はじめに

 従来のマンモグラフィ集に比較して本書を作成するにあたって,考えたことが 4 点あります.第一に本書を通常のマンモグラフィ画像に近い大きさにし,さらに微細石灰化などが把握できるように掲載写真の画質を高めたことです.次に,基本的に写真と解答が同一視野に入らないよう工夫しました.具体的にはマンモグラフィ写真と解答編を分けて記載しました.既出の写真集では,左頁に臨床情報とマンモグラフィ写真,右頁に解説を述べた形のものが多いようです.これではどうしても本を開いた時に問題と解答が同時に目に入ってしまい,「その目」で写真を眺める傾向がありました.本書では,スクリーニングマンモグラフィを読む訓練として,臨床情報すら省略いたしました.したがって一部 ML 像,拡大スポットなどもありますが,基本的には本書は MLO 像で構成されています.特に上級編では MLO 像の左右対比を中心とした読影に重点をおきました.第三に,写真を疾患別に順次並べてゆくスタイルを止め,ランダムに配列しました.そのなかには正常写真も挿入し,写真を読影するにあたって,余計な先入観が入らぬように留意してあります.最後に,前述したように本書を初級編と上級編にわけ,これから検診業務にたずさわる方にも,かなり読影力のある方にもお役にたてるよう配慮しました.これらの工夫により,読者は現場で写真の読影を迫られているような臨場感を味わえるものと思います.
 この種のいわば問題集に長い前置きは不要でしょう.早速,画像の一枚一枚に取り組んでみてください.なかにはマンモグラフィだけでの診断では困難を極めるものもあります.ただ,少なくとも「精査した方がよい」「こういう画像を呈する○○疾患(状態)もあるんだ」と思う感覚は身につけていただければありがたいと思います.本書が乳癌の実地臨床あるいは検診にたずさわっておられる先生方に少しでもお役に立てれば,著者一同にとって望外の幸福です.
 また多くの写真を選んでいただいた愛知医科大学放射線科の辻洋子技師に深謝いたします.

2007 年 3 月
愛知医科大学 乳腺内分泌外科
福 富 隆 志


目次

I. 初級編
II. 上級編