序
CTはHounsfieldによって人体への応用が最初に発表されて以来30年弱が経過した．その間のCT装置の進歩は目覚ましく，最近ではヘリカルCTさらにマルチディテクター（マルチスライス）CTの開発により時間分解能および空間分解能はさらに向上した．
今やCTは特殊な検査法ではなく，ごく一般的な画像診断法となっており，放射線科診断医や放射線技師などのCTの専門家だけではなく，各科の臨床医，看護婦をはじめとする医療従事者の誰もがCTに接する機会は増加している．逆に言えばCTに無縁の医療従事者はいないと言っても過言ではない．
CT検査を行い，解釈するためには正常解剖を理解することは必須であり，さらに種々の異常や疾患の所見を熟知していなければならないのは当然のことである．しかし，現実には全ての分野での十分な知識を持つことは必ずしも容易ではなく，自分の不得手とする領域のCT所見を調べなければならないということも少なからずある．現実には実際の臨床の現場で教科書を開き長い文章を読むことは困難なことである．
編者は10年ほど前にCTを理解するためには簡便なCTの解剖書が必要であるとの考えから『ポケットCT解剖アトラス』を企画し，幸いにも読者の支持を得ることができた．
本書は『ポケットCT解剖アトラス』の延長上にあり，CT検査の場で代表的な異常，疾患を理解できるための簡便な本が必要であるとの考えから企画したものであり，CTに関わる諸氏，これからCTを学ぼうする方々のいずれにも役に立つ本となることを切望している．
2001年10月
河野 敦
1 頭部，脳神経 蓮尾金博 三丸 太
1 異所性灰白質 2
2 全前脳胞症 3
3 脳梁欠損を伴う脂肪腫 4
4 くも膜嚢胞 5
5 結節性硬化症 6
6 Sturge-Weber症候群 7
7 Binswanger病 8
8 片側大脳半球萎縮 9
9 脳梗塞（超急性期） 10
10 脳梗塞（亜急性期） 11
11 出血性梗塞 12
12 脳梗塞（陳旧性） 13
13 脳出血（視床出血） 14
14 くも膜下出血 15
15 脳動静脈奇形 16
16 静脈性血管腫 17
17 もやもや病 18
18 脳内血腫を伴う破裂中大脳動脈瘤 19
19 脳内出血（吸収期）を伴う横静脈洞部硬膜動静脈瘻 20
20 多発性脳膿瘍 21
21 硬膜下膿瘍（開頭術後） 22
22 結核による肉芽腫性髄膜炎 23
23 肥厚性硬膜炎 24
24 先天性トキソプラズマ症 25
25 脳挫傷 26
26 慢性硬膜下血腫 27
27 急性硬膜外血腫 28
28 偽性副甲状腺機能低下症 29
29 脊髄小脳変性症（SCA2型） 30
30 星細胞腫（grade2） 31
31 膠芽腫 32
32 乏突起膠腫 33
33 胚芽腫 34
34 髄膜腫 35
35 悪性リンパ腫 36
36 転移性脳腫瘍（乳癌） 37
37 中枢性神経細胞腫 38
38 下垂体腺腫 39
39 Rathke嚢胞 40
40 頭蓋咽頭腫 41
41 鞍結節髄膜腫 42
42 三叉神経鞘腫 43
43 脳幹部神経膠腫 44
44 第四脳室脈絡叢乳頭腫 45
45 血管芽腫 46
46 聴神経鞘腫 47
47 類表皮嚢胞 48
2 頭頸部 辰野 聡
1 上咽頭癌 50
2 中咽頭癌 52
3 下咽頭癌 54
4 喉頭癌 56
5 上顎癌 58
6 迷走神経神経鞘腫（頸動脈間隙） 60
7 扁桃周囲膿瘍，咽頭後間隙膿瘍 62
8 口蓋扁桃原発悪性リンパ腫 64
9 真菌性上顎洞炎（菌腫） 65
10 慢性副鼻腔炎 66
11 耳下腺粘表皮癌 68
12 左耳下腺多形性腺腫 70
13 若年性血管線維腫 71
14 線維性異形成症 72
15 甲状腺性眼症 74
16 ブドウ膜（脈絡膜）悪性黒色腫 76
17 Sjogren症候群 78
18 内深頸リンパ節転移（中咽頭癌） 80
19 第2鰓弓嚢胞 82
