序文

 医学部学生,臨床研修医が臨床実習や診療活動の中でもっともまごつくのが略語であろう.
 略語は医療ではきわめて頻繁に使われており,それによってかなりの省力化ができている.診療緑の記載にしても,カンファレンスでも,また研究会や学会でも頻用される.医療を効率的に進める上での略語の意義は大きい.
 が,専門家には共通の言語であるはずの略語をよく知らなかったり,あるいは十分に使いこなせなければ,診療効率は悪くなってしまう.先輩医師の話しについて行けないことになる.それどころか,略語を知らなかったり,誤解したがための医療ミスも起こりうる.とくに同じ用語でありながら診療科によって別の意味を持つことが少なくなく,各診療科をローテンションしている臨床研修医にとっては混乱の種となっている.
 そこで,とくに日常診療で頻用されている略語を遍く収載し,簡単な解説を加えるという略語集を編纂することにした.診療科によって意味が違う略語が多いため,あらゆる診療科の専門家に解説してもらった.単なる略語解説集というだけでなく,ポケットサイズの医学用語辞典としての利用価値もあると思う.
 医学生,臨床研修医,さらに日常診療活動に多忙を極める実地医家の諸先生方にぜひご活用いただきたいと思う.また看護師を始め,コメディカルの方々にもぜひお薦めしたい.白衣のポケットに入れて随時ご利用されることをお薦めしたい.
 膨大な数の略語を手際よくおまとめ頂いた執筆者の先生方,さらに企画並びに編集作業にご尽力いただいた中外医学社に,心から感謝したい.

 2005年 初夏  奈良信雄