改訂7版の序

 本書も初版から12年を数え,2年ごとの改訂という方針を貫いてきたので第7版を刊行することになる.免疫学の一部は日進月歩の進展があるので,2年ごとの改訂は最低限必要と思う.本版でも細胞表面のCD表示分子が166から247まで増えたこと,ケモカインやそのレセプターが通し番号で呼称するように整理されたこと,原発性免疫不全症が責任遺伝子が次々と解明されたことを踏まえ,疾患概念がかなり変わったものがあるので再整理されたことなどがあり,かなり手を加えた部分も多い.その他新しい知識に基づいて,さまざまの部分で手直しを行った.

 本書の目的のひとつは初学者にも分かりやすくということであり,そのため模式図も多くし,文章の表現も平易にすることを心掛けている.しかし一方では興味深い先端的な話題を盛り込みたいという欲もある.そこで第5版から,そうした部分はadvanced knowledgeとして別に扱う2段構えの方法をとることにした.免疫学の基本を一通り学びたいという方は,そこを飛ばして通読して頂けばよく,興味がそそられた部分があればadvanced knowledgeの所を読んで下さればと思う.逆にすでにある程度免疫学の知識をお持ちの方は,advanced knowledgeのところを拾い読みして新しい知識を得て頂くという利用の仕方もあると思う.

 これまで予想以上に多くの方々の御愛読を頂いてきたので,それだけお役に立てる教本だろうかと休心している次第である.本版も大勢の方に御満足頂ければと願っている.

