序
この『皮膚科必携ポケットブック』は皮膚科診療のスタンダードを解説するマニュアル書です．誰もがいつでも，どこでも，皮膚疾患の正しい診断と治療ができるような基本情報を，可能な限り掲載するように意図しました．白衣のポケットや上着のポケットに入るように，サイズを小型化し名前を「ポケットブック」にしました．
内容は表を中心にした掲載につとめました．若い医師達がまずマスターしなければならない種々の検査，皮疹の見極めと鑑別診断を§1, 2に掲載しています．人命に直結するため迅速な対応が要求されるアナフィラキシーショック，熱傷，壊死性筋膜炎，重症薬疹の4疾患は「皮膚科救急」の単元にまとめました．ステロイド外用剤に始まり皮膚外科に至るまで，治療の項に重点をおいています．疾患編（各論）の「皮膚悪性腫瘍」には，診断と標準治療の手引きを記載しました．また皮膚科への入院，外来受診，往診依頼頻度が高い疾患や，皮膚科医として専門的な意見を求められることが多い疾患などを「その他の重要な疾患」として記載しました．
本書の構成と内容は私たち編集者が企画し，北海道大学医学部皮膚科教室員と関連病院に勤務する医師達が執筆しました．大事な項目でありながら不十分な部分も多いかもしれません．読者の皆様のご意見をいただきながら改変してゆければと思います．
この『皮膚科必携ポケットブック』がこれから皮膚科学を修める若い研修中の医師達のみならず，皮膚科専門医にとっても便利でハンディな覚え書きになっていただければと思います．最後にサポートいただいた中外医学社の小川孝志さん，森本俊子さんに深謝申し上げます．
2006年5月
北海道がんセンター皮膚科医長 加藤直子
北海道大学医学部皮膚科教授 清水 宏
目 次
§◆ 1．問診・記録・検査
1．問診とカルテ記載 ＜清水 宏＞… 2
2．デジタルカメラ撮影 ＜小玉和郎＞… 4
3．ダーモスコピーと撮影 ＜小玉和郎＞… 6
4．理学的検査 ＜大澤倫子＞… 10
5．皮膚病理検査方法 ＜小玉和郎＞… 11
6．生理機能検査 ＜山中快子＞… 14
7．自覚症候の評価 ＜増子麻希＞… 16
8．真菌検査 ＜小野塚貴＞… 18
9．細菌検査 ＜月永一郎＞… 20
10．梅毒検査 ＜清水聡子＞… 24
11．ウイルス検査 ＜柳 輝希＞… 28
12．アレルギー検査 ＜柳 輝希＞… 31
13．光線過敏性検査 ＜清水忠道＞… 35
14．Wood灯検査と光線力学的診断 ＜秦 洋郎＞… 39
15．画像検査 ＜有田 賢＞… 40
16．蛋白・遺伝子学的検査 ＜藤田靖幸＞… 44
§◆ 2．症状と鑑別診断
1．紅斑 ＜土屋喜久夫＞… 50
2．紫斑 ＜土屋喜久夫＞… 54
3．白斑 ＜西村栄美＞… 56
4．色素斑 ＜中村裕之＞… 59
5．丘疹，結節，腫瘤 ＜冨澤幸生＞… 63
6．水疱，膿疱 ＜冨澤幸生＞… 65
7．膨疹 ＜黛真理子＞… 67
8．びらん，潰瘍 ＜山根尚子＞… 70
9．脱毛症 ＜安川香菜＞… 73
10．口腔潰瘍，アフタ ＜冨田幸希＞… 77
11．爪の異常 ＜藤田靖幸＞… 80
12．下腿潰瘍 ＜氏家英之＞… 83
13．疼痛を伴う皮膚病 ＜横関真由美＞… 85
14．発熱 ＜夏賀 健＞… 88
15．デルマドローム ＜黛真理子＞… 91
§◆ 3．皮膚科救急?迅速な対応が必要な疾患
1．アナフィラキシーショック ＜安倍将隆＞… 94
2．熱傷 ＜巖 文哉＞… 98
3．壊死性筋膜炎 ＜青柳 哲＞… 102
4．重症薬疹 ＜阿部理一郎＞… 104
§◆ 4．治療
A 外用剤：局所療法
1．ステロイド ＜阿部由紀子＞… 108
2．免疫抑制薬 ＜山根尚子＞… 111
3．抗真菌薬 ＜小野塚貴＞… 114
