がん化学療法の進歩は著しく新しい知識を追いかけるだけでも大変な時代となってきている.がん化学療法とは薬物によるがんの治療法を総称するものである.がん化学療法は,細胞に対し直接毒性を示す抗がん剤を用いる治療のみならずホルモン療法やがん細胞の有する特異的な分子標的を標的とする分子標的治療薬をも含む.多数の治療法が臨床導入されるとともに膨大な数の臨床試験が行われ各々の腫瘍に対する標準的治療が刻々と変化している.したがって各々の薬剤の特徴,作用機序,薬物動態を充分理解し,自分自身でプロトコールを作成でき標準的治療確立に至るまでの臨床試験を遂行でき,得られたエビデンスに基づきグローバルスタンダードの治療を行える臨床腫瘍専門医=がん薬物療法専門医が極めて重要になってくる.
 日本臨床腫瘍学会(Japanese Society of Medical Oncology:JSMO)では,これらの条件を満たす優れた質の高い専門医育成を目指している.具体的にはESMO/ASCOコアカリキュラムに基づく教育カリキュラムを作成,それを習得するため,臨床腫瘍学全域をカバーする教育セミナーをAコース,Bコースに分け年2回ずつ行っている.2005年末にはこの教育セミナーの内容をどの程度マスターしたかを評価するための試験を行い,2006年には初のがん薬物療法専門医を誕生させる予定である.臨床腫瘍医の養成には各大学に臨床腫瘍学講座を創設することが最も効果的かつ有効と思えるが,現状では実現が困難である.急速に増加し続けるがん患者に対するより優れた治療法の均霑化のため色々な努力を行う必要がある.「臨床腫瘍学」の教科書もあるが,少しハンディな本書で現状を理解し臨床腫瘍学を目指す若い先生方が増加することを願いたい.

2005年9月
国立がんセンター
西條長宏


目次

第 I 章 がん化学療法の進歩  1
1.基礎研究の進歩とトランスレーショナルリサーチ<鶴尾 隆>  2
 1.新しいタイプの抗がん剤  2
 2.がんの分子標的薬剤の最近の進歩  3
 3.抗がん剤耐性,アポトーシス耐性因子と耐性の克服  4
 4.分子標的薬剤に関する疾患遺伝子研究  5
 5.トランスレーショナルリサーチの推進  6

第 II 章 がん化学療法の新しい標的  9
1.がん化学療法の新しい標的−総論−<藤原 豊 西條長宏>  10
 1.従来の抗がん剤開発  10
 2.がん化学療法の新しい標的  12

2.増殖シグナル伝達<坂井和子 西尾和人>  15
 1.増殖因子受容体の構造  15
 2.受容体からのシグナル伝達  17
 3.変異による受容体の活性化  17
 4.細胞内シグナル伝達  17
  1)MAPKシグナル  17
  2)PI3K/AKTシグナル  18
  3)JAK/STATシグナル  18
 5.変異による細胞内シグナルの変化  18
 6.他の遺伝子変異によるシグナル活性化  19

3.細胞周期<渡辺信元 長田裕之>  20
 1.サイクリン・CDK複合体とその調節因子  20
  1)G1期からS期進行に関与するサイクリンD・E・A依存キナーゼ  20
  2)CDK阻害蛋白質,CIP/KIPファミリーとINK4ファミリー  21
  3)G2期からM期への進行に関与するサイクリンA・B依存キナーゼとそのリン酸化による活性制御  21
 2.チェックポイント制御機構  22
  1)G1/S期チェックポイント  22
  2)S期チェックポイント  22
  3)G2期チェックポイント  23
  4)M期チェックポイント  23
 3.細胞周期制御因子を標的とする抗がん剤  23
  1)CDK阻害剤  23
  2)CDC25阻害剤  24
  3)CDK阻害蛋白質の分解を標的とする薬剤  24

4.アポトーシス<金 隆史>  29
 1.抗がん剤による細胞死  29
 2.p53とBcl‐2ファミリー蛋白  29
 3.アポトーシス誘導経路  30
 4.アポトーシス抑制経路  33
 5.非アポトーシス誘導(オートファジー)  34
 6.アポトーシス誘導の臨床的意義  34
  1)抗腫瘍効果  34
  2)免疫修飾効果  34
 7.標的治療  35
 8.今後の課題と展望  36

