忙しい外来やベッドサイドでこれから処方箋を書こうという時に,「あの薬の名前は何だったっけ,小児への投与量はどれくらいだったかな,抗癌剤の投与メニューはどうだったかな」,などなど思い出せなくていらいらすることは日常よくあることである.

 皮膚病の治療は多彩である.治療薬のポケット版はあるが,全科の薬が掲載されているためにどうも使い勝手が悪い.皮膚科学に関しては,図説・教科書・治療書に至るまで既に多くの名著が刊行されているが,やはり最新の治療薬も含めて実務的に収載されている皮膚科領域のみの治療薬エッセンス版がほしいと考えた.さらに欲をいえば,外科的療法,紫外線療法,冷凍凝固法などの皮膚科学の治療全般を凝集させることによって,治療薬のみならず皮膚科学全般の治療エッセンスともいうべきポケット版を作ってはと考えた.

 幸いにも,九州大学皮膚科医局を中心に多くの先生方にご協力いただき本書の上梓にこぎつけた.このようなポケット版は皮膚科専門医の日常診療の机上で活躍の場を与えられるであろうし,おそらく臨床の場で多くの皮膚疾患に遭遇する一般臨床医にとっても有益なものとなるであろう.また新しく皮膚科を志す研修医の方々には皮膚科治療の実際を効率的に学び活用する大きな手助けとなり,さらには医学生の臨床教育の一助になるものと期待している.

 最後に,分担執筆いただいた先輩,同僚,後輩諸氏に心より御礼申し上げるとともに,本書の上梓にあたり企画の段階から最後まで辛抱強く支えていただいた中外医学社の荻野邦義氏,稲垣義夫氏に感謝申し上げる.

