皮膚科学ほど他臓器との接点の多い領域はないと思われる.「内臓の鏡」といわれるほど内科疾患は皮膚に反映されるため,皮膚科医は絶えず内科疾患を念頭に置いて診察しなければならない.また,内科医も多彩な皮膚疾患に無縁でいられるはずもなく,何らかの皮疹がみられたら,皮膚科専門医にコンサルトすべきである.さらに,皮膚と同じ外胚葉臓器や粘膜,さらには感覚器を扱う臨床各科においても皮膚科学の知識は必須である.

 本書はそのような視点から,内科各領域および産婦人科,眼科,耳鼻咽喉科,整形外科,歯科・口腔外科領域と関係の深い皮膚疾患について,まず皮膚科医が皮膚疾患について解説し,続いて各科専門医からコメントやメッセージをいただくという形式で,その疾患の病態・診療のポイントなどを浮き彫りにすることを試みた.さらに新たな試みとして皮膚疾患の診断に重要な臨床写真についてはすべてCD-ROMに収載しMacintoshあるいはWindowsの画面上で鮮明かつ簡便に閲覧できるようにし,あわせて本書の低廉価化に努めた.

 皮膚科領域と接点を有する他臓器疾患を総覧することで,境界領域に対する理解や奥行きを深め,明日からの診療にお役に立てば幸いである.

    平成10年4月

    宮地良樹

1.内臓悪性腫瘍と皮膚〈伊崎誠一〉…1

A.内臓悪性腫瘍の皮膚転移性病変…2

B.皮膚に初発する血液/リンパ系の悪性腫瘍…3

 1.類乾癬…3

 2.多形皮膚萎縮症,慢性色素異常性持続性紅斑…3

 3.毛包性ムチン沈着症…4

 4.皮膚白血病…4

C.高頻度に内臓悪性腫瘍を合併する皮膚疾患…5

 1.黒色表皮肥厚症…5

 2.レーザー―トレラー徴候…5

 3.環状紅斑,非定型紅斑,葡行性花環状紅斑…6

 4.後天性魚鱗癬…6

 5.後天性掌蹠角化症…6

D.内臓悪性腫瘍の検索をすべき皮膚疾患…7

 1.皮膚筋炎…7

 2.水疱性類天疱瘡…7

 3.紅皮症…8

 4.皮膚掻痒症,慢性痒疹…9

 5.太鼓ばち指…9

 6.紫 斑…9

 7.Sweet病…10

 8.壊疽性膿皮症…10

 9.黄色腫,黄色肉芽腫…10

 10.アミロイドーシス…11

E.悪性腫瘍の存在を示唆する感染症…11

 1.帯状疱疹…11

 2.単純疱疹…11

 3.汎発する疣贅および疣贅様表皮発育異常症,伝染性軟属腫…12

 4.カンジダ症,白癬,細菌感染…12

F.発癌物質との接触を示唆する病変…12

 