5.テロメレース<新家一男>  38
 1.テロメレースの生物学  38
 2.テロメレースを標的にした薬剤  40
  1)テロメレースRNA  40
  2)逆転写酵素阻害剤  40
  3)低分子テロメレース阻害剤  40
 3.テロメア構造を標的にした薬剤  40
  1)G‐quadruplex(G4q)作用物質  40
  2)新規G‐quadruplex作用物質telomestatin  41

6.細胞分化<大平達夫 坪井正博 平野 隆 加藤治文>  45
 1.レチノイド  45
 2.急性前骨髄性白血病における分化誘導療法  45
 3.肺がんにおける有用性  46

7.細胞表面マーカー/細胞接着因子<松永卓也 新津洋司郎>  48
 1.細胞表面マーカー  48
  1)CD20  48
  2)CD52  49
  3)CD33  49
  4)CD45  50
 2.細胞接着因子  50
  1)α4β1‐インテグリン(VLA‐4)  50
  2)α3β1‐インテグリン,αvβ1‐インテグリン  51
  3)αvβ3‐インテグリン,αvβ5‐インテグリン  51

8.血管新生<秋山伸一>  54
 1.血管新生の機構  54
 2.腫瘍血管の特性  55
 3.標的としての新生血管  56
 4.がん遺伝子,がん抑制遺伝子と血管新生  56
 5.血管新生阻害剤  56
 6.血管新生阻害剤の臨床での効果  57
  1)Avastin  57
  2)サリドマイド  57
  3)IFN‐α  57
  4)metronomic chemotherapy  58
 7.vascular targeting agents(VTAs)について  58

9.プロテアソーム<冨田章弘 鶴尾 隆>  61
 1.プロテアソーム阻害剤  61
 2.プロテアソーム阻害剤の抗がん作用  62
 3.抗がん剤の作用とユビキチン・プロテアソーム系  63
 4.ユビキチン・プロテアソーム系によるトポイソメラーゼの分解制御  64

10.耐性因子  68
 a.ABCトランスポーター<岡 三喜男 福田 実 早田 宏>  68
 1.ABCトランスポーターの機能,構造,分類  68
  1)Pgp/ABCB1  70
  2)MRP1〜3/ABCC1〜3  71
  3)BCRP/ABCG2  71
 2.ABCトランスポーターの阻害剤と併用療法における有害事象  72
 3.分子標的薬とABCトランスポーター  73
 4.ABCトランスポーターを回避する抗がん剤の開発,遺伝子多型  73
 b.その他の耐性因子 新規分子標的治療薬に対する耐性とがんの個性<塩津行正 秋永士朗>  75
 1.imatinibに対する耐性  75
 2.gefinitib,erlotinibに対する耐性  77
 3.分子標的がん治療薬と化学療法剤の併用による耐性克服  78
 4.抗体医薬に対する耐性  78

第 III 章 新薬の開発  81
1.バイオテクノロジーの進歩と創薬<古谷利夫>  82
 1.ENCODE計画  82
 2.創薬ターゲット  83
 3.ケモジェノミックス  84
 4.システムバイオロジー  85

2.抗がん剤の臨床試験実施に必要な毒性試験<安藤孝夫 中村博安>  89
 1.ガイドラインの要点  89
  1)ヒトへ初めて投与される場合に必要な毒性試験および安全性薬理試験  89
  2)承認申請までに実施すべき毒性試験  93
 2.非臨床試験からみた第?相試験の考え方  96
  1)がん患者を対象とする第?相試験における投与量  96
  2)健康成人対象の第?相試験における投与量  98
 3.抗がん剤併用に関する毒性試験  98
 4.抗がん剤によくみられる副作用に関連する評価方法  98
 5.薬物動態と安全性評価  100
  1)動物を用いた薬物動態試験の意義  100
  2)トキシコキネティクス試験の意義  101
  3)ヒトでの安全域の考え方  101

3.臨床試験のための薬効試験<杉本芳一 内田淳二>  104
 1.新医薬品の承認申請に関わる規制の現状  104
 2.抗がん剤の主薬理試験  105
  1)in vitro 感受性試験  108
  2)in vivo 薬効試験  109
  3)作用機序  111
 3.非臨床試験からの臨床効果の予測  111

