序
編者が医師になった25年前にはMRIはもちろんのことCTさえも登場する以前であった.従って,画像診断(この単語さえ存在していなかった)の大部分はX線撮影によって行われていた.その後の画像診断の進歩は目覚ましいものであり,US,CT,MRIなどの画像検査法の発展により画像診断も大きく変化してきた.それとともに単純X線写真(単純写真)の役割も変わり,単純写真のみでは十分な情報が得られない場合や単純写真が全く役に立たない場合があり,単純写真を必要としない場合も少なからずあるのが現状である.
骨・関節に関してもMRIやCTの画像診断への寄与は非常に大きなものであり,これらを無視することはできない.しかし,骨に関しては骨折などのように単純写真のみで診断が可能で,なおかつそれ以外の画像診断検査の必要が無いことが少なからず存在する.
関節に関しては軟骨が描出できず,軟部組織のコントラスト分解能が低いことから,単純写真の診断能には限界がある.しかし,変形性関節症など単純写真のみで十分な情報が得られる場合もある.
いずれにせよ現実には骨・関節に関しては単純写真の診断価値は大きなものであり,これを素通りして画像診断を行うことはできない.
すべての画像検査に共通することであるが,検査を施行したり診断を行うためには異常の所見を知っていることが重要である.しかし,正常を知らずに異常を診断することはできないというのも事実である.この本では正常解剖を理解することを目的として骨・関節X線写真の正常像を提示し,正常解剖構造を可能な限り詳細に記載することを目指した.企画意図に沿った本が作成できたと考えている.
日々,骨・関節の単純写真に接している諸氏あるいはこれから学ぼうとしている方々のいずれにも役立つ本となることを切望している.
最後にX線写真の製作に御協力頂いた小笠原幸夫技師長をはじめとする聖母病院放射線室の技師諸氏に深謝致します.
1998年9月
河野 敦
目次
1.頭蓋骨 正面像 2
2.頭蓋骨 側面像 4
3.Towne像 6
4.トルコ鞍 正面像 8
5.トルコ鞍 側面像 10
6.Caldwell像 12
7.Waters像 14
8.顔面 側面像 16
9.頭蓋底像 18
10.頬骨弓 20
11.鼻骨 正面像 22
12.鼻骨 側面像 24
13.Stenvers像 26
14.Schuller像 28
15.transorbital像 30
16.眼窩 正面像 32
17.視神経管像 34
18.下顎骨 正面像 36
19.下顎骨 斜位像 38
20.顎関節(開口) 40
21.顎関節(閉口) 42
22.頚椎 正面像 44
23.頚椎 側面像 46
24.頚椎 左前斜位像 48
25.頚椎 右前斜位像 50
26.頚椎 正面像(開口法) 52
27.胸椎 正面像 54
28.胸椎 側面像 56
29.腰椎 正面像 58
30.腰椎 側面像 60
31.腰椎 左前斜位像 62
32.腰椎 右前斜位像 64
33.仙骨 正面像 66
34.仙骨 側面像 68
35.尾骨 正面像 70
36.尾骨 側面像 72
37.骨盤 正面像 74
38.仙腸関節 正面像 76
39.仙腸関節 斜位像 78
40.鎖骨 正面像 80
41.鎖骨 斜位像 82
42.肩甲骨 正面像 84
43.肩甲骨 側面像 86
44.胸鎖関節 正面像 88
45.胸鎖関節 斜位像 90
46.胸骨 正面像 92
47.胸骨 側面像 94
48.肋骨 正面像 96
49.肋骨 斜位像 98
50.肩関節 正面像 100
51.肩関節 側面像 102
52.肩関節 軸位像 104
53.上腕骨 正面像 106
54.上腕骨 側面像 108
55.肘関節 正面像 110
56.肘関節 側面像 112
57.前腕 正面像 114
58.前腕 側面像 116
59.手関節 正面像 118
60.手関節 側面像 120
61.手根管 122
62.手 正面像 124
63.手 側面像 126
64.大腿骨 正面像 128
65.大腿骨 側面像 130
66.大腿骨頚部 側面像 132
67.股関節 正面像 134
68.股関節 側面像(Lauenstein撮影) 136
69.下腿 正面像 138
70.下腿 側面像 140
71.膝関節 正面像 142
72.膝関節 側面像 144
73.膝蓋骨 軸位像 146
74.足関節 正面像 148
75.足関節 果間関節窩撮影(mortise撮影) 150
76.足関節 側面像 152
77.踵骨 軸位像 154
78.踵骨 側面像 156
79.足 正面像 158
80.足 側面像 160
索 引 162