5版の序

 1999年8月に本書の初版を発行以来7年有余が,そして改訂4版出版後も3年以上の年月が経過した.不断の進歩を続ける精神科薬物療法に関する適切で実用的な情報を提供し,臨床医の日常診療に役立つことを目指す本書は,その目的に沿うベく短期間で改訂を行っているが,今回改訂5版を出版することになった.
 今回の改訂では,2006年に臨床に登場した抗精神病薬アリピプラゾールやSSRIの一種であるセルトラリンなど,将来重要な地位を占めることが予想される新規の向精神薬についてや,添付文書の変更ないし追加も記載している.向精神薬全般が各科臨床で用いられる機会が増加している.本書が薬剤の選択や用法用量などの指針になれば幸いである.

2007年2月
上島国利


初版の序

 本書は主として精神科領域で用いられる向精神薬のうち,精神科治療薬および狭義の向精神薬以外の抗てんかん薬,抗Parkinson薬,抗酒薬,脳機能改善薬などについて解説したものである.
 まず総論として各薬効群の開発史から基礎薬理,その効能効果,副作用につき述べられる.各論では現在臨床で使用が認可されている薬剤総てについて記載がなされている.その際基本となる薬剤や新薬,使用頻度が高い薬剤などについては,より詳細な解説がある.いずれにしろ総ての薬剤の適応・剤型・用量用法・禁忌・相互作用・副作用や使用上の注意については,記述されている.それゆえ,臨床の現場に備えて常に参照して頂くことにより,日常使われる薬剤の必要な知識が得られるように工夫されている.本書の活用により,適切な薬剤が選択され,適正に用いられ,副作用が防止されるように願っている.
 なお精神科領域の薬剤は長期間にわたり使用されることが多く,それに伴いさまざまなタイプの副作用が出現してくる.添付文書もそれらに応じてしばしば改訂される.それらの情報には敏感でありたいし,本書にも反映させたい.本書が現代の向精神薬療法に際して実際的な指針の参考になれば幸いである.

1999年6月
上島国利


目次

総論
I.向精神薬の概念 〈上島国利〉
  1.向精神薬とは
  2.向精神薬の分類

II.向精神薬による精神障害の治療 〈上島国利〉
  1.向精神薬の効果・効用
  2.向精神薬投与に際して
  3.向精神薬の適切な使い方

III.主な向精神薬
A.抗精神病薬 〈木内祐二〉
  1.歴史
  2.分類
  3.薬理作用,薬用動態
  4.適応
  5.副作用
B.気分安定薬 〈大嶋明彦〉
  1.歴史と分類
  2.薬理作用,薬用動態
  3.適応
  4.副作用
C.抗うつ薬 〈山田光彦〉
  1.歴史と分類
  2.薬理作用,薬物動態
  3.適応
  4.副作用と安全性
D.抗不安薬 〈大坪天平〉
  1.歴史と分類
  2.薬理作用,薬物動態,力価
  3.適応
  4.ベンゾジアゼピン系抗不安薬の副作用
E.睡眠薬 〈吉邨善孝〉
  1.歴史と分類
  2.薬理作用,薬物動態
  3.適応
  4.副作用
F.抗てんかん薬 〈横山尚洋〉
  1.歴史と分類
  2.薬理作用,薬用動態
  3.適応
  4.副作用
  5.副作用出現時の対応
G.その他の薬剤 〈巽 雅彦〉
  1.抗Parkinson薬
  2.抗酒薬
  3.脳機能改善薬