4.米国・欧州での薬剤開発<関口 勝>  114
 1.製薬企業の欧米における臨床試験  114
  1)治験依頼者  114
  2)治験実施医療機関  115
  3)治験説明会の開催  116
 2.米国・欧州における抗がん剤の臨床開発  117
  1)米国でのpaclitaxelの臨床開発  117
  2)欧州でのpaclitaxelの臨床開発  118
  3)その他,paclitaxelの臨床開発  119

第 IV 章 興味ある分子標的治療薬,化学療法薬  123
1.イマチニブ<山田康秀>  124
 1.CML  124
  1)第 I 相試験とイマチニブの薬物動態  124
  2)第 II 相試験  124
  3)第 III 相試験  124
  4)耐性の機序  125
 2.GIST  125
  1)第 II 相試験  125
  2)KIT,platelet‐derived growth factor α変異とイマチニブの効果  125
  3)第 III 相試験  126
  4)治療継続期間(継続 vs 中断,BFR14試験)  127
  5)耐性の機序  127
  6)補助療法  127
 3.他の疾患  127

2.ゲフィチニブ<後藤功一>  130
 1.第 I 相試験  130
 2.第 II 相試験  131
 3.第 III 相試験  131
 4.臨床病理学的効果予測因子  133
 5.EGFR遺伝子変異  133
 6.間質性肺炎  134
 7.肺がんに対する進行中の臨床試験  134
 8.肺がん以外の固形がんに対する治療成績  134
 9.エルロチニブ  136

3.トラスツズマブ<戸井雅和>  138
 1.HER2検索の意義  138
 2.トラスツズマブの作用機序  138
 3.トラスツズマブの副作用  139
 4.臨床試験の成績  140
  1)初期臨床試験の成績  140
  2)転移性乳がんに対するトラスツズマブ併用の臨床試験  140
  3)術後補助療法におけるトラスツズマブ併用療法の臨床試験  141
 5.内分泌治療との併用  142

4.キメラ型抗CD20モノクローナル抗体(リツキシマブ)<小椋美知則>  144
 1.基礎  144
 2.濾胞性リンパ腫に対するリツキシマブの応用  145
  1)単剤での寛解導入療法  145
  2)維持療法  146
  3)rituximabと化学療法の併用療法(R‐CHOP療法)  146
  4)rituximabと化学療法の併用療法(R‐fludarabine療法,R‐cladribine療法など)  147
  5)in vivo purging 法による自家造血幹細胞移植併用の大量化学療法  147
 3.びまん性大細胞型B細胞性リンパ腫(DLBCL)  149
 ■初発進行期DLBCLに対するR‐CHOP療法  149

5.セタキシマブ<高島淳生 濱口哲弥>  151
 1.EGFR  151
 2.薬理作用および作用機序  152
 3.臨床応用  153
  1)大腸がん  153
  2)非小細胞肺がん  155
  3)膵がん  155
  4)頭頸部扁平上皮がん  155
 4.有害事象  155

6.ベバチズマブ<目良清美 大津 敦>  158
 1.血管新生とVEGF  158
 2.bevacizumabの概略  158
 3.第 I 相臨床試験  159
 4.第 II 相臨床試験  159
 5.第 III 相臨床試験  161
 6.その他の血管新生阻害剤  162

7.ボルテゾミブ<飛内賢正>  165
 1.プロテアソームとは?  165
 2.プロテアソーム阻害剤ボルテゾミブの開発  165
 3.ボルテゾミブの臨床第 I 相試験  166
  1)固形がんに対する第 I 相試験  166
  2)造血器腫瘍患者に対する第 I 相試験  167
 4.治療抵抗性骨髄腫に対するボルテゾミブの大規模第 II 相試験(SUMMIT Trial)  167
 5.その後の臨床試験と他のがん腫での検討状況  167

