれの専門家に,分かりやすいことを最重要視して執筆していただきました.質問によっては,答えが短いものも長いものもあり,一定していません.形にこだわるよりも,執筆者が読者にこれはどうしても伝えておきたい,ということを充分に表現してくださるようお願いいたしました.そのため俗っぽい表現も躊躇なくご使用いただくようお願いいたしました.なお,施行例数の多い胆嚢摘出術については,2人の著者の意見を掲載いたしました.
医療過誤問題に関する議論が活発な今日,このような書物を送り出すことには慎重な向きもあるかと考えましたが,中外医学社の勇敢なご判断により,刊行の運びとなりました.
この書が多くの若手外科医の参考になることを願ってやみません.
本書の発刊に際しましては,企画の段階から完成に至るまで,あらゆる面で御指導をいただいた中外医学社の荻野邦義様と上村裕也様に深甚なる感謝の意を捧げます.また表紙の絵を考えてくださった,亀田総合病院中央手術部の看護師:中村真紀さんの類い稀なる才能とご尽力にも感謝申し上げます.
2004年6月
加納宣康
目次
■A.食道
1.食道裂孔ヘルニアと逆流性食道炎に対する手術―その1 〔小澤壯治〕 1
Q1.迷走神経肝枝がわからない.どうしよう!1
Q2.食道がわからない.どうしよう!1
Q3.腹部食道の背側windowが確保しにくい.どうしよう!1
Q4.巨大な食道裂孔はどう縫縮するか.1
Q5.短胃動静脈の処理中に出血した.どうしよう!1
Q6.短胃動静脈の処理はどこまで行うのか.2
Q7.キャリブレーション用の食道ブジーが入りにくい.どうしよう!2
Q8.ラップ用の胃をどのように適切な位置に置いたらよいか.2
Q9.Nissen fundoplicationで食道を絞めすぎた.どうしよう!2
Q10.ラップの縦隔内への脱出が起こりやすい.どうしよう!3
1.食道裂孔ヘルニアと逆流性食道炎に対する手術―その2 〔井谷史嗣〕 4
Q1.Nissen噴門形成術でブジーを挿入する時に食道穿孔を起こしそうで心配だ.何に気をつければいいのだろう?4
Q2.Nissen噴門形成術の際に捻れのないfundoplicationを行うコツは?4
2.食道アカラシアに対する手術 〔柏木秀幸〕 6
Q1.術前に嚥下困難以外に胸痛の症状があったが,手術により消失するかどうかを聞かれた.どうしよう!6
Q2.迷走神経前幹が切れてしまった.どうしよう!6
Q3.筋層切開のつもりが全層切開になってしまった.どうしよう!7
Q4.手術後も嚥下困難が持続し,食物の嘔吐もみられる.どうしよう!8
●ドキリとした場面の解決体験 (1) 〔柏木秀幸〕 9
3.食道癌に対する手術 〔村上雅彦・加藤貴史・大塚耕司〕 10
Q1.肋間が狭くてポート挿入が困難である.どうしよう!10
Q2.肺の圧排が難しいが,どうしよう!10
Q3.胸腔内でのカメラ視野がとりづらいが,どうしよう!11
Q4.奇静脈弓の剥離が難しい,予想外に出血が多い!11
Q5.右反回神経が同定しにくいが,よいコツはないか?11
Q6.上部食道剥離の際に胸管が同定しにくいが,よいコツはないか?12
Q7.左反回神経が同定しにくいが,よいコツはないか?12
Q8.右気管支動脈温存に際して,剥離が難しいが?12
Q9.気管圧排が難しい.いい手はないか?13
Q10.中縦隔の剥離が難しいが,よいコツは?13
Q11.下縦隔の剥離が難しいが,よいコツは?13
Q12.気管分岐部リンパ節の郭清のコツは?13
Q13.細い静脈枝から出血したが,どうしようか?14
Q14.細い動脈枝から出血したが,どうしようか?14
■B.胃・十二指腸
1.胃局所切除術(lesion−lifting法) 〔大谷吉秀〕 15
Q1.病変が幽門近くで,切除後の狭窄が心配な位置関係だ.どうしよう!15
Q2.病変がEGJ近くで切除後の狭窄が心配だ.どうしよう!15
Q3.胃上部小彎後壁の病変に局所切除をしたい.広範にskeletonizeしてかつ小彎側から局所切除して,胃の小彎に湾入ができるような形になっても,胃の動きは大丈夫だろうか?15