各論
1.抗精神病薬
A.フェノチアジン系抗精神病薬 〈小山田静枝〉
  1.クロルプロマジン
  2.レボメプロマジン
  3.プロペリシアジン
  4.ペルフェナジン
  5.フルフェナジン
  6.プロクロルペラジン
B.ブチロフェノン系抗精神病薬 〈小山田静枝〉
  1a.ハロペリドール
  1b.デカン酸ハロペリドール
  2.ブロムペリドール
  3.その他のブチロフェノン系抗精神病薬
    a.塩酸モペロン
    b.塩酸フロロピパミド(塩酸ピパンペロン)
    c.スピペロン
    d.チミペロン
C.ベンザミド系抗精神病薬 〈小山田静枝〉
  1.スルピリド
  2.塩酸スルトプリド
  3.ネモナプリド
D.チエピン系抗精神病薬 〈小山田静枝〉
  1.ゾテピン
E.イミノジベンジル系抗精神病薬 〈坂井俊之〉
  1.カルピプラミン
  2.塩酸クロカプラミン
  3.塩酸モサプラミン
F.インドール系抗精神病薬 〈坂井俊之〉
  1.オキシペルチン
G.ジフェニールブチルピペリジン系抗精神病薬〈坂井俊之〉
  1.ピモジド
H.その他の抗精神病薬 〈坂井俊之〉
  1.レセルピン
  2.配合剤(クロルプロマジン・プロメタジン・フェノバルビタール)
I.非定型抗精神病薬(SDA,MARTA,DSS)
  1.リスペリドン 〈小山田静枝〉
  2.オランザピン 〈山田光彦〉
  3.フマル酸クエチアピン 〈山田光彦〉
  4.塩酸ペロスピロン 〈山田光彦〉
  5.アリピプラゾール 〈山田光彦〉

2.気分安定薬 〈大嶋明彦〉
A.炭酸リチウム
B.カルバマゼピン
C.バルプロ酸ナトリウム
D.クロナゼパム

3.抗うつ薬
A.三環系抗うつ薬(イミノベンジル系) 〈山田光彦〉
  1.塩酸イミプラミン
  2.塩酸クロミプラミン
  3.その他の三環系抗うつ薬(イミノベンジル系)
    a.マレイン酸トリミプラミン
    b.塩酸ロフェプラミン
B.三環系抗うつ薬(ジベンゾシクロヘプタジエン系) 〈山田光彦〉
  1.塩酸アミトリプチリン
  2.塩酸ノルトリプチリン
C.三環系抗うつ薬(その他) 〈宍倉久里江〉
  1.アモキサピン
  2.塩酸ドスレピン
D.四環系抗うつ薬 〈宍倉久里江〉
  1.塩酸マプロチリン
  2.塩酸ミアンセリン
  3.マレイン酸セチプチリン
E.トリアゾロピリジン系抗うつ薬 〈宍倉久里江〉
  1.塩酸トラゾドン
F.選択的セロトニン再取り込み阻害薬(SSRI) 〈山田光彦〉
  1.マレイン酸フルボキサミン
  2.塩酸パロキセチン
  3.塩酸セルトラリン
G.選択的セロトニン・ノルアドレナリン再取り込み阻害薬(SNRI) 〈山田光彦〉
  1.塩酸ミルナシプラン
H.その他の抗うつ薬 〈宍倉久里江〉
  1.塩酸メチルフェニデート
  2.ペモリン

4.抗不安薬
A.ベンゾジアゼピン系抗不安薬 〈白山幸彦〉
  1.ジアゼパム
  2.アルプラゾラム
  3.ブロマゼパム
  4.ロラゼパム
  5.トフィソパム
  6.その他のベンゾジアゼピン系抗不安薬
    a.オキサゾラム
    b.フルタゾラム
    c.メダゼパム
    d.クロルジアゼポキシド
    e.フルジアゼパム
    f.プラゼパム
    g.メキサゾラム
    h.ロフラゼプ酸エチル
    i.クロラゼプ酸二カリウム
    j.クロキサゾラム
    k.フルトプラゼパム
B.チエノジアゼピン系抗不安薬 〈太田有光〉
  1.クロチアゼパム
  2.エチゾラム
C.セロトニン作動性抗不安薬 〈太田有光〉
  1.クエン酸タンドスピロン
D.その他の抗不安薬 〈太田有光〉
  1.塩酸ヒドロキシジン
  2.塩酸カルテオロール

