5.アーシング・ケーブルワークについての考察


今日までのアーシングチューンナップで筆者(ぷがさん)が考えているアーシングのケーブルワークについての考えをまとめてみます。
あくまで現時点での考え方ですので、今後みなさんのご意見や実験を拝見しながら、変更することもあります。
今まで勘を頼りに(漠然とは以下と同様な内容を考えてはいたと思いますが)アーシングする場合もあったと思いますので、
このコンテンツが考え方のたたき台になればと思います。
素人の考えなので間違い等ありましたら遠慮なく掲示板でコメントを頂きたく思います。筆者も勉強になりますので嬉しいです。(^^)

1. 2つの電源のアーシング
(2001/06/03)
(2002/10/01更新)

図1

まず、クルマにおける全体の電源回路を考える場合、簡単に図にするとこの様に描けると思います。
電源としては、エンジン作動時はバッテリーとオルタネータの2つの電源が共存しています。

電源負荷が軽い場合、電流のほとんどがオルタネータの発電でまかなわれ、図1で示す3つの
回路ループ、A,B,Cループがメインで機能するはずです。

青線がアースラインですが、純正状態ではほとんどフレームボディやエンジンを通ってこれらの
線が結ばれている訳ですね。
いかにも心もとない気がします。(^^;

この状態ではバッテリーは充電されるため、マイナスターミナルからオルタのマイナスへと
電流が流れます。

図2

(2002/10/01更新)
次にエアコンやラジエーターファン、ライト等の電装系の消費電流が増え、エンジンの回転が
さほど上がらない場合、いよいよバッテリーが放電を始め、Eループ回路が機能すると考えられます。
夏の夜の渋滞なんかが典型的ケースでしょう。(オルタも回らないしエアコンもライトも使う)

また、スポーツ走行等の高回転域では点火コイルの消費電流が増え、Dループの比重が
大きくなると考えられます。

オルタの電流供給が追いつかない分をバッテリーが供給するため、図1のループCによる充電は
この場合、かなり小さいと考えられます。

更に、バッテリーはオルタネータと比べ、瞬間的に大きな電流を供給する能力があるため、点火系や
電装系がその様な電流を要求した場合、図1のモードで電流が供給されている状況においても
DループあるいはEループが瞬間的に機能すると考えられます。

以上の様にマイナス側の経路としては回路ループA,B,C,D,Eが想定出来、これら5つの
ループのアースラインを総合的に強化することが究極のアーシングになると考えるわけです。

(2001/11/05追記)
バッテリーを中心にアーシングを施工した場合、C方向の(バッテリーマイナスから外方向へ流れる)電流が
かなり増える場合がありますが、これはこの全ての電流が必ずしもバッテリーに充電されているわけではなく、
D、Eループでマイナス側に来た電流が、バッテリーマイナス端子をバイパスに使って
Cループのマイナス側に流れる電流があるということです。(^^)

つまり、電気的にA、Bのループのオルタネータに戻りたい電流がバッテリーマイナスを経由して
Cループのマイナスを通って戻ると言い換えることも出来ますね。

同様に、バッテリーマイナスに直接ケーブルを集めずに分岐ブロックを用いた場合も、分岐ブロックが
バイパスポイントとしての働きをすることもあると考えられます。
図3


図4
(2002/10/01更新)
以下は思考実験的なお話です。
模式的にループAからEを網羅するかたちで究極?のアーシングケーブルワークを
考えるとどんな風になるのかを考えてみたのが、図3です。
バッテリーとオルタ間はA,B,D,Eと異なり経路がハッキリしているため、強力に接続します。
そして、ループA,Bを考えたアースはオルタネータから放射状に伸びます。
ループD,Eを考えたアースはバッテリーから放射状に伸びます。
ケーブルの重量増を気にしなければ図4のパターンや、図3と4の複合も考えられますね。

いかがでしょうか?
通常売られているアーシング用の完成品はC,D,Eのみのアーシングと言えると思います。
確かに電流負荷の大きな場合に機能するD,Eラインを押さえていれば充分という見方も
出来るでしょう。

しかし、実際の走行ではA,Bも必要ですよね。
果たして電流負荷の軽い通常走行でも点火系、電装系のデバイスはフルパフォーマンスを
発揮してくれているのでしょうか?
A,B,Cの3つのループアースが集中しても電流は充分流れるでしょうか?

A,Bのケーブルを施工しない場合のマイナス電流は、D、Eループのマイナスケーブルから
バッテリーターミナルを経由してオルタに戻ろうとしてCループのケーブルにD,E分の電流も
集中すると考えられます。
つまり、C,D,Eのみのアース施工の場合には特にCのマイナスケーブルはA,Bの
バイパス分の電流も流れるため、他のケーブルよりも更に
電流容量に余裕をもたせる
必要があるといえます。


実際、筆者がアイドリング状態(エアコン、ライトOFF、ラジエータファン非作動)で電流を測定した
結果を見ますと、マイナス電流はバッテリーよりもむしろオルタへ向かっているのがハッキリ
分かります。
つまり、雑誌や広告等でよく書かれている、「マイナス電流をバッテリーに戻してやる」という謳い文句は
D、Eループについては正解、A、B、Cループに関しては不正解で「マイナス電流をオルタに戻してやる」
ということになります。




2.オルタネータのアーシングは良いこと?
(2001/06/16)