8.その他の分子標的治療薬 169
 a.小分子物質  <河石 真 山本 昇>  169
 1.エルロチニブ(タルセバ)  169
 2.ZD6474  172
 3.ラパチニブ(GW572016)  173
 4.SU11248  173
 b.抗体<清水俊雄 田村友秀>  176
 1.2C4(pertuzumab)  177
 2.IDEC‐Y2B8(90Y‐ibritumomab tiuxetan,90Y‐ゼバリン)  178
  1)Stanford大学単施設での第 I / II 相臨床試験  178
  2)多施設共同による第 I / II 相臨床試験  178
  3)rituximab不応の濾胞性リンパ腫に対する第 II 相臨床試験  178
  4)再発B細胞リンパ腫に対するrituximabとの比較試験  178
 c.HGF‐Met系ならびに血管新生を標的とするNK4:制がん作用と作用機作<松本邦夫 中村敏一>  180
 1.がん分子標的治療におけるHGF‐Met系の意義とNK4による阻害  180
 2.NK4の血管新生阻害作用  182
 3.大腸がん肝転移モデルでのNK4治療のproof‐of‐concept  182
 4.膵臓がんを例とする難治性がんに対するNK4の制がん作用  185
 5.NK4による臨床試験の展望  187

9.アルキル化剤<向井博文>  191
 1.アルキル化剤の作用機序  191
 2.マスタード類  192
  1)マスタージェン  192
  2)シクロフォスファミド  192
  3)イフォスファマイド  192
 3.アジリジン類  193
  1)サイオテーパ  193
  2)マイトマイシンC  193
 4.ニトロソウレア類  193
  1)カルムスチン  193
  2)ラニムスチン  193
 5.アルキル化剤の毒性  193
  1)生殖細胞への影響  193
  2)発がん作用  193
  3)免疫抑制作用  194
 6.オキサリプラチン  194

10.トポイソメラーゼ阻害剤<樋田豊明>  195
 1.DNAトポイソメラーゼ酵素  195
 2.トポ I 阻害剤  196
  1)イリノテカン  196
  2)トポテカン  198
  3)その他のトポ I 阻害剤  198
 3.トポ II 阻害剤  198
  1)非インターカレーター  199
  2)インターカレーター  199
 4.トポ I / II 阻害剤  199

11.微小管に作用する抗がん剤<藤阪保仁 田村友秀>  201
 1.ビノレルビン(ナベルビン)  201
 2.パクリタキセル(タキソール)  202
 3.ドセタキセル(タキソテール)  203
 4.エポチロン  204

12.抗がん抗生物質<堀池 篤 西尾誠人>  207
  1)アンスラサイクリン系  207
  2)アクチノマイシン系  207
  3)アンスラキノン系  210
  4)マイトマイシン系  210
  5)ブレオマイシン系  210
  6)ネオカルチノスタチン系  210
  7)塩酸アムルビシン  210

13.その他の細胞障害性抗悪性腫瘍薬−サリドマイド(アナログも含む)の抗悪性腫瘍薬としての展開−<長井俊治>  214
 1.薬理  214
 2.抗腫瘍効果を示す作用機序  214
 3.臨床応用  216
 4.副作用  217
 5.アナログ  217

14.テーラーメイド治療の可能性  220
 a.EGFRのmutation・遺伝子発現と治療効果<佐々木秀文 藤井義敬>  220
 b.感受性・耐性の予測−感受性試験と発現解析<徳永えり子 沖 英次 馬場秀夫 前原喜彦>  225
 1.腫瘍組織を用いた細胞生物学的抗がん剤感受性試験  225
  1)in vitro抗がん剤感受性試験  225
  2)in vivo抗がん剤感受性試験  226
  3)抗がん剤感受性試験の実状と問題点  227
 2.分子生物学的手法を用いた遺伝子発現解析による感受性・耐性予測  227
  1)ターゲットを絞った発現解析  227
  2)網羅的解析  228
 c.臨床的予後因子<関根郁夫>  233
  1)腫瘍関連症状  233
  2)性別  234
  3)年齢  234
  4)PS  234
  5)喫煙  234
  6)今後の予後因子  235
 d.病理学的予後因子−生検組織を用いた治療感受性予知の可能性−<落合淳志>  238
 1.生検組織を用いた検討における問題点  238
 2.生検組織を用いた胃がん症例における免疫染色,FISH法による評価の意義  240
 3.肺がんにおける抗がん剤反応性の予知  241