20 甲状舌管嚢胞 83
21 甲状腺乳頭癌 84
22 弛緩部形真珠腫 86
23 側頭骨骨折（混合骨折） 88
24 エナメル芽細胞腫 89
25 海綿状血管腫（静脈血管奇形） 90
3 肺野 櫛橋民生
a 先天性異常，血管異常
1 気管支肺分画症 94
2 肺動静脈奇形または動静脈瘻 95
3 肺嚢胞性線維症 96
4 肺動脈瘤（Beh稿t病） 97
b 肺感染症
5 浸潤性肺アスペルギルス症 98
6 カリニ肺炎 99
7 肺膿瘍 100
8 肺結核（経気管支散布型） 101
9 器質化肺炎 102
c び漫性肺疾患
10 BOOPまたはCRP 103
11 慢性好酸球性肺炎 104
12 過敏性肺炎 105
13 （肺）癌性リンパ管症 106
14 リンパ管平滑筋腫症または結節性硬化症 107
15 Wegener肉芽腫症 108
16 肺胞蛋白症 109
17 サルコイドーシス 110
18 珪肺症 111
19 び漫性汎細気管支炎 112
20 通常型間質性肺炎 113
d 肺癌および肺腫瘤性病変
21 血管内細気管支肺胞腫瘍または類上皮血管内皮腫 114
22 異型腺腫様過形成または気管支肺胞腺腫 116
23 形質細胞肉芽腫または炎症性偽腫瘍 117
24 肺過誤腫 118
25 肺小細胞癌 119
26 細気管支肺胞上皮癌 120
27 悪性リンパ腫 121
28 骨肉腫の肺転移 122
29 肺腺癌 123
30 石灰化した肺腺癌 124
4 心，大血管，縦隔 松永尚文
1 気管支原性嚢胞 126
2 浸潤性胸腺腫 127
3 縦隔奇形腫 128
4 神経鞘腫 129
5 悪性リンパ腫 130
6 左房内血栓 131
7 冠状動脈石灰化 132
8 収縮性心膜炎 133
9 心膜液貯留 134
10 重複大動脈弓 135
11 右側大動脈弓・異常左鎖骨下動脈 136
12 異常右鎖骨下動脈 137
13 circumflex aorta 138
14 左上大静脈残遺 139
15 大動脈弁輪拡張 140
16 大動脈解離（解離腔開存型） 141
17 大動脈解離（開存型） 142
18 大動脈解離（血栓閉鎖型） 143
19 急性期高安動脈炎 144
20 慢性期高安動脈炎 146
21 penetrating atherosclerotic ulcer（PAU） 148
22 遠位弓部大動脈瘤 149
23 腹部大動脈瘤破裂 150
24 感染性大動脈瘤 151
25 炎症性大動脈瘤 152
5 肝，胆，膵 南部敏和 藤田信行
1 肝硬変（門脈圧亢進症） 154
2 劇症肝炎 155
3 脂肪肝 156
4 ヘモジデローシス 157
5 肝嚢胞 158
6 嚢胞腺腫 159
7 胆管性過誤腫（von Meyenburg complex） 160
8 peribiliary cyst 161
9 肝多包虫症 162
10 肝膿瘍 163
11 肝海綿状血管腫 164
12 限局性結節性過形成 166
13 肝炎症性偽腫瘍 168
14 肝細胞癌 169
15 肝内胆管癌 170
16 転移性肝腫瘍 172
17 肝外胆管結石 173
18 胆嚢結石 174
19 急性胆嚢炎 175
20 黄色肉芽腫性胆嚢炎 176
21 胆嚢腺筋腫症 178
22 肝外胆管癌 179
23 胆嚢癌 180
24 急性膵炎 181
25 慢性膵炎 182
26 膵島細胞腫 183
27 膵癌（膵管癌） 184
28 Intraductal papillary mucinous tumor（IPMT） 186
29 充実性嚢胞性腫瘍 187
30 Von Hippel Lindau病 188
31 転移性膵腫瘍 189
6 腎，副腎 河野 敦
a 腎
1 馬蹄腎 192
2 重複腎盂尿管 193
3 Bertin柱 194
4 腎杯憩室 195
5 急性腎盂腎炎 196
