第2版の序 本著「不整脈トレーニング」は,ロングセラーになっている「心電図トレーニング」の姉妹版として出版されました.幸いにも好評でしたが既に多年を経ています.

 今回,在庫が殆ど無くなったのを機会に,新しく手を加えて改訂版を出すことになりました.不整脈は日常臨床上に遭遇する機会の多い重要な症候であり,その診断から治療へのプロセスは臨床的に極めて大切なことです.しかしこの数年間の不整脈領域における診断や治療技術の発展には目を見張るものがあります.

 このような医療技術の進歩発展により,本著も改訂すべき幾つかの部分が出てきました.その主な原因は治療技術の進歩にあります.新しい抗不整脈薬の出現や,カテーテルアブレ ーションのような不整脈の非薬物療法が盛んになり,不整脈の診療にあたって,その発現機序の理解は必須となってきました.

 このような背景で,今回の改訂では今まで難しいとされ,故意に避けていた電気生理学的な基礎の理解が少しでも可能となるように,手を加えました.また,それと関連する治療方針に関しても新しい情報を入れることにしました.

 しかし,本著の意図するところの基本は,あくまでも不整脈を心電図から如何に解析して診断して行くかのトレーニングにあります.従って,従来好評だった図の綺麗な実例の部分はなるべく残すように努力しました.本著が従来にも増して,多くの方々の支持を得ることを願い,不整脈の臨床がより身近なものとなって頂けることを祈っています.

 本著の改訂を企画した中外医学社の青木三千雄社長,荻野邦義氏をはじめとする関係各位,日本大学第二内科心臓研究班の素晴らしい仲間たち,および多年にわたりご支持頂いた読者の皆様に謝意を表します.