Q4.胃穹窿部後壁小彎寄りの病変が露出しにくい.どうしよう!15
Q5.Endostaplerがmarking clipのうえでfireされたらしくて,うまく切れない.どうしよう!15
Q6.Endostaplerで切離後,粘膜面から出血がある.どうしよう!15
2.胃内手術 〔谷口英治・大橋秀一〕 18
Q1.胃内手術をやりたいがうまくトロカーを留置する方法がわからない.前に試みた時には失敗して開腹手術になってしまった.どうしたらうまくセットアップできるのだ?18
Q2.トロカーの位置が悪くて操作がしにくい.どうしよう!18
Q3.切除操作中にトロカーが抜けてしまった.うまく再留置するコツは? もし再留置してもガスがもれるくらいの隙間ができてしまった場合はどうしたらいいのだ?19
Q4.胃内からの粘膜切除中に穿孔を来した.どうしよう!20
Q5.切除中に出血が多くて電気メスの凝固だけでは止まらない.どうしよう!20
Q6.粘膜切除中に切除粘膜が裂けてぼろぼろになってきた.どうしよう!21
Q7.粘膜下層浸潤が疑われるのに,事情があってどうしても局所切除をしなければならない.Lesion−liftingのやりにくい噴門近傍の病変である.どうしよう!22
3.開腹下腹腔鏡下胃内手術 〔加納宣康〕 23
Q1.どんな時に適応となるの?23
Q2.腹壁を通してトロカーを留置していないので,操作中,トロカーが動いてしまう.どうしよう!23
Q3.3本のトロカーの真ん中のものに腹腔鏡を挿入したが,視野がもうひとつよくない.どうしよう!23
●ドキリとした場面の解決体験 (2) 〔加納宣康〕 23
4.腹腔鏡補助下幽門側胃切除術 〔白石憲男・太田正之・北野正剛〕 25
Q1.早期胃癌の病変が胃体上部の位置にある.術式をどうしよう!25
Q2.思ったより脂肪が多くてやりにくい.どうしよう!25
Q3.大網切離の際,大網を牽引したため,左胃大網静脈の枝が裂けて出血している.どうしよう!26
Q4.大網切離の際,牽引したため,大網と癒着していた脾下極の被膜が少し剥がれ出血している.どうしよう!26
Q5.右胃大網静脈の根部を露出していたら,鉗子で膵損傷を生じてしまった.どうしよう!27
Q6.右胃大網動脈の根部を処理していたら,幽門下動脈の枝を損傷し出血しはじめた.どうしよう!27
Q7.右胃動脈の根部が脂肪が多く同定できない.どうしよう!28
Q8.No8aリンパ節郭清をしていて,リンパ節を剥がし取ったら膵上縁付近や総肝動脈上縁付近から出血して止まりにくい.どうしよう!28
Q9.SM1までの病変と思ってLADGを始めたが,2群リンパ節にも腫大がある.どうしよう!28
Q10.左胃動脈を切離し,胃の後面を超音波凝固切開で切離していたところ,左胃動脈根部からの分枝を損傷し出血している.どうしよう!29
Q11.腹腔鏡下に血管処理が終わって,小開腹創からの操作に移ろうとしているが,十二指腸が右方に落ち込んでいて容易に体外へ出せそうにない.どうしよう!29
Q12.小さな創から器械吻合をしようとしたため,胃が裂けてしまった.どうしよう!29
5.腹腔鏡補助下噴門側胃切除および胃全摘術 〔宇山一朗〕 30
Q1.食道の切離端が縦隔方向へ引き込まれた形になって,操作が困難になってしまった.どうしよう!30
Q2.アンビルヘッドを固定した食道が裂けてきた.どうしよう!31
6.消化性潰瘍穿孔に対する腹腔鏡下手術 〔北野光秀〕 35
Q1.腹腔鏡でみたが,汚染が高度である.どうしよう!35
Q2.十二指腸の穿孔部周囲の壁が脆弱で,糸針をかけて縛ろうとすると組織が切れてくる.どうしよう!35
Q3.十二指腸の穿孔部がすでに大網で被われている.剥がして確実に再縫着すべきか?36
Q4.消化性潰瘍の穿孔部が大きい.大網を充填すべきか.いちばんよい方法はどうすることか.36
Q5.穿孔部が後壁である.どうしよう!37
Q6.広範な汚染を洗浄したが,ドレーンはどういうふうにおくか.37
7.迷走神経切離術 〔柏木秀幸〕 38