  1999年12月  古江増隆


目 次

I 局所療法

  1.総 論…〈今山修平〉  2

    A.局所療法の基本…  2

    B.外用薬の選択: 剤形による…  4

    C.外用薬の選択: 病変による…  6

  2.ステロイド外用薬…〈古江増隆〉  9

    A.種類と適応…  9

    B.使用上の注意… 19

  3.タクロリムス外用薬…〈古江増隆〉 24

    A.作用機序… 24

    B.適 応… 24

    C.副作用… 25

  4.非ステロイド性抗炎症薬…〈宮原裕子〉 26

    A.作用機序… 26

    B.種類と適応… 27

    C.副作用… 30

    D.使用方法… 30

  5.保湿剤,保護剤…〈今山修平〉 34

    A.角層の生理学… 34

    B.保湿・保護剤の理論… 36

    C.保湿・保護剤の実際… 36

    D.局所療法の前処置… 40

    E.スキンケアの基本… 43

  6.角化症治療薬…〈中山樹一郎〉 45

    A.種類と適応… 45

    B.その他の角化症治療薬… 52

  7.抗潰瘍薬…〈桐生美麿〉 54

  I.外用薬… 54

    A.種類と適応… 54

    B.使用上の注意… 58

  II.創傷被覆材… 60

    A.種類と適応… 60

    B.使用上の注意… 61

  8.抗シラミ・抗疥癬治療薬…〈占部和敬〉 63

  I.抗シラミ治療薬… 63

    A.症状および診断… 63

    B.治 療… 64

  II.抗疥癬治療薬… 65

    A.症状および診断… 66

    B.治 療… 67

    C.指 導… 68

  9.抗真菌薬…〈松田哲男〉 70

    A.外用抗真菌薬の種類… 72

    B.白癬の治療… 72

    C.カンジダ症の治療… 77

    D.癜風・マラセチア毛包炎・脂漏性皮膚炎の治療… 78

    E.治療のゴールとスキンケア… 79

    F.抗真菌外用薬の副作用… 80

 10.抗細菌薬…〈棚橋朋子〉 81

    A.疾患別抗菌薬の使用法… 84

    B.使用上の注意… 91

 11.抗ウイルス薬…〈安元慎一郎〉 95

  I.抗疣贅薬… 95

    ■種類と使い方… 95

  II.抗単純疱疹外用薬… 100

    A.種類と使い方… 100

    B.使用上の注意… 101

  III.抗帯状疱疹薬… 101

    A.種類と使い方… 101

    B.使用上の注意… 102

  IV.抗伝染性軟属腫外用薬… 102

    A.種類と使い方… 102

    B.使用上の注意… 103

 12.紫外線療法…〈安田 勝〉 104

    ■治療法… 105

II 外科的療法

  1.総 論…〈和田秀敏〉 114

    A.術前検査… 114

    B.術前診断… 115

    C.外科的療法の適応… 115

    D.手術方法の選択… 116

    E.慎重に対処すべき外科的療法… 116

    F.救急事故… 117

  2.皮膚外科療法…〈永江祥之介〉 118

    A.消毒法… 118

    B.麻 酔… 119

    C.器具,材料… 121

    D.皮切のデザイン… 122

    E.切開,縫合… 123

    F.術後処置… 124

    G.部位別手術法のポイント… 124

    H.局所皮弁… 127

  3.レーザー治療…〈上田説子〉 132

  I.レーザーとは… 132

    A.レーザーの語源… 132

    B.レーザー光の特徴… 132

    C.レーザー(レーザー発振器)の基本構成… 132

  II.色調異常症に対するレーザー治療… 136

    A.選択的光溶解… 136

    B.皮膚科で使用されるレーザー… 139

  III.“あざ”レーザー治療の実際… 141

    A.治療目標… 141

    B.照射方法… 141

  IV.各レーザーの治療効果… 141

    A.血管性病変… 141

    B.表在性色素性病変… 142

    C.深在性色素性病変… 143

  V.レーザー治療の留意点… 145

  VI.これからのレーザー治療… 146

  4.電気凝固・焼灼法…〈野田啓史〉 148

    A.電気療法の種類… 148

    B.電気外科療法の原理… 150

    C.電気外科療法の適応疾患… 152

    D.電気外科療法の副作用・注意事項… 153

    E.電気外科療法機器について… 154

    F.電気外科療法の実際… 155

  5.凍結療法…〈辻田 淳〉 158

    A.凍結療法の種類と手技… 158

    B.適応疾患… 161

  6.温熱療法…〈辻田 淳〉 164

    A.温熱療法の種類と手技… 164

    B.適応疾患… 166

III 全身療法

  1.総 論…〈古賀哲也〉 170

  I.ステロイド薬… 170

  II.非ステロイド性抗炎症薬… 171

  III.角化症治療薬… 171

  IV.抗ヒスタミン・抗アレルギー薬… 171

  V.抗細菌薬… 172

  VI.抗真菌薬… 173

  VII.抗ウイルス薬… 173