Bowen病…12

G.悪性腫瘍を多発する母斑症・先天性疾患…13

 1.多発性脂腺腫…13

 2.多発性類皮嚢腫…13

 3.口唇の色素斑…13

 4.神経線維腫…13

 5.多毛症…14

 6.血管腫…15

 7.基底細胞上皮腫…15

2.内分泌内科と皮膚…16

A.糖尿病と皮膚疾患〈大西一徳〉…16

 1.皮膚の変化…16

 2.血管障害と皮膚…18

 3.末梢神経障害…19

 4.感染症…20

 5.その他…21

B.糖尿病内科医から〈河盛隆造〉…23

 1.糖のながれの把握…25

 2.NIDDMにみる特徴…27

 3.糖尿病の治療…28

C.内分泌内科と皮膚疾患〈種井良二,勝岡憲生〉…30

 1.甲状腺疾患に合併する皮膚病変…30

 2.副腎疾患に合併する皮膚病変…32

 3.膵臓疾患に合併する皮膚病変…34

 4.その他の内分泌疾患に合併する皮膚病変…36

D.内分泌内科医から〈田中 清〉…39

 1.内分泌スクリーニング検査のための全般的注意…39

 2.下垂体・副腎疾患…41

 3.甲状腺疾患…43

 4.カルシウム代謝異常…46

 5.性 腺…47

3.消化器内科と皮膚…49

A.消化器と皮膚疾患〈狩野葉子〉…49

 1.Peutz-Jeghers症候群…49

 2.Gardner症候群…50

 3.アナフィラクトイド紫斑…51

 4.腸性肢端皮膚炎…52

 5.Degos病(悪性萎縮性丘疹症)…53

 6.強皮症…54

 7.ペラグラ…56

B.肝臓と皮膚疾患〈赤坂俊英〉…57

 1.Gianotti病…57

 2.クモ状血管腫…59

 3.紙幣状皮膚…60

 4.手掌紅斑…61

 5.肝性ポルフィリア…62

 6.ヘモクロマトーシス…63

C.消化器内科医から〈西田 修〉…66

 1.初診患者の全身チェック…66

 2.腹部症状のある患者への対応…70

 3.長期治療中の患者管理について…71

4.腎臓内科と皮膚…73

A.腎臓と皮膚疾患〈石川 治〉…73

 1.腎と皮膚が同一疾患により侵される場合…74

 2.腎臓病があり,これに皮膚病変が続発する場合…78

 3.皮膚疾患があり,これに腎病変が続発する場合…81

B.腎臓内科医から〈矢野新太郎〉…82

 1.腎疾患診断法としての腎生検…82

 2.腎機能スクリーニング検査…86

 3.薬剤性腎障害ほか…88

5.呼吸器内科と皮膚…90

A.呼吸器と皮膚疾患〈竹原和彦〉…90

 1.呼吸器および皮膚に病変を有する全身疾患…90

 2.呼吸器疾患に伴う皮膚症状…96

 3.呼吸器疾患に合併しやすい皮膚疾患…97

B.呼吸器内科医から〈郡 義明〉…97

 1.皮膚病変と関連してみられる肺病変…97

 2.間質性肺炎について…99

 3.肺病変診断のための診察と検査…99

6.循環器内科と皮膚…105

A.循環器と皮膚疾患〈古川福実〉…105

 1.サルコイドーシス…105

 2.膠原病,類縁疾患…105

 3.遺伝性疾患…112

B.循環器内科医から〈服部隆一〉…113

 1.慢性動脈閉塞症…113

 2.急性動脈閉塞症…115

 3.血栓静脈炎…116

 4.家族性高コレステロール血症…116

7.血液内科と皮膚…118

A.血液と皮膚疾患〈宮地良樹〉…118

 1.血液疾患の皮膚症状…118

 2.血液疾患を検索すべき皮膚疾患…126

B.血液内科医から〈久保田一雄〉…128

 1.血液スクリーニング検査の見方…128

 2.骨髄検査の適応と意義…132

 3.代表的な疾患の血液学的特徴…132

8.神経内科と皮膚…136

A.神経と皮膚疾患〈大塚藤男〉…136

 1.神経線維腫症…136

 2.結節性硬化症…138

 3.Sturge-Weber症候群…139

 4.色素失調症(Bloch―Sulzberger症候群)…139

 5.色素性乾皮症…139

 6.Hansen病…141

B.神経内科医から〈日下博文〉…143

 1.結節性硬化症…143

 2.神経線維腫症…144

