コルポスコピーは細胞診とともにきわめて重要な子宮頸部病変の診断法として確立されており,両者の有効活用を図ることで強力な診断力を発揮します.この分野での大先達である故増淵一正博士は「コルポスコピーは闇夜にちょうちん」と喝破されましたが,これ無くして正確なbiopsyや局所治療はありえません.
コルポスコピー所見分類の国際的な統一はGraz(1975年)での第2回International Federation of Cervical Pathology and Colposcopy(IFCPC)の学会開催時においてなされました.その国際分類を本邦用に改編した分類・所見名はコルポスコピー標準図譜(1980年,日本コルポスコピー研究会編)として発刊されましたが,それは基本的に頸部新生物は移行帯から発生するという考え方に立って作成されています.次に,第2回目の大幅な分類改正が1990年にRomeのIFCPC第7回国際学会で行われましたが,これにはGraz分類に加えて移行帯以外からの発生,HPV感染所見や質的所見(grading)を取り入れています.わが国でもそれに相当する本邦訳を行い,改訂コルポスコピー標準図譜(1994年,日本婦人科病理・コルポスコピー学会編)として発刊しました.ついで今度,3度目の分類改正がBarcelona(2002年)の第11回国際学会において行われ,複雑なRome国際分類が逆に簡略化されました.
今回の改訂については,本著の中に詳細に記載していますが,Barcelona国際分類では異常所見の中にわが国になじめないヨード反応所見があり,またKeratosisをその他の非癌所見に組み込むなどの受け入れがたい個所については,これらを割除・是正し,現在使用している所見分類を残しながら,全体としてBarcelona国際分類同様に簡略化したものにしました.
皆様が今回の「新コルポスコピー所見分類:日本婦人科腫瘍学会2005」を十分ご理解下さりコルポスコピーに習熟されますことを心から希望いたします.

2005年6月

日本婦人科腫瘍学会
  理事長 植木 實
コルポスコピー国際分類 改訂小委員会
  編集委員長 長谷川壽彦


◆目次

新コルポスコピー所見分類:日本婦人科腫瘍学会2005  8
新コルポスコピー所見分類:日本婦人科腫瘍学会2005 所見対応略図記載法  9
新コルポスコピー所見分類:日本婦人科腫瘍学会2005 成立について  10
Colposcopic Classification:Barcelona 2002  11
コルポスコピー所見分類:日本婦人科病理・コルポスコピー学会1992  12
Colposcopic Terminology:Rome 1990  13
バルセロナ国際分類とローマ国際分類の相違について  14

参考  コルポスコピー所見分類採択の歴史的経緯  16

A.正常所見  18
B.異常所見   21
C.浸潤癌所見  32
D.不適例  34
E.その他の非癌所見  34

新コルポスコピー所見分類:日本婦人科腫瘍学会2005 各所見解説  42

参考  IFCPCのバルセロナ国際分類への見解  46

コルポスコープ紹介  52
編集後記  55