Q1.胃枝と幽門洞枝を損傷してしまった.どうしよう!38
Q2.胃に流入する神経・血管を切離している時に,胃に穴が開いてしまった.どうしよう!39
Q3.食道裂孔ヘルニア,逆流性食道炎を合併している.どうしよう!40
Q4.十二指腸潰瘍の瘢痕狭窄を合併している.腹腔鏡下にFinney幽門形成術をやるにもこの症例では自信がない.どうしよう!41
8.GISTに対する腹腔鏡下手術 〔大谷吉秀〕 43
Q1.局所切除で充分と思ってendostaplerで切ったが,一部潰瘍が崩れてしまった.断端は腫瘍でないが,どうしよう!43
Q2.腹腔鏡下局所切除を予定したが,腫瘍が胃上部後壁にあって自動縫合器がかけられない.どうしよう!43
Q3.腹腔鏡観察で腫瘍が見つからない.どうしよう!43
●ドキリとした場面の解決体験 (3) 〔大谷吉秀〕 43
■C.大腸
1.右側結腸切除術 〔國場幸均・渡邊昌彦〕 44
Q1.重力を利用し腸管を移動させ術野を作れというが,どのような体位がよいのか? 安全な固定法はどうすればよいか?44
Q2.脂肪が多くて閉口する場合の工夫点は?44
Q3.どこから剥離を開始するか? 後腹膜臓器の損傷回避は?45
Q4.右結腸曲(肝彎曲)を簡単に授動するコツは?47
Q5.腸間膜をうまく剥離,授動するためには? また,剥離層を保持するためのコツは?48
Q6.血管根部へどのように近づき安全に切離するか?48
Q7.血管壁を損傷したらどのように止血するか?49
Q8.腸管が小切開創より充分出てこない.どうしよう!49
2.左側結腸・S状結腸切除術 〔奥田準二・谷川允彦〕 50
Q1.婦人科疾患で開腹手術既往があり,下腹部正中創瘢痕を認め,癒着のために臍部からポートが入れられない.どうしよう!50
Q2.癒着剥離時に腸管を損傷した.どうしよう!50
Q3.術野の展開が困難なことが多い.あまり極端な頭低位にすると麻酔科のドクターからクレームがくるし,どうしよう!51
Q4.剥離層がうまく同定できない.何を目安にすればいいのか?52
Q5.尿管が同定できない.どうしよう!53
Q6.尿管に電気メスの熱が伝わって白くなっている.どうしよう!54
Q7.脂肪が多くて閉口する.経験豊富な人たちはどうやっているのだろう?54
Q8.腸間膜内の血管処理時に出血した.どうしよう!55
Q9.肛門側腸管の剥離授動はどちらからどのように行えばいいのだろう?55
Q10.肛門側腸管の腸間膜の処理がうまく行えない.どうすればいいのか?55
Q11.肛門側腸管切離前の直腸洗浄はどうすればいいのか? また,肛門側腸管切離を1回のステープリングで行うにはどうしたらいいのか?56
Q12.左結腸曲の授動を安全に行うにはどうすればいいのか?56
Q13.Double stapling法による吻合を行うべく肛門よりサーキュラーステープラーを入れたが,断端にうまくおさまらず,断端が裂けてしまった.どうしよう!57
Q14.口側腸管のアンヴィルをうまく肛門側腸管のセンターロッドにはめられない.どうしよう!57
●ドキリとした場面の解決体験 (4) 〔奥田準二・谷川允彦〕 58
3.直腸切除術 〔宗像康博〕 59
Q1.剥離層がうまく同定できない.何を目安にしたらいいのだ?59
Q2.尿管が同定できない.どうしよう!59
Q3.尿管に熱が伝わって一部白くなっている.どうしよう!59
Q4.尿管が一部切れてしまった.どうしよう!59
Q5.脂肪が多くて閉口する.経験豊富な人たちはどうやっているのだろう?60
Q6.重力を使って腸管を移動させて術野を作れというが,いったいどこまで傾けてもいいものだろう? 安全な固定方法は何か?60
Q7.直腸をendostaplerで切ったが,緊張がかかった状態で切ったので,一部が開いていないか心配だ.どうしよう!61
Q8.直腸を引っ張って剥離しているうちに一部穴があいた.どうしよう!61
Q9.直腸後面の血管処理を超音波凝固切開装置でやっていたら直腸が焼けて一部白くなっている.ここで切離して大丈夫だろうか? また,超音波凝固切開装置だけで切ると不安だが,どうしよう! クリップを使うと吻合の時じゃまになるかもしれない. 61
