序

　私共は1999年に向精神薬の総てを解説した「精神科治療薬ハンドブック」を出版した．便利な手引き書として，多くの臨床医が使用されていると聞く．その姉妹篇として，精神科領域の疾患や，精神症状の治療について，それぞれの疾患や症状の簡単な解説と，その薬物療法の実際を処方例を中心に記述したのが本書である．

　各疾患に適応を有する薬剤を可能な限り単剤で用いるのが私共の治療の原則である．しかしながら事情によっては，正式な適応がなくても日常臨床で多くの治療者が用いて有効かつ安全な薬剤については，処方実例が記載されているが，「保険適応外」の断り書きがそえられている．

　有効で安全な薬物療法を施行する際の１つの指針として本書が何らかのお役に立つことを願っている．

　　　　　2001年３月

上島　国利

目　次

�T．向精神薬の合理的な用い方〈上島国利〉　1

　　　１．薬物療法の開始に際して…　 2

　　　２．薬物療法の実際…　 3

�U．精神障害とその治療　5

　　　１．精神分裂病…〈井口　喬〉　 6

　　　　　Ａ．破瓜型精神分裂病…　 8

　　　　　Ｂ．緊張型精神分裂病…　11

　　　　　Ｃ．妄想型精神分裂病…　14

　　　　　Ｄ．分裂感情障害…　17

　　　　　Ｅ．急性期分裂病…　20

　　　　　Ｆ．慢性期分裂病…　23

　　　２．躁うつ病（気分障害）…〈工藤行夫〉　26

　　　　　Ａ．単極性うつ病…　30

　　　　　Ｂ．軽症うつ病…　33

　　　　　Ｃ．仮面うつ病…　35

　　　　　Ｄ．老年期うつ病…　38

　　　　　Ｅ．児童・思春期のうつ病…　40

　　　　　Ｆ．難治性うつ病…　43

　　　　　Ｇ．双極性うつ病…　46

　　　３．不安障害…〈太田有光〉　49

　　　　　Ａ．パニック障害…　51

　　　　　Ｂ．全般性不安障害…　54

　　　　　Ｃ．対人恐怖症…　57

　　　　　Ｄ．強迫性障害（強迫神経症）…　60

　　　　　Ｅ．外傷後ストレス障害（PTSD）…　63

　　　　　Ｆ．ヒステリー（解離性障害）…　66

　　　　　Ｇ．心気症…　69

　　　４．心身症…〈大坪天平〉　71

　　　　　Ａ．過敏症腸症候群（IBS）…　73

　　　　　Ｂ．過換気症候群…　76

　　　５．人格障害…〈平島奈津子〉　79

　　　　　Ａ．境界性人格障害…　81

　　　６．器質性精神病・症状性精神病…〈岡島由佳〉　84

　　　７．痴呆…〈磯野　浩〉　89

　　　　　Ａ．アルツハイマー病…　91

　　　　　Ｂ．血管性痴呆…　94

　　　８．知的障害（精神遅滞）…〈野嵜善郎〉　97

　　　９．アルコール依存症…〈三村　將〉 100

　　　　　Ａ．急性期… 102

　　　　　Ｂ．慢性期… 105

　　　　　Ｃ．振戦せん妄… 107

　　　10．薬物による精神障害…〈中込和幸〉 109

　　　　　Ａ．覚せい剤中毒… 112

　　　　　Ｂ．有機溶媒中毒… 115

　　　11．産褥精神病…〈宍倉久里江〉 118

　　　　　Ａ．産後うつ病… 121

　　　12．摂食障害…〈平島奈津子〉 124

　　　　　Ａ．神経性無食欲症… 126

　　　　　Ｂ．神経性大食症… 129

　　　13．睡眠障害…〈巽　雅彦〉 132

　　　　　Ａ．神経質症不眠症… 136

　　　　　Ｂ．夢中遊行症（夢遊病）… 139

　　　　　Ｃ．夜驚症… 142

　　　　　Ｄ．悪夢… 143

　　　　　Ｅ．ナルコレプシー，周期性傾眠症… 146

　　　14．小児科および青年期の精神障害…〈野嵜善郎〉 150

　　　　　Ａ．注意欠陥／多動性障害… 152

　　　　　Ｂ．チック障害… 154

　　　　　Ｃ．抑うつ障害… 156

　　　　　Ｄ．不登校… 160

　　　15．てんかん…〈稲本淳子〉 161

　　　　　Ａ．全般発作… 163

　　　　　Ｂ．部分発作… 166

　　　　　Ｃ．てんかん発作重績状態… 169

�V．精神症状とその治療 173

　　　１．興奮状態…〈坂井俊之〉 174

　　　　　Ａ．意識障害を伴う興奮状態… 174

　　　　　Ｂ．緊張病性興奮… 177

　　　　　Ｃ．躁性興奮… 180

　　　　　Ｄ．てんかんによる興奮… 183

　　　　　Ｅ．知的障害にみられる興奮… 186

　　　２．幻覚…〈小山田静枝〉 188

　　　　　Ａ．幻聴… 188

　　　　　Ｂ．幻視… 191

　　　　　Ｃ．その他の幻覚… 192

　　　３．妄想…〈小山田静枝〉 193

　　　　　Ａ．分裂病の妄想… 193

　　　　　Ｂ．分裂病以外の疾患の妄想… 195

　　　４．感情鈍麻，無関心，意欲の減退…〈小山田静枝〉 198

　　　５．昏迷状態…〈坂井俊之〉 201

　　　　　Ａ．緊張病性昏迷… 201

　　　　　Ｂ．うつ病性昏迷… 203

　　　　　Ｃ．ヒステリー性昏迷… 204

　　　６．躁状態…〈宍倉久里江〉 205

　　　７．抑うつ状態…〈宍倉久里江〉 208

　　　８．不安，緊張，焦燥…〈宍倉久里江〉 211

　　　９．強迫症状…〈宍倉久里江〉 214

　　　10．恐怖症状…〈宍倉久里江〉 217

　　　11．あれこれ身体の症状を訴える（心気症状）

…〈吉邨善孝〉 220

　　　　　Ａ．神経症の心気症状… 222

　　　　　Ｂ．その他の疾患の心気症状… 225

　　　12．意識障害…〈山田光彦〉 228

　　　　　Ａ．せん妄… 230

　　　　　Ｂ．錯乱，アメンチア，もうろう状態… 233

　　　13．けいれん…〈稲本淳子〉 236

　　　14．夜ねむれない…〈岡島由佳〉 239

　　　15．体中の痛みがとれない（慢性疹痛）…〈岡島由佳〉 242

　　　16．物忘れがある…〈磯野　浩〉 245

�W．精神科救急，ICU〈岡島由佳〉 249

　　　１．精神科救急−総説… 250

　　　２．ICU症候群… 253

�X．薬物の副作用〈渡辺雅幸〉 257

　　　　　Ａ．抗精神病薬… 258

　　　　　Ｂ．抗うつ薬… 264

　　　　　Ｃ．気分安定薬… 267

　　　　　Ｄ．抗不安薬，睡眠薬… 268

　　　　　Ｅ．抗てんかん薬… 272

附　向精神薬一覧〈尾鷲登志美　上島国利〉 275

索　引 … 315