序
「症例で学ぶ画像診断トレーニング<腹部>,<胸部>」が完成,出版される運びとなった.本書は臨床の勉強を始めた医学生,その修練を始めた研修医,画像診断のレベルアップを目指す各科の医師を対象に,画像検査,画像所見,疾患などについての知識を整え,画像診断の能力向上をはかることを狙って構成した.本書は,症例の画像を見ながら質問に答えるクイズ形式で書かれている.解説はポイントを重視してできるだけ簡潔にまとめた.この形式はどこからでも気軽に勉強ができること,記憶に残りやすいことを意図したものである.症例の選択は,日常の診療で遭遇する頻度が高い疾患を含め,医師国家試験の画像問題に出題された疾患を含めることを意識して行った.このため,本書は医師国家試験の画像問題に対する準備,演習に好適である.また,各学会の認定医試験や専門医試験の準備にも役立つ場合が多いと考える.
腹部,胸部の画像診断は単純撮影,超音波断層,CTなどを用いて行うことが多く,MRI,血管造影,消化管造影,核医学検査などを用いることもある.一般に画像診断は,(1)正常像を意識しながら画像を観察して病変を見つける,(2)解剖の知識を使って病変の部位や広がりを把握する,(3)各検査の特徴を考慮しながら病変の性状(構造,組成など)を推定する,(4)推定した病変の性状とその部位に発生する可能性がある疾患の性状(病理所見など)を比べて適合する疾患名を挙げる,などの手順で行われる.画像診断のレベルアップをはかるためには,それぞれの検査の画像に慣れるとともに,各症例の画像を丁寧に観察し,上記の手順の経験を重ねることが大切である.さらに画像診断の達人を目指すためには,鑑別診断(上記(4))行う際に思い浮かべることのできる疾患の引出しを増やし,その内容を充実させる努力が必要である.これらのことも頭に置いて本書を役立てて頂ければ幸甚である.
2005年6月
古井 滋
目次
I.食道
症例1 先天性食道閉鎖 <原 裕子> 1
症例2 食道癌 <八巻悟郎> 4
症例3 PSSの食道病変 <八巻悟郎> 6
症例4 食道アカラシア <八巻悟郎> 6
症例5 食道静脈瘤 <八巻悟郎> 8
症例6 食道裂孔ヘルニア <八巻悟郎> 8
II.胃・十二指腸
症例1 進行胃癌 <八巻悟郎> 11
症例2 胃潰瘍 <八巻悟郎> 11
症例3 胃平滑筋腫 <八巻悟郎> 14
症例4 胃悪性リンパ腫 <八巻悟郎> 14
症例5 肥厚性幽門狭窄症 <原 裕子> 16
症例6 新生児胃破裂 <原 裕子> 18
症例7 先天性十二指腸閉鎖 <原 裕子> 21
III.小腸・結腸
症例1 Hirschspung病 <原 裕子> 23
症例2 腸回転異常症 <原 裕子> 25
症例3 回腸閉鎖 <原 裕子> 27
症例4 直腸肛門奇形(中間位鎖肛) <原 裕子> 29
症例5 Meckel憩室 <奥田逸子> 31
症例6 Crohn病 <奥田逸子> 33
症例7 潰瘍性大腸炎 <奥田逸子> 35
症例8 腸結核 <奥田逸子> 37
症例9 新生児壊死性腸炎 <原 裕子> 39
症例10 虫垂炎 <奥田逸子> 41
症例11 大腸憩室症 <奥田逸子> 43
症例12 S状結腸癌(潰瘍限局型) <奥田逸子> 45
症例13 腸重積 <奥田逸子> 47
症例14 イレウス <奥田逸子> 49