Q10.DSTで吻合したら,吻合後に抜けなくなった.どうしよう!61
Q11.DSTで吻合したら,帰室してから大量に下血した.どうしよう!61
4.経肛門的内視鏡下手術(TEM/TES) 〔金平永二〕 62
Q1.肛門にTEMの筒が入らない.どうしよう!62
Q2.TEMセットアップを行ったが,腫瘍が上にみえた.どうしよう!62
Q3.炭酸ガス直腸通気を開始したが,腸管内が拡張せず視野が悪い.どうしよう!62
Q4.TEMの筒を挿入したが,腫瘍がみえない.どうしよう!63
Q5.腫瘍が大き過ぎて視野が展開できない.どうしよう!64
Q6.Raのものを粘膜切除のつもりで切除していたら腹腔内がみえた.どうしよう!64
Q7.切除範囲が大きくなって縫合閉鎖が難しい.どうしよう!65
5.虫垂切除術 〔吉川征一郎・福永正氣〕 66
Q1.手術適応の急性虫垂炎と診断したが,妊娠20週の母体だった.どうしよう!66
Q2.炎症が強そうだ.どこにポートを置こう?67
Q3.トロカー刺入時に下腹壁静脈を損傷し出血した.どうしよう!68
Q4.炎症で腸管が拡張していて視野がとれない.どうしよう!68
Q5.虫垂が盲腸・上行結腸の裏に入り込んで癒着している.どうしよう!68
Q6.回盲部膿瘍で回腸がしっかり覆い被さっている.どうすればいい?69
Q7.癒着が強固で剥離できず,オリエンテーションがつかない.どうしよう!70
Q8.急性虫垂炎を疑い腹腔鏡下虫垂切除術を選択,スコープを挿入したら正常な虫垂が観察された.どうしよう!70
Q9.虫垂がぼろぼろで虫垂間膜は炎症により極度に肥厚している.どう処理するか?70
Q10.虫垂が溶けてしまって根部がループで結紮できない.どうしよう!71
Q11.せっかく術者になれたのに炎症が強い.経験が少なく,先に進めない.どうしよう!71
Q12.穿孔例で上下腹部に広範に膿が広がっていた.洗浄後ドレーンはどうする?71
Q13.癒着が著明で小腸の剥離を行い無事に虫垂切除できたが,腸管損傷が心配だ.どうしよう!72
Q14.腹腔鏡下虫垂切除術を行い,特に問題なかったはずなのに,術後発熱が続いている.どうしよう!72
6.直腸脱に対する腹腔鏡下手術 〔宮島伸宜・須田直史〕 74
Q1.腸管が長くてうまく視野を展開できない.どうしよう!74
Q2.うまく剥離層をつかめない.どうしよう!74
Q3.どこまで剥離すればいいのかわからない.どうしよう!75
Q4.メッシュを直腸壁に固定する際に,ステープルが深く入って直腸壁を損傷したようだ.どうしよう!76
Q5.剥離中に仙骨前面から出血した.どうしよう!76
Q6.直接縫合固定をしようとして仙骨前面に糸針をかけたら出血した.どうしよう!77
Q7.直腸周囲の脂肪が多くて重そうで,メッシュ固定では重量に耐えられるか不安である.どうしよう!77
●ドキリとした場面の解決体験 (5) 〔宮島伸宜・須田直史〕 78
■D.急性腹症
1.イレウス解除術 〔山田成寿・加納宣康〕 79
Q1.腹腔鏡下手術を施行しようと思うが,高度癒着が予想される.困ったなー.First portをどこにしたらいいのだ?79
Q2.腹腔内を観察すると,予想よりも腸管拡張が強く,術野が作りにくい.どうしよう! 何かよい工夫はないか?80
Q3.癒着が軽快してから手術をしたところ,多数の癒着部位があり,どこが責任部位かわからない.どうしよう!81
Q4.腸管同士の癒着がきつくてここが責任病変と思われるが,腹腔内操作での剥離は難しそう.どうしよう!82
Q5.癒着剥離はできて通過障害も解除できたが,腹壁の腹膜欠損が大きい.どうしよう! 何かいい手はないのか?82
Q6.癒着剥離中に腸管に孔があいてしまった.どうしよう!82
Q7.腸管が脆弱で把持が困難だ.どうしよう!83
Q8.小開腹して病変を処理したが,他に責任病変が残っていないか心配だ.どうしよう!84
