胸部の画像診断は,単純X線写真から,CT,MRI,超音波,RIと多様化している.それぞれに特長があり,その特質を理解し,臨床診断に役立て,患者の治療に直結させる必要がある.

 基本的には,画像の解剖を理解していなければならない.そしてさらに,基本的な異常所見を把握しなければならない.

 そして正しい診断に到達するためには,その異常所見から考えられる鑑別診断を考え,その中から正しい診断へと辿りつく必要がある.

 本書はナビゲータの名前が示すように,目的である診断に至るための,ヒントを得ることを主目的とした参考書である.

 もちろん,そのために必要な画像解剖や検査の特長についても述べてある.

 読者の対象として,学生,研修医はもとより,一般の臨床家,内科医,外科医,放射線科医も,対象としている.

 診察室や読影室の机上に置いたり,白衣のポケットに入れて使用して頂くことを考えて小型の本になっている.

 拙著「胸部CT診断トレーニング」や「胸部MRI診断トレーニング」に続くものとして,愛用して頂き,さらには,ご自分の経験を本書の余白に書き込んで使用して頂ければ,誠に幸いであります.

川越にて,富士山を望みつつ   

町田喜久雄   

目 次

第1部 診断のための基本知識 1

  1.胸部X線写真読影時のチェックポイント 1

  2.異常影と誤られやすい陰影 4

  3.胸膜と横隔膜 6

  4.葉間裂と副肺葉 8

  5.縦隔の区分 10

  6.縦隔線 12

  7.縦隔のCT解剖 14

  8.縦隔リンパ節 16

  9.肺門血管の走行 18

 10.右傍気管線と後気管線 20

 11.大動脈弓,奇静脈弓の大きさ(成人) 21

 12.肺動脈の径 22

 13.心胸部比 (cardiac thoracic ratio: CTR) 23

 14.下大静脈と左心室 24

 15.肺野の区分 25

 16.肺区域によるシルエットサイン 26

 17.気管,気管支の分岐図 28

 18.細葉(acinus) 30

第2部 肺異常所見の鑑別診断 31

§1.画像所見パターンからの鑑別 32

A.限局性陰影 34

 1.結節・腫瘤の診断 34

  (1)孤立肺結節を呈する疾患 34

  (2)多発結節・腫瘤 42

 2 限局性気腔陰影(air space opacity, air space filling)の鑑別 47

  (1)限局性気腔陰影,主として均一濃度 49

  (2)限局性気腔陰影,主として不均一濃度 52

 3.限局性細網・細網結節陰影を主とする疾患 54

 4.無気肺の鑑別診断 55

 5.限局性空洞・嚢胞病変 61

 6.胸水・気胸 66

 7.気縦隔 72

B.広範陰影 74

 1.nodular pattern 75

 2.細網・細網結節陰影を主とする疾患 77

 3.蝶形陰影,広範気腔陰影を主とする疾患 79

§2.注意を要する画像所見の鑑別診断 81

§3.多彩な画像所見を示す肺疾患 83

§4.核医学検査が役立つ疾患 93

 1.急性肺血栓塞栓症(PTE) 93

 2.201Tlシンチグラムによる肺癌の縦隔・肺門リンパ節転移診断 95

 3.肺切除術後残存肺機能予測 95

 4.局所肺機能検査 95

 5.ガリウムシンチグラフィー 96

第3部 縦隔・胸隔疾患 97

  1.縦隔の疾患 98

  2.胸膜の疾患 105

第4部 心臓,大血管疾患の画像診断 107

  1.読影診断の対象となるもの 108

  2.正常単純X線像 109

  3.病的変化 113

  4.房室の拡大とX線像 114

  5.大血管陰影 118

  6.肺血管陰影 118

  7.肺水腫 119

  8.胸膜,胸膜腔 119

  9.その他 119

 10.特徴的な心陰影 120

 11.後天性心疾患 121

 12.先天性心疾患 124

 附図1.冠動脈疾患造影の区分 132

 附図2.左室造影の表示 133

 附図3.心筋シンチグラムのBull's Eye表示と冠動脈 134

用語解説 136

索引 139