第 V 章 薬物動態,DDS,Biochemical modulation  245
1.薬物動態/薬力学(PK/PD)・母集団薬物動態解析(population PK)<荒木和浩 南 博信>  246
 1.薬物動態解析の考え方  246
 2.薬物の体内動態  246
  1)薬物の投与部位からの吸収  247
  2)薬物の体内分布  248
  3)薬物の代謝  248
  4)薬物の排泄  250
  5)薬物動態パラメーター  250
 3.薬力学解析  251
 4.臨床薬理学に基づいた個別化治療  252
  1)個別化治療の重要性  252
  2)治療的薬物モニタリング  252
  3)薬物相互作用  253
 5.母集団薬物動態解析  254

2.薬理遺伝学<小澤正吾>  257
 ■種々の抗がん剤に関する薬理遺伝学  259
  1)プリン/ピリミジン代謝酵素と標的酵素の遺伝子多型  259
  2)イリノテカン代謝関連遺伝子の一つUGT1A1の多型  261
  3)様々な抗がん剤の代謝に関与するシトクロムP450の遺伝子多型  262
  4)様々な抗がん剤の動態に関連する薬物トランスポーター遺伝子多型−ABCトランスポーターを中心に  263

3.ドラッグデリバリーシステム<松村保広>  267
 1.リポソーム  267
 2.ミセル体  269
 3.海外での状況  273

4.Biochemical modulation<水沼信之>  275
 1.5‐FU/LV療法  275
 2.UFT/LV療法  277
 3.S‐1  277
 4.capecitabine  278

第 VI 章 細胞療法<松村有子 上 昌広>  281
 1.造血幹細胞移植の歴史  282
 2.移植手技  282
 3.適応疾患とその成績  283
  1)急性骨髄性白血病  283
  2)急性リンパ性白血病  284
  3)慢性骨髄性白血病  284
  4)骨髄異形成症候群  284
  5)悪性リンパ腫  285
  6)多発性骨髄腫  285
 4.移植関連合併症  286
  1)急性GVHD  286
  2)慢性GVHD  287
 5.新しい移植方法  287
  1)同種末梢血幹細胞移植  287
  2)骨髄バンクと非血縁者間骨髄移植  287
  3)臍帯血移植  287
  4)骨髄非破壊的移植(ミニ移植)  287
  5)HLA不適合移植  288
  6)固形腫瘍に対する造血幹細胞移植  288

第 VII 章 がん治療の補助療法,副作用対策  293
1.化学療法による末梢神経毒性とその評価<下妻晃二郎>  294
 1.タキサン系抗がん剤による末梢神経毒性のメカニズム  294
  1)多発性神経毒性の分類  294
  2)神経毒性のメカニズム  294
 2.症状の特徴  295
  1)概要  295
  2)タキサンの種類による相違  295
  3)投与量,投与スケジュールとの関連  295
  4)運動性障害その他の障害による症状の特徴  296
 3.医療者による評価法  296
 4.患者による主観的評価法  297
 5.予防・治療・ケア  297
  1)予防  297
  2)治療  298
  3)ケア  298

2.造血障害<久保田 馨 藤井知紀>  301
 1.白血球/好中球減少  301
  1)発熱のない好中球減少時の対処  301
  2)発熱性好中球減少時のリスクファクター  302
  3)発熱性好中球減少時の対処  302
 2.貧血  303
  1)輸血  303
  2)エリスロポエチン製剤  303
 3.血小板減少  303
  1)治療的血小板輸血か予防的輸血か  304
  2)予防的血小板輸血の閾値  304
  3)サイトカイン  304

3.ゲフィチニブと肺障害<田村研治>  306
 1.アストラゼネカ社によるレトロスペクティブ調査  306
 2.西日本胸部腫瘍臨床研究機構(WJTOG)によるレトロスペクティブ調査  307
 3.アストラゼネカ社によるプロスペクティブ調査  309
 4.ゲフィチニブによる間質性肺炎の初期症状と治療  309

第 VIII 章 放射線化学療法<藤原 豊>  311
 1.放射線感受性に影響を与える生物学的特性  312
  1)細胞周期  312
  2)損傷の回復  312
 2.放射線化学療法の目的  312
 3.放射線と化学療法のタイミング  312
  1)sequential(逐次的放射線化学療法)  312
  2)concurrent(同時放射線化学療法)  313
  3)alternating(交互放射線化学療法)  313
 4.薬剤と放射線の相互作用  313
 5.放射線化学療法で併用される抗がん剤  314
  1)プラチナ誘導体  314
  2)タキサン系  315
  3)マイトマイシンC  315
  4)代謝拮抗剤  315
  5)トポイソメラーゼI阻害剤  315