2.腹膜炎に対する腹腔鏡下手術 〔草薙 洋・加納宣康〕 85
Q1.腹腔内をみたところ,全体に汚染が強い.洗浄して責任部位を探したいが,汚染が強くて洗浄が大変そう.効果的な洗浄法はあるのか?85
Q2.直腸穿孔であることが判明した.このあとどうする?85
Q3.小腸穿孔で腸切除を要すると思われる.このまま腹腔内操作のみでいくか,補助下にするか?85
■E.胆道
1.胆嚢摘出術―その1 〔加納宣康〕 86
Q1.胃切除後症例で,臍下部よりopen techniqueでHasson cannulaを入れようとしたが,同部に癒着があって挿入できない.どうしよう!86
Q2.胆嚢が緊満していて術野が作りにくい.どうしよう!86
Q3.炎症がきつくて剥離・切離操作での出血が多い.胆嚢動脈を切ったわけでもないのに,これでは剥離操作が進められない.どうしよう!86
Q4.腹腔鏡下胆嚢摘出術を施行しようと腹腔内をみたが,Calot三角が全く同定できない.どうしよう?86
Q5.ある程度剥離したが,胆嚢管なのか,総胆管なのか区別がつかない.どうしよう? 造影で総胆管を傷つけたということになるのもいやだし.87
Q6.萎縮しかつ壁肥厚を伴った胆嚢で,かつその周囲に急性炎症所見も加わっており,胆嚢底部での肝床との間の剥離も難しい.最高度の難しい症例だ.どうしよう!87
Q7.造影にて大きな合流部結石がある.どうしよう!88
Q8.胆嚢がねじれた状態で剥離している間に胆嚢管が切れてしまった.どうしよう!89
●ドキリとした場面の解決体験 (6) 〔高木純人・金子弘真〕 89
1.胆嚢摘出術―その2 〔中川国利〕 91
Q1.胃切除後症例で,臍下部よりopen techniqueでHasson cannuleを入れようとしたが,同部に癒着があって挿入できない.どうしよう!91
Q2.胆嚢が緊満していて術野が作りにくい.どうしよう!91
Q3.炎症がきつくて剥離・切離操作での出血が多い.胆嚢動脈を切ったわけでもないのに,これでは剥離操作が進められない.どうしよう!91
Q4.腹腔鏡下胆嚢摘出術を施行しようと腹腔内をみたが,Calot三角が全く同定できない.どうしよう!92
Q5.ある程度剥離したが,胆嚢管なのか,総胆管なのか区別がつかない.どうしよう? 造影で総胆管を傷つけたということになるのもいやだし.92
Q6.萎縮しかつ壁肥厚を伴った胆嚢で,かつその周囲に急性炎症所見も加わっており,胆嚢底部での肝床との剥離も難しい.最高度の難しい症例だ.どうしよう!93
Q7.造影にて大きな合流部結石がある.どうしよう!93
Q8.胆嚢を剥離している間に胆嚢管が切れてしまった.どうしよう!93
Q9.総胆管を損傷してしまった.どうしよう!94
Q10.胆嚢に腸管が強固に癒着している.どうしよう!94
Q11.胆嚢動脈から出血した.どうしよう!94
2.総胆管結石症手術―1.総胆管切開術 〔長谷川 洋〕 96
Q1.総胆管切開の際にはトロカーを追加した方がよいのだろうか? またトロカーのサイズはどうしたらいいのだろう?96
Q2.胆管切開する道具は何がよいだろう? 電気メスを使うと術後狭窄にならないだろうか?96
Q3.胆管非拡張例に切開を行わなければならない.どういった点に注意したらよいだろう?96
Q4.胆管周囲の炎症が強くてどこを切開してよいかわからない.また,胆管壁が厚くて切開しても内腔がわからない.どうしよう!96
Q5.総胆管結石をバスケットカテーテルで取ろうとしたが,しっかり嵌り込んでいて結石の横をカテーテルが通らない.どうしよう!97
Q6.バスケットは結石の奥に入ったが,結石がバスケットの中にうまく入らない.上手いコツはないのか? 道具が悪いのか?97
Q7.胆管内に無数の小結石があって,洗浄しても洗浄しても出てくる.どこまでやればいいのだ?97
Q8.切石操作を繰り返しているうちに,総胆管の切開孔が引き裂かれたようにいびつに大きくなってしまった.どうしよう!98
Q9.切石する際に結石ないしその破片が流れ出てしまった.どうしよう!98