シミュレーション1
アーシング施工無しの場合


シミュレーション2
オルタネータを含むアーシング施工時の場合

前述の「2つの電源のアーシング」を読むと、オルタネータにアーシングするのは良いことだ!と
思われるかもしれません。
しかし、オルタネータというデバイスはエンジンのパワーの一部を使って発電を行っているので、
発電量が増えるとオルタを回転させるのに必要なトルクも増えるため、アーシングを施すと、
この発電に要するパワーロスが増えると考えられます。

ちょっと思考シミュレーションしてみましょう。
左のグラフは実際の測定データではありません。
以下のパラメータをイメージしたグラフです。横軸はエンジン回転数。
赤色:エンジン出力
緑色:点火系要求電圧(又は電流)
水色:点火系への電流量
黄色:オルタネータによる発電トルクロス(下に行くほどロスが増大)

まず、上のグラフですが、アーシング無しでは中低回転では点火に対して充分な電流供給がありますが
高回転では電流が不足気味となって、エンジン出力は頭打ちになっています。

そこで、オルタネータを含むアーシングを施すと、下のグラフのイメージになると考えたわけです。
バッテリーへの電流量も増えるため、供給電圧は上がり、点火系への電流量も増えます。
緑色の点火系要求電圧は上のグラフと同じ線を描いています。
このため、充分以上の電流量が確保され(水線と緑線の差が大きい)、発進時や加速等、一時的に
必要トルクが上がってもシッカリと点火できるので太いトルクが得られます。
しかも、この時点ではエンジンと同期しているオルタネータの回転数も低いためロスも小さいです。

この結果、雑誌で報告されているようにパワーバンドが下の回転数に少しシフトするという結果が
得られるのだと思われます。
そして、この低回転トルクが燃費改善効果にも効いてくると思われます。

そして高回転まで回すと、点火要求電圧に対しても純正状態よりは供給能力が追いついており、
エンジン出力の向上が得られるというわけです。

ただし、黄色のオルタネータの発電量もかなり増えるため、発電に要するトルクロスも増えてくるため
アーシングで得られるパワーは、赤線の増分と、黄線のロス分のバランスで決まり、場合によっては
エンジン出力最大値はアーシング無しと変わらないか、もしかすると落ちるかもしれません。
中回転までは確実にメリットがあるのでしょうけどね。(^^)
オルタネータによるパワーロスは通常で3psから5psということですが、アーシングしていると、
これは物理的に増えそうです。
過給器付きであれば、おそらく充分に黄色のロスを上回るパワーを得られるのではないでしょうか。

つまり、人によっては、あるいはクルマによってはオルタネータにはアーシングしない方が良いという
意見や考えがあってもおかしくないということです。
これはまさに赤線と黄線のバランスのどこを取るかという調律(チューニング)ではないでしょうか?(^^;

おそらく寒冷地仕様車や、大型のバッテリーを積んでいる車両は発電によるトルクロスが大きいはずです。
そこで、筆者の思いついたアイデアとしては、オルタのロスの大きいクルマでは中回転までは
オルタのアースを接続してアーシング効果によるトルクアップを得、高回転ではリレーを用いて
オルタのアーシングをカットするというのはどうでしょう?(^^)b
確かプラス側をカットするデバイスは発売されているのですが、この場合は、完全にオルタの発電を
止めてしまうので、バッテリーへの負荷はかなり大きくなってしまいそうです。
その点アースなら安心かもしれません。
しかも中低回転ではトルクアップのメリット付きですから。
(注:車種やプラグにもよると思います)
問題は大容量&高耐久性のリレーが必要なことですね。(^^;


3. アーシングは静電気を除電する?
(2001/06/16)

図5

さて、アーシングのもうひとつの可能性を書いておきます。
静電気の除電による流体系の摩擦抵抗の軽減効果です。
これは予想の範疇になるかもしれませんが、可能性はあると思います。

特に空気が高速で流れるところ、サクションパイプ、インマニ、スロットルバルブ、インタークーラー、
エキマニ、マフラーなどで空気とパイプの摩擦で静電気が生じています。
特に温度の低い吸気側では空気が乾燥する冬になるとかなり帯電するのではないでしょうか。
静電気はその場に空気分子を引き止めようとしますから、抵抗になると考えられます。

また、他の流体系にも当然摩擦はあり、空気程でないにしても大なり小なり静電気が発生していると
考えると、冷却水やオイル、フルードなどに至るまで、微妙なロス低減効果を出している可能性も
あると思われます。
但し、一番効きそうなのはやはり空気系のところだと筆者は考えています。

これらのパーツにアーシングしていれば、バッテリーのマイナス側は他の個所と比べてボディと強固に
電気的に接続されているので、ボディを伝ってタイヤから地面へと放電され易くなると考えられます。
静電気にはプラスの静電気、マイナスの静電気がありますが、数キロボルトの電荷をもっているため
バッテリーの極性は無視されるはずです。
ボディと密に導通していることが重要なのですから、アーシングを施工していれば、副次的に
この観点でもメリットが得られることになります。

もしかするとこの効果を最大上げるには、昔流行った?放電用の地面を引きずるベルトを
マイナスターミナルからバッ直するのが良いのかもしれません。(^^;
走行風で浮いては意味がないけど。(^^;
あるいは、電気的に地面に近い部分としてサスダンパーが固定されている左右のストラットタワーを
中心にワイヤリングすることなども考えられますが、ゲーブルだらけになるし重量も増えるので(^^;
得られる効果とのバランスを考えると通常のアーシングを兼用するのが無難でしょう。(^^;