2版の序
1997年に初版が発刊されて早くも3年が経過しようとしている．この間，肺癌の臨床領域では特に目立った進歩は窺えないが，化学療法の分野では最近，臨床に導入された抗癌剤を含む併用療法の成績をベースにした新たな展望に期待がかけられてきている．
初版発行に際して述べたことでもあるが，本書は肺癌の診断・治療に際して必要とされる知識を具体的かつ簡潔に提供することを目的として作られた書で，内容は教科書的な記述の羅列に陥ることなく肺癌診療の実際のすべてに亘って，さらに第2版では初版以降新たに加えられた最近における展望と問題点が述べられている点，今日的な実務指南書といえる．
座右において活用されることを望むものである．
2001年3月
東京がん化学療法研究会
仁井谷久暢
序
本書は肺癌の診断・治療に際して必要とされる知識を具体的かつ簡潔に提供することを目的につくられた書で，執筆頂いたメンバーは全て現在第一線で活躍中の超多忙な専門家ばかりである．しかし内容は教科書的な記述の羅列に陥ることなく，今日における肺癌診療の実際の全てに亘ってその問題点と今後の展望が明確に述べられている．
肺癌増加の折から肺癌領域の専門家に止まらず肺癌診療の実際に携わる臨床腫瘍医にとっては好個の指南書が加えられたことになるのではないかと秘かに自負している．座右において活用されることを望むものである．
1997年10月
東京がん化学療法研究会
仁井谷久暢
目 次
I 肺癌診療の動向 〈仁井谷久暢〉 2
II 肺癌に対する実地医療と臨床試験 〈山本 昇，西條長宏〉 6
III 肺癌の予防
1．禁煙教育…〈守谷欣明〉 12
1．喫煙の健康影響，喫煙関連疾患…12
2．ニコチン依存症，ニコチン離脱症状…12
3．ニコチン依存度…14
4．禁煙指導に利用する検査…16
5．ニコチンガム，ニコチンパッチによる禁煙指導…17
2．集団検診…〈守谷欣明〉 18
1．肺癌検診の方式…18
2．胸部X線検査…19
3．喀痰細胞診…23
IV 肺癌の診断
1．臨床症状…〈米田修一〉 28
2．腫瘍随伴症候群…〈米田修一〉 30
3．臨床所見…〈米田修一〉 32
4．画像診断…〈宮本 徹，大松広伸〉 35
A．胸部X線…31
1．胸部単純X線写真正面像読影手順…35
2．肺癌の胸部X線読影…36
3．肺門型肺癌の胸部X線読影…38
4．肺野型肺癌の胸部X線読影…39
5．胸部単純X線写真において孤立性結節影をきたす疾患…40
B．胸部CT…40
1．肺野孤立結節影の鑑別…40
2．CTによる肺癌の進展度の診断…40
C．新しい診断法…44
5．気管支ファイバースコープ…〈長尾啓一〉 47
1．適応と施行前検査…47
2．ファイバースコープの種類…47
3．検体採取器具…48
4．手 技…49
5．気管支の正常所見…49
6．腫瘍増殖により形成される内視鏡所見…50
7．内視鏡的早期肺癌の診断基準…52
8．内視鏡的所見…52
9．気管支ファイバースコープによる
検査の合併症とその対策…53
10．内視鏡的蛍光診断…54
11．気管支超音波診断…54
6．経皮的肺針生検…〈長尾啓一〉 55
1．適 応…55
2．画像ガイド…55
3．採取検体と生検針…55
4．採取検体の固定…56
5．生検の手技…57
6．合併症…59
7．腫瘍マーカー…〈波戸岡俊三，光冨徹哉〉 60
1．腫瘍マーカーの定義…60
2．肺癌の主な腫瘍マーカー…60
3．腫瘍マーカーの選択…61
4．臨床の各局面における有用性…62
8．新しい診断法…〈光冨徹哉〉 66
1．肺癌の発癌感受性診断…68
2．肺癌の早期発見…70