Q10.バスケット鉗子で結石を把持し取り出そうとしたが,予想外に大きく,胆管切開孔から出ない.どうしよう!99
Q11.結石が多い場合,もう少し効率的に結石の取り出しができないだろうか?99
Q12.胆管切開部が直視しにくく,縫合閉鎖が難しい.どうしよう!99
Q13.この手術の経験はまだ少ないが,結紮法はどの方法がやさしいのだろう?100
Q14.総胆管の縫合,結紮している時,総胆管壁がかえって切れて損傷してしまった.どうしよう!100
Q15.手術は終了したが縫合などにやや不安がある.ドレナージをしっかり効かせたいが,どういった種類のドレーンをどの位置に置いたらよいのだろう?100
2.総胆管結石症手術―2.経胆嚢管的総胆管切石術 〔山下裕一〕 101
Q1.この胆管結石は経胆嚢管的総胆管切石術の適応なの?101
Q2.胆道鏡を胆嚢管内に挿入しようとしたが,総胆管内まで挿入できない.どうしよう!101
Q3.操作中に3管合流部付近が裂けてしまった.どうしよう!102
Q4.胆嚢管内に結石があり胆道鏡が挿入できない.どうしよう!102
Q5.肝側胆管内の観察ができない.どうしよう!102
Q6.摘出時に胆嚢管内に結石がひっかかってしまった.どうしよう!103
Q7.どうしても胆管内の結石がとれない.どうしよう!103
Q8.術後に総胆管内に遺残結石がみつかった.どうしよう!103
Q9.C−チューブの抜去時期はいつ?103
■F.膵臓
1.膵腫瘍核出術 〔井上典夫・小山善久・竹之下誠一〕 104
Q1.インスリノーマで周囲組織をつけて核出術の予定であったが腫瘤がむき出しになってしまった.どうしよう!104
Q2.主膵管から離れていると思って核出していったが,主膵管の損傷が心配になってきた.どうしよう!105
Q3.核出していったら深部より思わぬ出血を来たした.どうしよう!106
2.膵体尾部切除術 〔草薙 洋・加納宣康〕 109
Q1.体尾部を脾も含めて授動できたので,endostaplerで膵を切離したいが,脾動静脈も一緒に切ってしまってよいのだろうか? 脾動静脈を別々に分離して結紮切離する技量に自信がないのだが.109
Q2.膵の切離線となる部位の膵が分厚くて,endostaplerで切るとかえって膵を損傷してしまいそう.どうしよう!109
Q3.超音波凝固切開装置で膵を切離したが,断端の処理はどうしよう?110
Q4.良性の膵嚢胞性腫瘍と思って腹腔鏡下手術を施行したが,念のためにリンパ節郭清もある程度したい.どうするのがいちばんよいのだろうか?110
Q5.切除は終わったが,標本をいちばん小さな創で取り出すにはどの方法がよいのだろう? 破砕はしたくないな.110
3.鏡視下膵仮性嚢胞胃開窓術 〔森 俊幸・杉山政則・跡見 裕〕 111
Q1.とりあえず嚢胞穿刺したが,鏡視下膵仮性嚢胞胃開窓術の適応はどうするか?111
Q2.嚢胞近くに仮性動脈瘤がある.術式はどうしよう!111
Q3.嚢胞がみつからない.どうしよう!111
Q4.胃内トロカーが抜けてしまう.どうしよう!112
Q5.出血だ.どうしよう!112
Q6.胃後壁と仮性嚢胞壁が癒着していない.どうしよう!113
Q7.嚢胞内のデブリはどうしよう!114
Q8.縫合に自信がない.本術式は施行可能か?114
Q9.後出血だ.どうしよう!114
Q10.嚢胞感染だ.どうしよう!114
Q11.仮性嚢胞が再発した.どうしよう!115
■G.肝臓
1.肝腫瘍に対するablation 〔高見裕子・才津秀樹・朔 元則〕 116
Q1.ablationで発生した熱はそのまま放置しても大丈夫?116
Q2.肝癌が太い脈管と接して存在するが,ablationは大丈夫?116
Q3.ablationしてみたが,意外に血管近くが灼けているようで不安だ.どうしよう!117
Q4.肝癌が横隔膜直下ドーム部に存在しているため,胸腔サイドよりアプローチした.しかし,横隔膜が肝臓と高度に癒着しているため剥離が難しい.ablationはどうしよう!117
Q5.門脈内に血栓を形成したようだ.どうしよう!118