5.睡眠薬
A.ベンゾジアゼピン系睡眠薬
  1.ニトラゼパム 〈太田有光〉
  2.フルニトラゼパム 〈太田有光〉
  3.ロルメタゼパム 〈太田有光〉
  4.エスタゾラム 〈太田有光〉
  5.トリアゾラム 〈太田有光〉
  6.塩酸フルラゼパム 〈太田有光〉
  7.その他のベンゾジアゼピン系睡眠薬
    a.ニメタゼパム 〈太田有光〉
    b.ハロキサゾラム 〈太田有光〉
    c.塩酸リルマザホン 〈吉邨善孝〉
    d.ミダゾラム 〈太田有光〉
    e.クアゼパム 〈岡島由佳〉
B.チエノトリアゾロジアゼピン系睡眠薬 〈太田有光〉
  1.エチゾラム
  2.ブロチゾラム
C.ゾピクロン 〈吉邨善孝〉
D.酒石酸ゾルピデム 〈尾鷲登志美〉
E.バルビツール酸系睡眠薬 〈吉邨善孝〉
  1.バルビタール
  2.フェノバルビタール
  3.ペントバルビタール塩
  4.アモバルビタール
  5.セコバルビタールナトリウム
  6.チオペンタールナトリウム
F.トリクロホスナトリウム 〈吉邨善孝〉
G.ブロムワレリル尿素 〈吉邨善孝〉
H.その他の睡眠薬 〈吉邨善孝〉
  1.抱水クロラール
  2.パッシフローラエキス

6.抗てんかん薬
A.バルビツール酸系抗てんかん薬 〈稲本淳子〉
  1.フェノバルビタール
  2.プリミドン
B.ヒダントイン系抗てんかん薬 〈稲本淳子〉
  1.フェニトイン
  2.エトトイン
C.ベンゾジアゼピン系抗てんかん薬 〈稲本淳子〉
  1.ジアゼパム
  2.ニトラゼパム
  3.クロナゼパム
  4.クロバザム
D.ベンズイソキサゾール系抗てんかん薬 〈稲本淳子〉
  1.ゾニサミド
E.バルプロ酸ナトリウム 〈稲本淳子〉
F.カルバマゼピン 〈巽 雅彦〉
G.ガバペンチン 〈横山尚洋〉
H.トリメタジオン 〈巽 雅彦〉
I.エトスクシミド 〈巽 雅彦〉
J.アセタゾラミド 〈巽 雅彦〉
K.スルチアム 〈巽 雅彦〉
L.アセチルフェネトライド 〈巽 雅彦〉
M.その他の抗てんかん薬 〈巽 雅彦〉
  1.酢酸テトラコサクチド
  2.抱水クロラール
  3.臭化カリウム
  4.臭化カルシウム
  5.臭化ナトリウム
N.抗てんかん薬(配合剤) 〈巽 雅彦〉
  1.フェニトイン・フェノバルビタール
  2.フェニトイン・フェノバルビタール・安息香酸ナトリウムカフェイン

7.抗Parkinson薬 〈巽 雅彦〉
A.硫酸アトロピン
B.フェノチアジン系抗Parkinson薬
  1.塩酸プロメタジン
  2.プロフェナミン
C.アミノプロパノール系抗Parkinson薬
  1.塩酸トリヘキシフェニジル
  2.ビペリデン
D.塩酸アマンタジン
E.レボドパ
F.メシル酸ブロモクリプチン
G.ドロキシドパ
H.その他の抗Parkinson薬
  1.塩酸メチキセン
  2.塩酸マザチコール
  3.塩酸ピロヘプチン
  4.塩酸タリぺキソール
  5.メシル酸ペルゴリド
  6.カベルゴリン
  7.塩酸プラミペキソール
  8.ロピニロール塩酸塩
I.抗Parkinson薬(合剤)
  1.レボドパ・カルビドパ
  2.レボドパ・塩酸ベンセラジド
  3.塩酸セレギリン

8.抗酒薬 〈安部康之〉
A.シアナミド
B.ジスルフィラム

9.脳機能改善薬
A.塩酸チアプリド 〈吉邨善孝〉
B.塩酸アマンタジン 〈磯野 浩〉
C.塩酸ドネペジル 〈磯野 浩〉

10.ベンゾジアゼピン受容体拮抗薬 〈岡島由佳〉
A.フルマゼニル

11.悪性症候群治療薬 〈岡島由佳〉
A.ダントロレンナトリウム

薬品名索引
事項索引