3．微小転移細胞の検出…72
4．制癌剤の感受性と遺伝子異常…73
5．肺癌のclonalityの検討…73
6．肺癌の悪性度診断…74
7．今後の方向…74
9．呼吸機能検査…〈長尾啓一〉 76
1．検査目的…76
2．呼吸機能検査の各種項目…76
10．TNM分類，臨床病期と治療適応 〈河原正明〉 81
11．予後因子…〈河原正明〉 88
1．非小細胞肺癌の予後因子…88
2．小細胞肺癌の予後因子…90
12．肺癌の組織型と細胞診…〈亀谷 徹〉 92
1．肺癌の組織診・細胞診の材料の取扱いと
一般的な有用性について…92
2．組織型の分類とその有用性…93
3．主な肺癌の肉眼所見と組織所見…99
4．日常の喀痰細胞診の報告について…107
V 肺癌の治療
1．手術の適応と術式…〈原 信之〉 112
A．手術の適応…112
1．肺癌手術の基本的考え方…112
2．肺癌手術症例の選択…112
3．肺癌の手術適応…114
4．肺癌手術例の成績…117
B．肺癌の手術術式…117
1．標準的術式…117
2．隣接臓器合併切除…119
3．気管・気管支形成術…119
2．拡大手術と縮小手術…〈原 信之〉 120
1．拡大手術…120
2．縮小手術…122
3．放射線療法…〈茶谷正史〉 124
1．標準的治療と研究的治療…124
2．術後照射…126
4．陽子線治療…〈茶谷正史〉 127
1．特 徴…127
2．治療成績…128
5．予防的脳照射法…〈茶谷正史〉 129
1．肺小細胞癌…129
2．非小細胞肺癌…130
6．レーザー治療…〈奥仲哲弥，加藤治文〉 131
1．高出力レーザーによる腫瘍焼灼法…131
2．光線力学的治療法（PDT）…132
7．化学療法の意義…〈大江裕一郎〉 134
1．化学療法の目的…134
2．小細胞肺癌に対する化学療法…134
3．非小細胞肺癌に対する化学療法…135
8．新しい抗癌剤…〈大江裕一郎〉 136
1．irinotecan（トポテシン，カンプト）…136
2．topotecan…137
3．paclitaxel（タキソール: Taxol）…137
4．docetaxel（タキソテア: Taxotere）…138
5．vinorelbine（ナベルビン: Navelbine）…139
6．gemcitabine…140
7．nedaplatin（アクプラ）…141
9．IV期非小細胞癌に対する治療の選択…〈大江裕一郎〉 142
1．臨床試験…143
2．一般的な化学療法…144
3．対症療法…146
10．切除不能III期非小細胞癌に対する合併療法…〈大江裕一郎〉 149
11．術前・術後の化学療法・放射線療法…〈梁 尚志〉 154
1．術後化学療法に対して…154
2．III期非小細胞肺癌に対する術前化学療法に関して…154
3．術後化学療法・放射線療法…154
4．術前化学療法・放射線療法…154
12．腔内照射…〈梁 尚志〉 159
1．歴 史…159
2．適 応…159
3．照射方法…159
4．線量計算…161
5．副作用…161
6．今後の問題点…161
13．進展型小細胞肺癌の治療…〈益田典幸〉 162
1．小細胞肺癌に対する化学療法…162
14．限局型小細胞肺癌の治療…〈益田典幸〉 169
1．化学療法と胸部放射線療法の併用療法…169
2．外科的切除療法の意義…173
3．予防的全脳照射（PCI）…174
15．高齢者肺癌の治療戦略…〈益田典幸，松井 薫〉 176
1．肺癌化学療法における高齢者の定義…176
2．副作用…177
3．治療効果…178
16．放射線療法・化学療法の効果判定基準