Q6.ablationの方法としてマイクロ波とラジオ波,はたしてどちらがいいの?118
2.肝切除術 〔金子弘真・高木純人〕 120
Q1.本邦では肝切除は気腹下に行うべきではないとする報告が多いが,海外では気腹下に行っている報告も珍しくない.いったいどこまでがいけないのだろうか?120
Q2.腹腔鏡下の肝切除では太い血管が切れて奥に入ってしまったらどうやって止血するのか不安だが,こういう時どうするのか?121
Q3.以前はマイクロ波で切離予定線を凝固してから切っていく方法が多く発表されていたが,現在では超音波凝固切開装置などをうまく使えばその必要はないということか?122
3.肝嚢胞に対する手術 〔山崎 元〕 125
Q1.肝葉全体を占めるような巨大肝嚢胞が見つかった.どうしよう!125
Q2.肝嚢胞円蓋切除するにあたり,嚢胞と胆管の交通がないか心配だ.術後ドレーンから胆汁が出てきたらどうしよう!125
Q3.術前単純性肝嚢胞と診断し円蓋切除を開始したが,本当に腫瘍性嚢胞でないか心配だ.腫瘍性嚢胞であれば播種させないか心配だ.126
Q4.嚢胞表面に意外と肝実質があり肝臓を切らなければ円蓋切除ができないようだ.どうしよう!126
Q5.嚢胞壁の切除を開始し始めたが切離面に黄色い液が滲むようだ.嚢胞に接した胆管を切離したのか心配だ.どうしよう!126
Q6.肝表面の大きな嚢胞の円蓋切除が終わったと思ったら,その下にまた大きな嚢胞があるようだ.どうしよう! どこまでやればいいのだ?127
Q7.残存嚢胞壁からの術後分泌量を減らす目的で高周波メスを用い内腔上皮の焼灼を開始したら出血してきた.どうしよう!127
Q8.術後ドレーンからの排液が多く,いつドレーンを抜去してよいかわからない.どうしよう!128
Q9.術後のfollow upのCTで嚢胞切除部にfluid collectionがある.どうしよう!128
■H.脾臓
1.脾臓摘出術 〔津川康治・橋爪 誠〕 129
Q1.大きな脾臓を受動していく時,圧排しているうちに出血を来たさないかと心配だ.うまい圧排方法は何か?129
Q2.脾門部で脾動静脈をEndostaplerを使って切離したが,膵尾部が入ってしまったらしい.このままにしておいてよいだろうか?129
Q3.脾門をEndostaplerで切離したら,脾動脈が裂けてしまった.どうしよう!129
Q4.脾臓を摘出して袋に入れたが,創をできるだけ小さいまま取り出したい.よい方法は何か? どこかで崩す器械を使って死亡に結びついた報告もあると聞いたが? 131
Q5.脾臓が大きい! どうしよう!132
Q6.門脈圧亢進症の患者で,脾周辺の側副血行路が発達している.どうしよう!132
Q7.血小板減少に対してどうしよう! 血小板の輸血の適応はいつ?132
Q8.良好な術野が確保できない! どうしよう!133
Q9.巨脾例での後腹膜剥離操作時に出血が多くなる! どうしよう!133
●ドキリとした場面の解決体験 (7) 〔津川康治・橋爪 誠〕 134
■I.副腎
1.右副腎摘出術 〔黒川良望〕 135
Q1.副腎が肝と強く固着している例ではどうやってはがすのだろう?135
Q2.肝を持ち上げているうちに短肝静脈がちぎれて出血したら,どうやってコントロールするのだろう? またそうならないための基本手技はどんなもんだろう?136
Q3.下大静脈へ入る副腎静脈の首が短い場合,どのように処理するのだろう? 抜けちゃったらどうするのだろう?137
Q4.脂肪が多くて副腎がなかなか見つからない例では,どんなコツがあるのか?137
●ドキリとした場面の解決体験 (8) 〔黒川良望〕 138
2.左副腎摘出術 〔今井常夫・柴田有宏・中尾昭公〕 139
Q1.いざ手術を開始するにあたって,どこにトロカーを挿入するのがいいかわからない.何を目安にすればいいのか?139
Q2.膵臓と副腎の間の剥離を始めたが,剥離するレイヤーがわからなくなった.どうしよう!140