第 IX 章 がん治療の臨床試験と行政  317
1.医師主導治験<藤原康弘>  318
 ■医師主導治験の実施上の問題点・検討課題  318
  1)治験の準備段階  318
  2)治験の計画の届出  321
  3)治験の実施  322

2.大規模治験ネットワーク<小林史明 内田毅彦 寺岡 暉>  324
 1.日本医師会治験促進センターと治験推進研究事業  324
 2.大規模治験ネットワーク  324
  1)大規模治験ネットワークの構築  324
  2)疾患別治験ネットワーク  325
  3)製薬企業が依頼者となる治験の実施医療機関  325
 3.治験推進研究事業における医師主導治験  325
  1)治験薬の選定  325
  2)治験促進センターの業務  326
 4.治験実施基盤の整備  328
  1)大規模治験ネットワーク登録医療機関への情報提供と地域治験ネットワークとの連携  328
  2)治験活性化のための産官学合同フォーラムの開催  328
  3)国民への啓発活動  328

3.抗悪性腫瘍薬の適応外使用と未承認薬に対する対策<牧本 敦>  330
 1.適応外使用の定義と背景  330
 2.適応外使用問題の解決策  330
 3.抗がん剤併用療法に関する検討委員会の活動と成果  331
 4.適応拡大に係る医師の責務  333

4.臨床試験における統計学(案)<宇野 一 竹内正弘>  334
 1.基本原則  334
 2.交絡,無作為化と比較可能性  334
 3.盲検化  335
 4.標的母集団と研究母集団,一般化可能性  335
 5.検定と区間推定  336
 6.優越性試験と同等性・非劣性試験  337
 7.安全性および有効性のデータモニタリングと中間解析  338
 8.intension‐to‐treat(ITT)  339

5.JCOG臨床試験の現状<福田治彦>  340
 1.JCOGとは?  340
  1)JCOG臨床試験の守備範囲  340
  2)関連組織  340
 2.構造  341
  1)研究グループ  341
  2)データセンター  341
  3)委員会事務局  342
 3.試験のプロセスと各委員会の役割  342

6.臨床研究の倫理指針<廣田光恵>  349
 1.「臨床研究に関する倫理指針策定」の経緯  349
  1)臨床研究を取り巻く状況  349
  2)「臨床研究に関する倫理指針」の策定  349
  3)個人情報保護法の施行に伴う倫理指針の改定  350
  4)改正の方向性  350
 2.臨床研究に関する倫理指針の概要  350
  1)適用範囲  350
  2)用語の定義  352
  3)研究者等の責務等  352
  4)臨床研究機関を有する法人の代表者および行政機関の長等の責務  353
  5)インフォームド・コンセントの再取得  353
 3.臨床研究に関する倫理指針の法制化について  353

7.CRCの動向<小原 泉>  356
 1.抗悪性腫瘍薬臨床試験におけるCRCの役割と業務体制  356
 2.CRCの雇用・配置と定着  358
 3.CRCの教育  358

第 X 章 各論:各臓器がんの治療  361
1.脳腫瘍<西川 亮>  362
 1.神経膠腫  362
 2.中枢神経悪性リンパ腫  365
 3.髄芽腫  366
 4.頭蓋内胚細胞腫瘍  367

2.頭頸部がん<藤井博文>  371
 1.頭頸部がん治療の考え方と化学療法の位置づけ  371
 2.頭頸部がん治療での化学療法  371
  1)転移・再発症例に対する化学療法  371
  2)初回治療症例に対する化学療法  373
 3.わが国におけるエビデンスの利用と構築における問題点  377

3.乳がん<徳永伸也 勝俣範之>  379
 1.術後薬物療法  379
  1)術後化学療法  379
  2)術後内分泌療法  380
 2.術前薬物療法  382
 3.転移・再発乳がんの薬物療法  382
  1)内分泌療法  382
  2)化学療法  383