9.心療内科と皮膚…147

A.心身症と皮膚疾患〈立花隆夫〉…147

 1.心身医学的にみた皮膚疾患…148

 2.代表的な心身症性皮膚疾患…149

B.心療内科医から〈久保千春〉…152

 1.アトピー性皮膚炎とストレス…152

 2.心身医学的治療…154

 3.向精神薬の治療…154

 4.面接による治療…155

10.産婦人科と皮膚…157

A.妊娠と皮膚疾患〈紫芝敬子〉…157

 1.掻痒症…159

 2.妊娠性痒疹…160

 3.妊娠性疱疹…163

 4.疱疹状膿痂疹…163

 5.autoimmune progesterone dermatitis of pregnancy…164

 6.pruritic folliculitis of pregnancy…164

 7.linear IgM dermatosis of pregnancy…165

B.婦人科と皮膚疾患〈相澤 浩〉…165

 1.多嚢胞性卵巣症候群…166

 2.月経異常などの男性化徴候を伴わない思春期後発症座瘡患者の内分泌環境…166

 3.月経異常を伴った思春期後発症.瘡患者の内分泌環境…169

C.産婦人科医から〈水沼英樹〉…170

 1.女性ホルモンのスクリーニング検査…171

 2.腟・外陰炎…173

 3.卵巣機能と退行期疾患…175

 4.ホルモン補充療法と皮膚疾患…177

 5.子宮頸癌とヒトパピローマウイルス…178

11.眼科と皮膚…180

A.眼科と皮膚疾患〈田村敦志〉…180

 1.アトピー性皮膚炎…180

 2.Bechet病…182

 3.サルコイドーシス…184

 4.単純ヘルペス…185

 5.Sjogren症候群…186

 6.弾力線維性仮性黄色腫…187

 7.神経線維腫症…188

 8.Stevens―Johnson症候群…189

 9.Vogt―小柳―原田症候群…189

 10.Reiter病…190

B.眼科医から〈坪田一男〉…191

 1.ドライアイ…192

 2.白内障…192

 3.アレルギー性結膜炎…192

 4.円錐角膜…193

 5.網膜剥離…194

 6.角膜ヘルペス…194

 7.瘢痕性角結膜炎…194

12.耳鼻咽喉科と皮膚…197

A.耳鼻咽喉科と皮膚疾患〈段野貴一郎〉…197

 1.掌蹠膿疱症…197

 2.乾癬…199

 3.Ramsay-Hunt症候群…199

 4.Wegener肉芽腫症…200

 5.Osler病…201

B.耳鼻咽喉科医から〈山中 昇,林 泰弘〉…202

 1.病巣感染とは…202

 2.病巣と二次疾患…202

 3.病巣感染と掌蹠膿疱症(PPP)…203

13.整形外科と皮膚…209

A.整形外科と皮膚疾患〈岩月啓氏〉…209

 1.骨・関節の炎症と変性に由来する皮膚疾患…209

 2.骨・関節形成不全に関連した先天性皮膚疾患…210

 3.慢性関節リウマチと関連疾患に伴う皮膚症状…216

 4.骨・関節症状を合併する炎症性皮膚疾患…218

B.整形外科医から〈高岸憲二〉…223

 1.胸肋鎖骨異常骨化症…223

 2.乾癬性関節症…225

 3.retinoidの骨障害…226

 4.リウマチ…227

14.歯科・口腔外科と皮膚…231

A.歯科・口腔外科と皮膚疾患〈戸倉新樹〉…231

 1.皮膚病変の原因あるいは誘因が歯科・口腔外科領域にあるもの…231

 2.皮膚を主体に侵す疾患ではあるが,口腔粘膜,歯肉,口唇も同病変の好発部位である疾患…233

 3.それぞれ臓器特異的な病変ではあるが,皮膚病変と歯科・口腔外科病変が合併しやすい疾患…233

 4.歯科領域の病変が皮膚に直接波及した疾患…236

B.歯科・口腔外科医から〈茂木健司〉…237

 1.口腔病変の生検法…237

 2.歯科材料とアレルギー…241

 3.病巣感染と齲歯…244

 4.口腔内に限局しうる皮膚疾患…246

索 引…250

CD-ROM利用の手引…261

CD-ROM画像目次…269

CD-ROM画像索引…278