Q3.脾臓と膵臓を脱転したが,腫瘍がどこにあるかはもちろん,副腎そのものの存在もわからない.いったいどこから剥離を始めればいいのか?141
Q4.副腎中心静脈がうまく出せない.褐色細胞腫で副腎中心静脈を最初に剥離しようと腫瘍を少し圧排すると血圧変動が激しい.どうしよう!142
■J.鼠径ヘルニア手術
1.TAPP 〔松本純夫〕 144
Q1.ヘルニア嚢を切除した後の腹膜が,操作中に損傷されて(ボロボロになってしまって),通常のヘルニアステイプラーではうまく閉じられない.どうしよう!144
Q2.ヘルニア嚢が深くて容易に摘出できない.どうしよう!144
Q3.大きなヘルニアをTAPPで手術したら陰嚢にまで漿液がたまってしまった.どうしよう!144
2.TEPP 〔池田正仁〕 146
Q1.腹膜外腔をバルーンで拡張してから,バルーンを抜去したら,その創より血液が吹き出してきた.すわ!大出血? どうしよう!146
Q2.バルーンを膨らませた後,腹膜外腔を腹腔鏡で観察したところ,下腹壁動静脈が視野の上方に立ち上がらず腹膜とともに下方に薙ぎ倒されている.剥離して上に持ち上げようとするが,どうしても持ち上がらない.出鼻をくじかれ,戦意を喪失しそうだ.どうしよう!146
Q3.腹腔鏡用トロカーの先端に腹膜外腔の組織が被っており,腹腔鏡挿入時にレンズが汚れ,よい視野が得られない.どうしよう!146
Q4.腹膜が破れて気腹になってしまい術野がとれない.どうしよう!147
Q5.TEPPで始めたが,経験不充分のためかオリエンテーションが充分でない.どうしよう!147
Q6.ヘルニア嚢の剥離に取りかかったが,よくみるとヘルニア嚢内に何か臓器があるようだ.鼠径部を圧迫したり,頭低位にするが還納できない.どうしよう!148
Q7.大きく深くまで続いている巨大な外鼠径ヘルニア嚢はどうやったらうまく処理できるのだろう?148
Q8.再発鼠径ヘルニアの手術をTEPPで始めたところ,術中に,前回手術がメッシュプラグ法であったことがわかった.プラグされたメッシュと腹膜との剥離は極めて困難だ.さあ,どうしよう!149
Q9.大腿ヘルニア嚢の還納を試みるが,どうしても還納できない.どうしよう!150
Q10.メッシュが腹腔鏡用トロカーから腹膜外腔へ入らない.
無理に押すと血管を損傷しそうで恐い.どうしよう!150
●ドキリとした場面の解決体験 (9) 〔池田正仁〕 151
■K.腹壁
1.腹壁瘢痕ヘルニアに対する腹腔鏡下手術 〔井谷史嗣〕 152
Q1.補強材料の選定はどうしているのか?152
Q2.腹腔内(腹腔に直接固定する場合)においてもよい材質の場合,癒着の心配は本当にないのか.153
Q3.ステイプラーやタッカーだけの固定では不安な気がするが大丈夫か?153
Q4.腹壁の薄い例では,腹壁を押さえながらタッカーを打ち込むと,皮下にまで出そうな気がするが,その際の要領は何か?153
Q5.トロカーはどこに挿入するか,またそのコツは?154
Q6.癒着剥離のコツは?155
Q7.ヘルニアに腸管や大網が陥頓しており,鉗子で引っ張ると出血や腸管損傷を起こしそうだ.どうすればよいのだろう?155
Q8.手術開始時(皮膚の消毒時)に臍のクリーニングが不充分であることが発覚した.一応はきれいにしたものの,腹壁に結紮点のマーキングを行う際に皮膚に直接メッシュを置くと感染しそうだ.どうすればいいのだろう?156
Q9.癒着剥離中に腸管損傷を来した時はどうするか.術式の変更をするのか?156
Q10.腹腔鏡下にて胆嚢摘出術と腹壁ヘルニア修復術を同時に施行する際に,胆嚢摘出中に胆嚢が破れて胆汁が腹腔内にもれてしまった.メッシュを使用して腹壁ヘルニアを修復しても感染は起こさないだろうか?156
Q11.エンドクローズを腹壁に刺入した際にかなりの勢いで出血し始めた.どう対処したらいいか?157
Q12.術後に漿液腫を合併した.感染はないようだがどう対処したらいいのだろう?157
Q13.タッカーでメッシュを固定していたら,手前(トロカー側)のメッシュがずれて腹壁とのオーバーラップが不充分になりそうだ.どうしよう!158
索引 159