…〈山口俊彦，小倉 剛〉 182
1．判定の対象となる症例の選択…182
2．効果の判定…183
3．奏効率…185
4．奏効期間…186
5．生存期間…186
6．RESIST (Respose Evaluation Criteria inSolid Tumor)…187
17．放射線療法・化学療法の副作用判定基準
…〈中川 勝，小倉 剛〉 189
18．放射線療法・化学療法の副作用対策
…〈横田総一郎，小倉 剛〉 204
A．抗癌剤の副作用対策…204
1．骨髄抑制…204
2．消化器毒性…205
3．腎毒性…207
4．肺毒性…208
5．神経障害…208
6．抗癌剤の血管外漏出対策…208
B．放射線療法の副作用対策…209
1．肺臓炎…209
2．食道炎…209
19．癌性胸膜炎・心嚢炎の治療…〈西川秀樹，小倉 剛〉 210
A．癌性胸膜炎…210
1．胸水量の判定…210
2．胸腔穿刺による排液…211
3．胸腔ドレナージによる排液…213
B．癌性心嚢炎…216
1．診 断…216
2．心嚢穿刺と心嚢ドレナージ…216
20．合併症…〈吉村明修，渋谷昌彦，工藤翔二〉 219
A．原発巣の局所進展・転移による合併症…219
1．上大静脈症候群…219
2．気道閉塞…220
3．脳転移…221
4．脊髄圧迫…222
5．骨転移…223
B．呼吸器感染症…224
1．閉塞性肺炎…224
2．日和見感染／終末感染…225
3．好中球減少に伴う発熱…225
C．特発性間質性肺炎…226
21．緩和ケア…〈小林国彦，渋谷昌彦，工藤翔二〉 227
22．疼痛対策…〈忽滑谷直孝，渋谷昌彦，工藤翔二〉 230
1．癌性疼痛の現状…230
2．痛みの診断および評価方法…230
3．癌性疼痛の治療…230
23．肺癌にみられる腫瘍随伴症候群の治療
…〈倉根修二，渋谷昌彦，工藤翔二〉 236
24．インフォームド コンセントとは
…〈日野光紀，渋谷昌彦，工藤翔二〉 238
1．インフォームド コンセント（IC）とは…238
2．病名告知…239
3．肺癌治療におけるIC…239
4．今後の展望…240
VI 肺癌の治療に必須の基礎研究
1．遺伝子異常，染色体異常…〈桧山桂子〉 242
2．組織発生…〈桧山桂子〉 246
3．遺伝的素因…〈桧山桂子〉 248
4．悪性度と分子生物学的予後因子…〈大野厚子〉 250
1．非小細胞肺癌…250
2．小細胞肺癌…252
5．薬剤感受性…〈大野厚子〉 253
1．薬剤感受性テスト…253
2．薬剤感受性を規定している因子…255
2．臨床における薬剤耐性機構…255
6．薬理動態…〈松田良平，上田龍三〉 256
1．pharmacokinetics（PK）…256
2．pharmacodynamics（PD）…259
3．薬理学の臨床応用…259
7．肺癌の転移…〈松田良平，上田龍三〉 261
1．血行性転移の成立…261
2．転移を制御する遺伝子…262
3．転移機構を標的とした治療戦略…264
8．遺伝子治療…〈上田龍三，松田良平〉 265
1．ガイドラインおよび定義…265
2．遺伝子を治療する？／遺伝子で治療する？…265
9．幹細胞輸注と大量化学療法…〈上田龍三，松田良平〉 269
1．肺癌に対しての有効性について…269
2．幹細胞供給源としては何がよいか…270
3．幹細胞輸注と大量化学療法の手順…270
4．副作用…270
5．治療効果および長期予後…271
6．その他の課題／話題…271
10．免疫療法…〈上田龍三，佐藤滋樹〉 273
1．抗体療法…273
2．細胞性免疫療法…274
索 引…277