4.食道がん<佐藤道夫 安藤暢敏>  386
 1.化学療法  386
  1)単独治療としての化学療法  386
  2)手術補助療法としての化学療法  387
 2.化学放射線療法  388
  1)根治的化学放射線療法  388
  2)術前化学放射線療法  389

5.小細胞肺がん<葉 清隆>  392
 1.化学療法の歴史  392
 2.新規抗がん剤を含む化学療法  393
  1)paclitaxel/docetaxel  393
  2)topotecan  393
  3)irinotecan  394
  4)vinorelbine  394
  5)gemcitabine  394
  6)amrubicin  394
  7)pemetrexed  395
 3.限局型小細胞肺がんにおける化学療法  395
 4.進展型小細胞肺がんにおける化学療法  395
 5.高齢者に対する化学療法  395
 6.セカンドライン化学療法  396
 7.大量化学療法  396
 8.分子標的療法  397

6.非小細胞肺がん<軒原 浩>  400
 1.進行非小細胞肺がんにおける化学療法の意義  400
 2.新規抗がん剤  401
 3.プラチナ製剤を含んだ標準的治療の確立  401
 4.プラチナ製剤+新規抗がん剤同士の比較  402
 5.プラチナ製剤を含まない化学療法,プラチナ製剤を含む3剤併用化学療法  403
 6.再発時の化学療法  403
 7.高齢者に対する化学療法  404
 8.分子標的治療薬  404

7.非小細胞肺がんの術後adjuvant療法<坪井正博 加藤治文 奥仲哲弥>  408
 1.臨床第 III 臨床試験の治療成績  408
  1)2002年末までのコンセンサス  408
  2)2003年に始まった術後補助療法のパラダイムシフト  409
  3)日本独自の臨床試験  410
 2.実地医療における術後化学療法の位置づけ  411
 3.今後の展望  412

8.進行胃がん<土井俊彦>  415
 1.5‐fluorouracil(5‐FU)を中心にした胃がんに対する標準的化学療法の探索  415
 2.胃がん治療の最近の展開  416
 3.New Agent combination  417
 4.胃がんにおける進展形式からの抗がん剤治療  419
 5.胃がん治療における新規薬剤の開発  419

9.進行大腸がん−切除不能・再発大腸がんに対する化学療法−<山崎健太郎 吉野孝之 朴 成和>  422
 1.肝動注化学療法  422
 2.全身化学療法  423
  1)欧米における臨床試験成績  423
  2)日本の現状  428

10.胃がん・大腸がんのadjuvant療法  433
 a.胃がん<木下 平 高橋進一郎>  433
 1.胃がん補助化学療法の歴史的な流れ  433
 2.JCOGがこれまでに行ってきた臨床試験  434
 3.補助療法の有用性を報告したその他の臨床試験  434
 4.最近の補助化学療法に関する比較試験  434
 b.大腸がん<高橋進一郎>  437
 1.stage III 結腸がんに対する欧米での臨床試験(5‐FU‐based regimen)  437
 2.stage III 結腸がんに対する本邦での臨床試験  439
 3.stage II 結腸がんに対する術後補助療法  439
 4.新規抗がん剤(oxaliplatin,irinotecan)を用いた補助療法  439
 5.今後の展望  440

11.肝細胞がん,胆道がん,膵がん<古瀬純司 石井 浩 吉野正曠>  442
 1.肝がんにおける化学療法  442
  1)化学療法の適応  442
  2)動注化学療法  442
  3)全身化学療法  442
 2.胆道がん  443
  1)全身化学療法の意義  443
  2)全身化学療法の現状  443
 3.膵がん  444
  1)全身化学療法の現状  444
  2)分子標的薬  446
  3)全身化学療法の適応  447

12.婦人科がん<吉川裕之>  451
 1.卵巣がん(卵管がん,腹膜がん)  451
 2.子宮頸がん  452
 3.子宮体がん  452
 4.有害事象について  453

13.泌尿器科領域の腫瘍<北村 寛 塚本泰司>  455
 1.副腎がん  455
 2.腎がん(腎細胞がん)  455
 3.腎盂・尿管がん  456
 4.膀胱がん  456
  1)全身化学療法  456
  2)膀胱内注入(膀注)療法  458
 5.前立腺がん  459
 6.陰茎がん  460
 7.精巣腫瘍  460
  1)セミノーマ  460
  2)非セミノーマ  461