  VIII.化学療法薬… 174

  2.ステロイド薬…〈武石正昭〉 175

    A.各ステロイド薬の特徴… 176

    B.製剤一覧… 177

    C.投与法… 177

    D.疾患ごとの使い方… 181

    E.使用上の注意… 190

  3.非ステロイド性抗炎症薬…〈佐藤恵実子〉 193

    A.皮膚科領域での適応… 193

    B.作用機序… 193

    C.分 類… 193

    D.副作用… 200

    E.非ステロイド性抗炎症薬を長期使用する際に必要な検査項目… 202

    F.非ステロイド性抗炎症薬で起こる薬物の相互作用… 203

    G.高齢者に非ステロイド性抗炎症薬を投与するときの注意… 206

    H.小児に非ステロイド性抗炎症薬を投与するときの注意… 206

    I.妊婦,授乳婦に非ステロイド性抗炎症薬を投与するときの注意… 206

    J.腎障害のある患者に非ステロイド性抗炎症薬を投与するときの注意… 207

    K.まとめ… 208

  4.角化症治療薬…〈久保田由美子〉 209

  I.レチノイド… 210

    A.適 応… 211

    B.使用法… 211

    C.副作用… 211

  II.シクロスポリン… 212

    A.適 応… 212

    B.使用法… 213

    C.副作用… 214

  III.メトトレキサート(MTX)… 216

    A.適 応… 217

    B.使用法… 217

    C.副作用… 217

  IV.内服PUVA療法… 217

    A.適 応… 217

    B.使用法… 218

    C.副作用… 218

  V.ユニークな治療法: 経口抗真菌薬による角化症治療 …219

    A.グリセオフルビン…219

    B.イトラコナゾール… 219

    C.ケトコナゾール… 219

  5.抗ヒスタミン薬,抗アレルギー薬…〈福田英三〉 220

  I.抗ヒスタミン薬… 220

    A.種類と適応… 220

    B.使用上の注意… 221

  II.抗アレルギー薬… 224

    A.種類と適応… 224

    B.使用上の注意… 229

  6.抗寄生虫薬…〈占部和敬〉 231

  I.線虫症… 231

    A.フィラリア症(糸状虫症)… 232

    B.糞線虫症… 234

    C.皮膚幼虫移行症… 235

    D.顎口虫症… 235

    E.旋尾線虫症… 236

    F.イヌ糸状虫症… 236

    G.鉤虫症… 237

  II.条虫症… 237

    A.マンソン孤虫症… 237

    B.エキノコックス症(包虫症)… 238

  III.吸虫症… 238

    A.住血吸虫症… 238

    B.肺吸虫症… 239

  IV.原虫症… 239

    ■リーシュマニア症… 240

  7.抗(細)菌薬…〈利谷昭人〉 241

    A.抗菌薬の選択… 242

    B.投与完了時期… 243

    C.抗菌薬の適応と有効菌種… 243

    D.処方例… 252

    E.抗菌薬に関連する薬物相互作用… 256

  8.抗真菌薬…〈松田哲男,松本忠彦〉 258

  I.内用抗真菌薬… 259

    A.抗生物質… 259

    B.合成化合物… 262

    C.その他… 266

  II.皮膚真菌症の治療の実際… 267

    A.白癬の治療… 267

    B.カンジダ症の治療… 268

    C.癜風,マラセチア毛包炎の治療… 268

    D.スポロトリコーシスの治療… 269

    E.黒色真菌症の治療… 269

    F.皮膚クリプトコックス症の治療… 270

  9.抗ウイルス薬…〈今福信一〉 271

  I.抗ウイルス療法… 271

    A.抗ウイルス薬… 273

    B.その他の抗ウイルス薬… 276

    C.ワクチン… 278

    D.ガンマグロブリン製剤… 278

  II.ウイルス疾患の検査・診断… 278

    A.ウイルス学的検査… 278

    B.血清学的検査… 280

  III.抗ウイルス治療の実際… 281

    A.単純ヘルペスウイルス(HSV)感染症… 281

    B.水痘帯状疱疹ウイルス(VZV)感染症… 286

 10.BRM…〈寺尾 浩〉 293

  I.悪性黒色腫… 294

    A.インターフェロンβ(IFN-β)… 294

    B.IL-2… 294

  II.悪性血管内皮細胞腫… 299

  III.皮膚悪性リンパ腫… 300

 11.化学療法,免疫抑制療法…〈村上義之〉 301

  I.有棘細胞癌… 301

  II.悪性黒色腫… 304

  III.乳房外Paget病… 308

  IV.その他の皮膚悪性腫瘍… 311

  V.皮膚悪性リンパ腫… 312

  VI.皮膚科にて使用する主な化学療法剤… 317

  VII.化学療法に誘発される悪心・嘔吐の治療… 328

  VIII.骨髄抑制に対する対策… 331

  IX.口内炎の予防および治療… 332

  X.抗癌剤漏出性皮膚障害の対策… 333

■九州大学医学部附属病院内約束処方外用薬… 337

索 引… 341