  2001年2月

  著 者


目 次

1 免疫とは ―免疫系概説―

  1.免疫系の生体における役割  1

  2.どうやって“非自己”を識別するか  2

  3.無数に近い種類の抗原レセプターをどうやって用意するのか  5

  4.“非自己”の認識から“非自己”の排除へ  5

  5.反応の増幅と制御  7

  6.リンパ球にはいくつかの異った性質のグループがある  8

  7.原始的な“非自己”の認識と排除の機構10

  8. “非自己”の排除には“自己”の犠牲も伴う ―アレルギーとの関係  11

  9.免疫と臨床  11

2 抗体についての基礎知識

  ■要 点…  13

  1.抗体とはどのようなものか  16

  2.抗原とはどのようなものか  18

  3.抗体の分子構造20

  4.免疫グロブリン  23

  5.免疫グロブリン各クラスの特性  28

  6.血清免疫グロブリン値と疾患  36

3 抗体のもたらす反応とそれを利用した検査

  ■要 点…  38

  1.凝集反応  42

  2.赤血球凝集反応  43

  3.菌凝集反応  45

  4.受身凝集反応  45

  5.沈降反応  46

  6.ゲル内沈降反応  47

  7.補体結合反応  49

  8.免疫溶菌反応50

  9.細胞傷害試験  51

  10.免疫粘着反応  52

  11.中和試験  52

  12.標識抗体法  54

  13.ラジオ イムノアッセイ (RIA)  56

  14.エンザイム イムノアッセイ (EIA)  59

  15.ウエスタン ブロット法60

  16.免疫画像診断  62

4 抗体を利用した疾患の予防と治療

  ■要 点…  63

  1.抗体をどのようにして入手するか  65

  2.ウイルス感染症の発症予防  68

  3.細菌感染症の治療  69

  4.無,低ガンマグロブリン血症の感染予防70

  5.血液型不適合妊娠における感作の予防  71

  6.癌の治療  71

  7.血小板減少性紫斑病の治療  72

  8.自己免疫病,免疫複合体病の治療  72

  9.川崎病の治療  74

  10.免疫抑制療法  74

5 リンパ球の働き

  ■要 点…  75

  1.体液性免疫と細胞性免疫  79

  2.T細胞の発生80

  3.T細胞の機能80

  4.T細胞の抗原認識とT細胞サブセット  92

  5.B細胞の発生と機能  94

  6.K細胞  94

  7.NK 細胞  95

  8.LAK 細胞  101

  9.リンパ組織  101

6 細胞表面機能分子 ―接着分子など―

  ■要 点…  109

  1.細胞表面分子の CD 表示  110

  2.接着分子の種類  118

  3.表面機能分子の役割  121

7 B細胞の分化と機能発現

  ■要 点…  126

  1.免疫グロブリン遺伝子の再編成  129

  2.免疫グロブリンのクラススイッチ  134

  3.B細胞系の分化過程  137

  4.B細胞の由来  141

  5.B細胞の活性化  142

  6.B細胞の分化へのT細胞の関与  145

  7.抗体産生  150

8 T細胞の分化と機能発現

  ■要 点…  154

  1.T細胞レセプター  157

  2.T細胞の抗原認識  160

  3.T細胞の活性化  164

  4.抗原の処理と提示  171

  5.T細胞の分化過程  177

  6.T細胞の分化と胸腺  182

  7.T細胞の動態  187

9 リンパ球の検査

  ■要 点…  191

  1.リンパ球系の状態の把握  194

  2.リンパ球亜群の測定  194

  3.T細胞サブセット  197

  4.T細胞のクロナリティ  198

  5.リンパ球の機能検査  199

  6.特定抗原に対するリンパ球の感作の有無の測定  205

10 補体とその働き

  ■要 点…  206

  1.補体とは  208

  2.活性化補体の作用  209

  3.補体の活性化  212

  4.活性化補体の不活化  216

  5.補体レセプター  218

  6.補体の産生と消費  220

11 サイトカインとその働き

  ■要 点…  222

  1.インターロイキン  226

  2.細胞傷害性サイトカイン  244

  3.インターフェロン (IFN)  247

  4.その他のリンホカイン  248

  5.TGF-β ・その他の細胞増殖因子  249

  6.白血球遊走にかかわるサイトカイン(ケモカイン)  250

  7.造血に関与するサイトカイン  254

  8.サイトカインのレセプター  256

  9.サイトカインの治療への応用  257

12 食細胞―好中球とマクロファージ

  ■要 点…  258

  1.好中球の貪食作用  261

  2.好中球の殺菌物質  265

  3.好中球による組織傷害  267

  4.マクロファージとは  267

  5.マクロファージの活性化  269

  6.マクロファージの多様な機能  272

13 感染防御免疫機構

  ■要 点…  275

  1.局所免疫  279

  2.ウイルスの排除  280

  3.ウイルスの拡散の阻止  286

  4.ウイルス感染の予防  287

  5.化膿菌の防御290

  6.細胞内寄生性細菌,真菌の防御  294

  7.寄生虫の防御  299

  8.感染症診断のための免疫学的検査  301

14 免疫不全

  ■要 点…  305

  1.免疫不全とは  309

  2.免疫不全と感染  309

  3.免疫不全症の成因  313

  4.原発性免疫不全症の主な病型  315

  5.免疫不全症の治療  322

  6.免疫不全症の検査  323

  7.好中球異常症  327

  8.好中球機能検査  329

  9.好中球異常の治療  331

  10.補体欠損症  331

  11.続発性免疫不全症  333

15 免疫応答の制御および免疫トレランス

  ■要 点…  338

  1.抗イジオタイプ抗体340

  2.免疫抑制T細胞  343

  3.Fc レセプターを介する免疫抑制  347

  4.免疫グロブリンのクラス特異的サプレッサーT細胞  349

  5.サイトカインによる抑制350

  6.細胞死や抑制シグナルによる抑制  351

  7.免疫トレランス  354

16 アレルギー

  ■要 点…  361

  1.T型アレルギー  366

  2.T型アレルギーの検査と治療  377

  3.U型アレルギー  379

  4.V型アレルギー  384

  5.免疫複合体の測定  389

  6.W型アレルギー  391

17 自己免疫現象と自己免疫病

  ■要 点…  394

  1.自己免疫  397

  2.自己免疫の成因  398

  3.臓器特異的自己免疫病  407

  4.抗核抗体  412

  5.全身性自己免疫病  414

  6.自己免疫病の治療  418

18 輸血と臓器移植

  ■要 点…  421

  1.血液型  428

  2.輸血反応  437

  3.血液型不適合妊娠  437

  4.組織適合抗原  438

  5.HLA 抗原の決定法(タイピング)  443

  6.拒絶反応の機序  446

  7.移植細胞対宿主反応  449

  8.移植拒絶反応の抑制  450

  9.各臓器の移植  452

  10.免疫応答遺伝子と組織適合抗原  456

  11.HLA 抗原と病気  457

  12.血液型,組織適合抗原以外の同種抗原  460

19 腫瘍と免疫

  ■要 点…  462

  1.腫瘍に対する免疫は存在するか  464

  2.腫瘍関連抗原  465

  3.抗腫瘍免疫のメカニズム  467

  4.抗腫瘍免疫が回避されてしまう機序  471

  5.抗腫瘍免疫の証明法  474

  6.腫瘍の免疫療法  475

20 生殖と免疫

  ■要 点…  481

  1.胎児の免疫学的拒絶(流産)の阻止機構  483

  2.原発性習慣性流産  487

  3.妊娠中毒症  488

  4.胞状奇胎  488

  5.抗精子抗体と不妊  488

  6.抗卵透明帯抗体と不妊  489

  7.自己免疫性卵巣炎,精巣炎と不妊  490

  8.母親からの抗体による児の疾患  490

  9.妊婦の免疫機能  492

21 免疫系の発達と老化

  ■要 点…  493

  1.免疫系の系統発生  495

  2.ヒトにおける免疫系の個体発生  497

  3.免疫系の老化  504

附 免疫学に応用されている分子生物学的研究法

  I.特定の DNA を増幅する方法 : ポリメラーゼ連鎖反応50  8

  II.特定の DNA の検出と異常の解析50  8

  III.遺伝子異常の解析法  510

  IV.DNA 塩基配列の決定法(シクエンシング) ―dideoxy 法―  511

  V.特定の mRNA の検出法  512

  VI.特定の mRNA を増幅する方法 : 逆転写 PCR 法  513

  VII.転写因子と DNA の結合の検出法  514

  VIII.DNA シスエレメント/転写因子の活性解析  515

  IX.特定の遺伝子の発現を抑える方法  516

  X.細胞への遺伝子導入法  517

  XI.遺伝子 (cDNA) のクローニング520

  XII.遺伝子ターゲッティング/遺伝子ノックアウト  523

  XIII.遺伝子導入マウス(トランスゲニックマウス)  524

和文索引   527

欧文索引   536