4．ビタミンD3 ＜川嶋利端＞… 117
5．外用抗ウイルス薬 ＜山中快子＞… 119
6．抗潰瘍薬・被覆剤 ＜猪熊大輔＞… 120
7．抗生物質 ＜立石八寿貴＞… 122
8．保湿剤 ＜横関真由美＞… 124
9．消炎含有剤軟膏・混合外用剤処方の是非 ＜秋山真志＞… 127
B 内服薬：全身療法
1．ステロイド ＜大田光仁＞… 129
2．抗ヒスタミン薬 ＜保科大地＞… 133
3．免疫抑制薬 ＜伊藤裕子＞… 138
4．抗生物質 ＜夏賀 健＞… 142
5．抗真菌薬 ＜小野塚貴＞… 150
6．抗ウイルス薬 ＜寺島由紀子＞… 152
7．ビタミンA誘導体 ＜川嶋利端＞… 153
8．DDS（4,4,-diaminodiphenylsulfone） ＜氏家英之＞… 155
9．非ステロイド性抗炎症薬 ＜村田純子＞… 156
10．漢方 ＜大澤倫子＞… 160
11．悪性腫瘍に対する化学療法 ＜加藤直子＞… 163
C 投与方法と投与量に関する注意
1．妊婦への投薬 ＜村田純子＞… 176
2．小児への投薬 ＜元田夏紀＞… 179
3．透析・腎不全患者への投薬 ＜川崎浩之＞… 182
D 理学療法・皮膚科処置
1．外用療法 ＜西江 渉＞… 184
2．レーザー照射療法 ＜芝木晃彦＞… 187
3．光線治療 ＜清水忠道＞… 191
4．液体窒素療法 ＜氏家英之＞… 194
5．ケミカルピーリング ＜柳 輝希＞… 196
6．電子線・X線照射療法 ＜柴田雅彦＞… 199
§◆ 5．皮膚外科
1．縫縮術 ＜秦 洋郎＞… 204
2．植皮術 ＜秦 洋郎＞… 206
3．局所皮弁 ＜巖 文哉＞… 208
4．削皮術 ＜巖 文哉＞… 210
5．センチネルリンパ節生検 ＜青柳 哲＞… 212
§◆ 6．疾患編（各論）
A 皮膚悪性腫瘍
1．悪性黒色腫 ＜加藤直子＞… 216
2．悪性リンパ腫 ＜加藤直子＞… 222
3．日光角化症，Bowen病 ＜伊藤 圭＞… 231
4．有棘細胞がん ＜伊藤 圭＞… 234
5．基底細胞がん ＜柳 輝希＞… 238
6．皮膚付属器系悪性腫瘍 ＜安倍将隆＞… 240
7．乳房外Paget病 ＜加藤直子＞… 245
8．Merkel細胞がん ＜谷村心太郎＞… 248
9．隆起性皮膚線維肉腫 ＜渡辺宏数＞… 250
10．脈管肉腫 ＜田村あゆみ＞… 251
11．Kaposi肉腫 ＜田村あゆみ＞… 253
B その他の重要な疾患
1．アトピー性皮膚炎 ＜安藤佐土美＞… 255
2．乾癬 ＜川嶋利端＞… 259
3．紅皮症 ＜元田夏紀＞… 265
4．薬疹 ＜乃村俊史＞… 268
5．光線過敏症 ＜坪田晶子＞… 272
6．魚鱗癬 ＜秋山真志＞… 275
7．表皮水疱症 ＜澤村大輔＞… 279
8．天疱瘡，類天疱瘡 ＜阿部由紀子＞… 282
9．壊疽性膿皮症 ＜渡辺宏数＞… 287
10．膠原病 ＜藤田靖幸＞… 290
11．アナフィラクトイド紫斑 ＜安川香菜＞… 305
12．サルコイドーシス ＜根本育恵＞… 308
13．ウイルス性感染症 ＜寺島由紀子＞… 312
14．単純疱疹，Kposi水痘様発疹症 ＜八百坂遵＞… 315
15．水痘，帯状疱疹 ＜坪田晶子＞… 318
16．HIV感染症 ＜清水聡子＞… 323
17．蜂窩織炎 ＜浜坂明日香＞… 326
18．真菌感染症 ＜佐藤英嗣＞… 328
19．疥癬 ＜横田浩一＞… 331
20．褥瘡 ＜阿部理一郎＞… 333
§◆ 7．付録
1．皮膚科における特殊染色 ＜小玉和郎＞… 336
2．主な免疫染色一覧 ＜小玉和郎＞… 337
3．CD一覧 ＜芝木晃彦＞… 338
4．皮膚悪性腫瘍における治療効果判定 ＜青柳 哲＞… 341
事項索引 343
医薬品索引 360