症例15 上行結腸出血 <竹下浩二> 51
症例16 消化管穿孔 <竹下浩二> 53
IV.肝
症例1 急性肝炎(A型) <竹下 徹> 55
症例2 肝硬変 <山内禎祐> 57
症例3 肝細胞癌 <山内禎祐> 59
症例4 胆管細胞癌 <山内禎祐> 61
症例5 転移性肝癌 <山内禎祐> 64
症例6 肝血管腫 <佐々木泰志> 66
症例7 肝嚢胞 <佐々木泰志> 68
症例8 肝芽腫 <竹下 徹> 70
症例9 肝膿腫(細菌性) <竹下 徹> 73
症例10 脂肪肝 <佐々木泰志> 76
症例11 肝損傷(深在性) <竹下 徹> 78
症例12 肝内結石 <竹下 徹> 81
V.胆
症例1 胆石 <佐々木泰志> 85
症例2 胆嚢癌 <山内禎祐> 87
症例3 胆管癌 <山内禎祐> 89
症例4 急性胆嚢炎 <佐々木泰志> 91
症例5 先天性総胆管拡張症 <竹下浩二> 93
症例6 先天性胆道閉鎖症 <川崎 努> 95
症例7 原発性硬化性胆管炎 <竹下浩二> 97
症例8 慢性胆嚢炎 <佐々木泰志> 99
症例9 胆嚢腺筋腫症 <佐々木泰志> 101
VI.膵臓
症例1 急性膵炎 <竹下浩二> 103
症例2 慢性膵炎 <竹下浩二> 105
症例3 膵癌 <竹下浩二> 107
症例4 インスリノーマ <竹下浩二> 109
症例5 膵粘液性嚢胞腺腫 <竹下浩二> 111
VII.脾臓
症例1 脾腫,門脈圧亢進症 <神長達郎> 113
VIII.腎
症例1 腎癌(腎細胞癌) <築山俊毅> 115
症例2 腎盂癌 <築山俊毅> 117
症例3 Wilms腫瘍 <原 裕子> 120
症例4 水腎症 <築山俊毅> 123
症例5 重複腎盂尿管 <築山俊毅> 125
症例6 下大静脈後尿管 <築山俊毅> 127
症例7 尿管結石 <森 耕一> 129
症例8 腎結核(漆喰腎) <牧田幸三> 132
症例9 線維筋異形成症(腎血管性高血圧) <築山俊毅> 134
症例10 単純性腎嚢胞 <田中宏子> 136
症例11 多嚢胞腎 <田中宏子> 138
症例12 腎動静脈瘻 <牧田幸三> 140
症例13 腎梗塞 <田中宏子> 142
症例14 腎損傷 <竹下 徹> 144
症例15 慢性腎盂腎炎 <田中宏子> 148
症例16 悪性リンパ腫 <小久保宇> 150
IX.副腎
症例1 副腎腺腫 <小久保宇> 153
症例2 褐色細胞腫 <小久保宇> 155
症例3 神経芽腫 <原 裕子> 157
X.前立腺
症例1 前立腺癌 <田中宏子> 159
XI.精巣
症例1 精巣腫瘍(後腹膜リンパ節転移) <田中宏子> 161
XII.卵巣
症例1 卵巣奇形腫(皮様嚢胞腫) <竹下 徹> 163
症例2 卵巣癌 <竹下 徹> 166
XIII.子宮
症例1 子宮頸癌 <高田晃一,原澤有美> 171
症例2 子宮腺筋症 <高田晃一,原澤有美> 174
症例3 絨毛癌 <竹下 徹> 176
症例4 子宮筋腫 <高田晃一,原澤有美> 179
XIV.その他
症例1 閉塞性動脈硬化症 <竹下 徹> 183
症例2 腹部大動脈瘤 <竹下 徹> 186
症例3 腹水 <竹下浩二> 189
症例4 腹腔内膿瘍 <竹下浩二> 191
症例5 癌性腹膜炎 <竹下浩二> 193
症例6 門脈圧亢進症に伴う胃・食道静脈瘤 <竹下浩二> 195
索引 197