14.メラノーマ・皮膚がん<斎田俊明>  465
 1.メラノーマの化学療法  465
  1)進行期メラノーマの化学療法  466
  2)ハイリスク患者への術後補助療法  467
 2.皮膚有棘細胞がんの化学療法  468
 3.乳房外Paget病の化学療法  469
 4.血管肉腫の化学療法  469

15.原発不明がん<伊藤国明>  472
 1.診断  472
 2.治療  473
  1)原発不明未分化がん  474
  2)原発不明扁平上皮がん  474
  3)原発不明腺がん  474

16.白血病<柳田正光 直江知樹>  477
 1.急性骨髄性白血病  477
  1)概要  477
  2)寛解導入療法  477
  3)地固め療法  477
  4)維持療法  478
  5)造血幹細胞移植  478
  6)再発・不応例に対する治療  478
 2.急性リンパ性白血病  478
  1)概要  478
  2)寛解導入療法  479
  3)地固め療法  479
  4)維持療法  479
  5)造血幹細胞移植  480
  6)再発・不応例に対する治療  480
 3.慢性骨髄性白血病  480
  1)概要  480
  2)イマチニブ  480
  3)インターフェロン  481
  4)造血幹細胞移植  481
  5)その他の化学療法  481
 4.慢性リンパ性白血病  481
  1)概要  481
  2)アルキル化剤を含んだ治療  481
  3)プリンアナログ製剤  482
  4)造血幹細胞移植  482

17.悪性リンパ腫およびその他の造血器腫瘍<畠 清彦>  485
 1.Hodgkinリンパ腫  485
  1)病理所見による分類と頻度  485
  2)診断に必要な検査とその所見  485
  3)予後  486
 2.悪性リンパ腫  486
  1)化学療法剤  486
  2)多剤併用療法  488
  3)抗体療法(rituximabを中心に)  488
 3.indolent lymphoma濾胞性リンパ腫の標準的治療とサルベージ療法,予後  489
  1)初期の方針とwatch and wait  489
  2)病像  489
  3)亜群  490
  4)放射線照射の今後の意味  490
  5)化学療法  490
  6)rituximab monotherapy  490
  7)rituximab 以外の抗体療法  490
 4.aggressive lymphoma  491
  1)IPI index  491
  2)これまでの標準的治療  491
  3)rituximab承認後の標準的治療−R‐CHOP  491
  4)第二選択治療salvage therapy  492
  5)造血幹細胞移植における rituximab の使用  493
  6)local disease(early stage)  493
 5.多発性骨髄腫  494
  1)多発性骨髄腫とは  494
  2)症状  495
  3)診断  495
  4)治療方針  495
  5)新たな治療法  495
  6)プロテオソーム阻害剤bortezomib(PS341)−開発の歴史とコンセプト  496
 6.日本での問題点  499
  1)外来治療の推進  499
  2)都市と地方,施設間の差  499

18.小児がん<河上千尋 牧本 敦>  501
 1.造血器悪性疾患  501
  1)造血器悪性疾患総論  501
  2)造血器腫瘍の標準的治療法  501
  3)造血器腫瘍に対する臨床試験と治療開発  503
 2.小児固形腫瘍  504
  1)小児固形腫瘍総論  504
  2)小児固形腫瘍の標準的治療  505
  3)小児固形腫瘍に対する臨床試験と治療開発  506
 3.とくに成人発症の「小児がん」について  507

19.整形外科領域の腫瘍: 悪性骨・軟部腫瘍に対する化学療法<岩本幸英>  510
 1.悪性骨・軟部腫瘍の疾患背景  510
  1)原発性悪性骨腫瘍  510
  2)悪性軟部腫瘍(軟部肉腫)  510
 2.原発性悪性骨腫瘍に対する化学療法  511
  1)骨肉腫に対する化学療法  511
  2)骨Ewing肉腫に対する化学療法  512
  3)骨悪性線維性組織球腫に対する化学療法  513
  4)その他の悪性骨腫瘍に対する化学療法  513
 3.悪性軟部腫瘍(軟部肉腫)に対する化学療法  513
  1)円形細胞軟部肉腫に対する化学療法  513
  2)非円形細胞軟部肉腫に対する化学療法  513

索引  517