6 腎膿瘍 197
7 黄色肉芽腫性腎盂腎炎 198
8 腎結核 199
9 慢性腎不全 200
10 腎嚢胞 201
11 多嚢胞性異形成腎 202
12 常染色体劣性遺伝性多嚢胞腎（若年型） 203
13 常染色体優性遺伝性多嚢胞腎 204
14 後天性多嚢胞腎 205
15 腎細胞癌 206
16 腎盂癌（移行上皮癌） 207
17 Wilms腫瘍（腎芽腫） 208
18 腎転移（子宮頸癌） 209
19 悪性リンパ腫 210
20 腎過誤腫（血管筋脂肪腫） 211
21 腎周囲腔血腫（外傷） 212
22 腎動脈瘤 213
23 腎梗塞 214
24 腎結石 215
25 水腎症 216
b 副腎
26 Cushing症候群（コルチゾル産生腺腫） 217
27 原発性アルドステロン症（アルドステロン産生腺腫） 218
28 副腎性器症候群 219
29 副腎皮質過形成 220
30 褐色細胞腫 221
31 非機能亢進性副腎皮質腺腫 222
32 副腎転移 223
33 副腎骨髄脂肪腫 224
34 副腎出血 225
35 副腎嚢胞 226
7 消化管，腹膜 柚木雅至
1 憩室炎 228
2 大腸癌 229
3 胃癌 230
4 虫垂粘液嚢胞腺癌 231
5 急性虫垂炎 232
6 偽膜性大腸炎 233
7 腸閉塞 234
8 腸重積 235
9 癌性腹膜炎 236
10 腹水 237
8 骨盤内臓器 後閑武彦
a 奇形と発育異常
1 双頸双角子宮 240
2 膀胱憩室 241
b 炎症性疾患
3 子宮留膿腫 242
4 卵管留膿腫 243
5 気腫性膀胱炎 244
6 腸腰筋膿瘍 245
c 腫瘍性疾患
7 子宮体癌 246
8 子宮筋腫 247
9 子宮頸癌 248
10 胞状奇胎 249
11 卵巣線維腫 250
12 卵巣成熟嚢胞性奇形腫（類皮嚢胞腫） 252
13 卵巣粘液性嚢胞腺腫 253
14 卵巣漿液性嚢胞腺癌 254
15 転移性卵巣癌 255
16 尿膜管腫瘍 256
17 膀胱癌（非浸潤性） 257
18 膀胱癌（浸潤性） 258
19 前立腺癌1 259
20 前立腺癌2 260
21 前立腺肥大 261
22 総腸骨リンパ節転移 262
d 損傷
23 膀胱破裂 263
24 大腿仮性動脈瘤 264
e その他
25 子宮内膜症性卵巣嚢胞（卵巣チョコレート嚢胞） 265
26 子宮外妊娠破裂 266
27 尿管結石 267
28 リンパ嚢腫 268
9 骨，軟部 成田賢一 福田国彦
a 骨
1 骨巨細胞腫に続発した動脈瘤様骨嚢腫 270
2 類骨骨腫 271
3 軟骨芽細胞腫 272
4 骨肉腫 273
5 Ewing肉腫 274
6 軟骨肉腫 276
7 Brodie膿瘍 277
8 鉤状骨鉤骨折 278
b 軟部
9 神経線維腫症 279
10 脂肪肉腫 280
11 化骨性筋炎 281
c 関節
12 滑膜骨軟骨腫症 282
13 透析アミロイド骨関節症 283
14 脛骨顆間隆起裂離骨折 284
15 離断性骨軟骨炎 285
16 大腿骨頭すべり症 286
d 脊椎
17 後縦靱帯骨化症 288
18 脊椎の血管腫 289
19 脊索腫 290
20 肝細胞癌の転移性骨腫瘍 291
10 小児 青木克彦
1 三角頭蓋（前頭縫合早期癒合症） 294
2 先天性サイトメガロウイルス感染性脳症 295
3 結節性硬化症 296
4 網膜芽腫（両側性） 297
5 口蓋裂 298
6 先天性大葉性（区域性）肺気腫 299
7 円形肺炎 300
8 気管支肺異形成症（慢性肺疾患） 301
9 前縦隔奇形腫 302
10 壊死性腸炎 303
11 巨大嚢胞性胎便性腹膜炎 304
12 肝内臍部門脈内静脈結石 305
13 腎髄質石灰沈着症 306
14 副腎神経節芽腫 307
15 封入奇形（胎）児（fetus-in-fetu） 308
■索引 309