1997年7月  自然長寿村ホータンへの出発を前に


著者初版の序

","不整脈の基礎的トレーニング

A. 不整脈の理解に必要な刺激伝導系の基礎的知識 2

1. 洞結節 2

2. 結節間伝導 2

3. 房室結節 2

4. ヒス束 4

5. 右脚と左脚 4

6. プルキンエ線維 4

B. 不整脈の種類にはどのようなものがあるか? 5

1. 頻脈性不整脈 5

2. 徐脈性不整脈 6

3. その他の不整脈や伝導障害 6

C. 不整脈の診断と臨床的評価の関係は? 7

D. 危険な不整脈の判定の要点は? 8

1. 致死的不整脈の診断 9

2. 致死的不整脈に移行する可能性の高い不整脈 10

a) 心室停止に至る徐脈性不整脈 10

b) 心室頻拍 12

3. 危険な不整脈 14

a) 失神発作のない洞機能不全症候群および房室ブロック 14

b) 危険な心室性期外収縮 14

c) 上室性不整脈 16

d) 洞房ブロックと房室ブロック 18

E. 不整脈の判読に必要な電気生理学的基礎知識 20

1. 静止電位と活動電位 20

a) 第0相 21  b) 第1相 21  c) 第2相 21

d) 第3相 21  e) 第4相 21

2. 心臓内の主な部分の活動電位の特徴 21

3. 活動電位の発生と伝導の機序の要点は? 23

a) 細胞膜の静止状態でのイオンの分布はどのようになっているのでしょうか? 23

b) 活動電位の成立メカニズムはどうなっているのでしょうか? 24

c) 活動電位と不整脈の関係 26

4. 不応期と過常期 27

5. 主な不整脈の発生機序にはどのようなものがあるか? 28

a) 頻脈性不整脈の発生メカニズム 28

b) 粗 動 31

c) 細 動 31

d) QT延長症候群とTorsadesdePointes 32

F. 不整脈治療の要点は? 33

G. 抗不整脈薬のVAUGHANWILLIAMS分類とSicilianGambitとは? 36

H. 不整脈判読のポイント 38

1. 基本になっている調律は何か? 38

I. 洞調律の判定 38

II. 上室性調律の判定のポイント 39

a) 房室接合部付近にペースメーカーがあるとき 39

b) 心房上部にペースメーカーがあるとき 41

c) 左心房側にペースメーカーがあるとき 41

III. 心室調律の判定のポイント 42

a) 心房と心室の興奮が解離しているときの心室調律 42

b) 心室調律の興奮が心房に逆伝導しているとき 42

IV. 心房細動の判定のポイント 43

V. 心房粗動の判定のポイント 44

2. 不整脈のおこり方はどうか? 45

a) 基本調律が整な場合 45

b) 基本調律が不整な場合 47

3. 不整脈出現時の波形の区別の仕方 49

a) 通常の洞調律のときの各心拍の波形はどうか? 49

b) P波を他の類似波形から区別するためには 53

c) P波が他の波形に重なっているのを見分けるには 54

d) 幅広く変形したQRSをみたときにはどう考えたらよいか 56

4. 実例による波形認識のトレーニング 58

a) 実例呈示 58  b) 実例の説明 70

5. 不整脈の解析図の作り方 88

a) 洞調律の場合 88

b) 上室性不整脈の場合 90

c) 心室性不整脈の場合 92

6. どんな誘導が不整脈の解析によいか 93

7. 不整脈判読のヒント 95

不整脈判読のトレーニングcase 1 上室性期外収縮 98

2 ブロックを伴った上室性期外収縮 98

3 洞房ブロック(MOBITZ II型) 102

4 上室性期外収縮(3段脈) 102

5 第2度房室ブロック 106

6 第2度房室ブロック(WENCKEBACH型) 106

7 房室接合部性調律・ペースメーカーの移動 110

8 軽度の心室内変行伝導を伴う上室性期外収縮 114

9 心室内変行伝導を伴う上室性期外収縮 114

10 呼吸性不整脈に伴うQRSの変形 118

11 呼吸性不整脈とペースメーカーの移動 120

12 2源性上室性期外収縮 120

13 上室性副収縮 124

14 shortrun型上室性期外収縮 124

15 WENCKEBACH型周期の房室伝導を示す

shortrun型上室性期外収縮 128

16 2:1ブロックを伴うshortrun型上室性頻拍 132

17 極く短い一過性心房粗動と上室性期外収縮 132

18 心房粗動 136

19 R-Rの不規則な心房粗動 139

20 2:1伝導の心房粗動 141

21 発作性上室性頻拍 141

22 発作性上室性頻拍 144

23 2:1ブロックを示す上室性頻拍 148

24 shortrunを示す上室性期外収縮(一部QRSの脱落を伴う) 148

25 一過性心房細動 152

26 心房細動 156

27 f波の大きな心房細動 156

28 f波の小さな心房細動 156

29 頻脈性心房細動 160

30 徐脈性心房細動 160

31 心室性補充収縮を伴う徐脈性心房細動 163

32 完全房室ブロックを伴った心房細動 166

33 心室内変行伝導を伴う心房細動 166

34 心室性期外収縮と心房細動 171

35 右脚ブロックを合併した心房細動 173

36 W-P-W症候群の発作性心房細動 175

37 代償休止期を伴う心室性期外収縮 177

38 間入性心室性期外収縮 179

39 心室性期外収縮の2段脈 182

40 心房細動と心室性期外収縮 182

41 shortrun型心室性期外収縮 186

42 多形性心室性期外収縮 186

43 RonTの心室性期外収縮 192

44 心房への逆伝導を伴う心室性期外収縮 192

45 心室性期外収縮と融合収縮 198

46 心室頻拍 202

47 心室性副収縮と心房粗動 206

48 acceleratedidioventricularrhythm 210

49 第1度房室ブロック 210

50 WENCKEBACH型房室ブロック 214

51 2:1房室ブロック・ventriculophasicsinusarrhythmia 218

52 やや高度な第2度房室ブロック(MOBITZ II型房室ブロック)・洞性頻脈 218

53 完全房室ブロック 222

54 完全房室ブロック 222

55 心室性補充調律を伴った高度の第2度房室ブロック 226

56 洞房ブロック(MOBITZ II型) 230

57 補充収縮を伴う洞休止 230

58 WENCKEBACH型周期を示す第1度房室ブロック・洞休止・接合部性補充収縮 234

59 等頻度房室干渉解離 234

60 高度の洞房ブロック2 38

61 著明な徐脈の完全房室ブロック 238

62 補充収縮の極端に少い完全房室ブロック 242

63 徐脈頻脈症候群 242

64 著明に頻脈な心室頻拍 246

65 W-P-W症候群の発作性心房細動 250

66 心室頻拍・心停止 254

67 心室細動・心停止 258

68 人工ペーシング 260

69 上室性補充調律 264

70 洞性不整脈により生じた房室接合部性補充収縮 268

71 一過性にみられたW-P-W症候群の波形 272

72 心室性期外収縮・acceleratedidioventicularrhythm・洞房ブロック 272

73 W-P-W症候群と心室性期外収縮 276

74 補充調律と回帰収縮 280

索 引…284