10.プラグケーブルアースについて


10-1.施工例


絶縁テープで被服する前の完成目前のアーシングプラグケーブル。
ウルトラ(永井電子)のプラグケーブルを改造して作りました。
<注意>
1.静電容量とインピーダンスを揃えるためにアースの被服線の長さ、および、取り出し線の長さは全て同じにしてあります。
 各気筒の条件が異なると点火タイミングのバランスが狂う心配があるためこの様にします。
 また、コンデンサ効果があるなら電圧の立ち上がり時間も変化するはずですから、その意味でも静電容量を揃えることが大切です。
2.被服線は長すぎると高回転での着火性を損なうことがあるので、長ければよいというものではありません。
 低回転域でのトルクアップ効果と吹け上がりをテスト走行で確認し、長さを調整することをお勧めします。


プラグコードのアースはヘッドカバーに2本づつ共締め。
そこからタワーバーに伸びた赤いコードでバッテリーのマイナス端子へ引いています。


熱対策のためコルゲートチューブを被せた状態。アース線に編み線を使う場合は不要かもしれません。


10-2.プラグケーブルアースはなぜ効く?
(2000/03/20更新)

まず間違いなくコンデンサ効果でしょう。
プラグコードに導体を被服することで、コンデンサとなっているのです。
具体的には大きく分けて次の2つの効果があると考えられます。

1.放電時間の延長
コンデンサは電荷を貯めこむ(蓄電する)能力がありますから1回のパルスを1度貯めこみ徐々に放電することで放電時間が
延長されるわけです。
非常に短いパルスの話しですから、わずかな静電容量によって数マイクロ秒伸びてもフィールやパワーに影響することが考えられます。
ただ、この効果は恐らくプラグコードの抵抗値が高い方が大きいはずです。
これはコンデンサの放電時間を示す、いわゆる時定数が大きくなるためです。
ウルトラのプラグコードは実測したところ、長いものも短いものも2Kオームに揃えられていますから、
比較的この効果が大きいかもしれません。

2.点火パルス電圧のピーク電圧の強化=スパークの強化
なぜスパークが強力になるかというと、おそらくディスビが発したパルス電圧を効率的に伝えるためだと思われます。
では、「効率的でない状態」とはどういう状態かというと、
1.電圧の立ち上がりが鈍る(なまる)。
2.ピーク電圧が落ちる。
という状態です。

ところで、コンデンサの使い方にスピードアップコンデンサと呼ばれる使い方があります。
詳しいことはさておき(^^;下の図を見ていただけるとわかるかと思いますが、コンデンサを入力側の抵抗と並列に
入れることで、出力の波形をあまり劣化させずに出せるということです。
オーディオ回路であれば、周波数の高い音もこもらずに増幅できるということです。


入力側をディスビ、入力側抵抗をプラグコード、出力側をプラグと見たてると、似ていると思うのですがいかがでしょうか。
コンデンサがある方がロスなく伝わると思いませんか?


10-3.プラグケーブルによるコンデンサ効果の違い

(2000/03/26更新)

表題の件について考察してみたいと思います。
プラグコードにはアーシングタイプを除くと次の2種類に大別できると思います。
そして、これらのケーブルにアーシングを施した場合、次のような差があると私は考えています。

Aタイプ.内部抵抗を下げ、電流成分の伝達性能を狙ったタイプ。(スプリットファイヤ・ツインコア等)
アーシングを施した場合のプラグコードの等価回路予想図は下の通りです。

ケーブル全体がまんべんなく均一の抵抗を持っているため、アーシングの被服部分が丁度コンデンサC1がまたがる
ようなカタチになるはずです。
そして、被服からアースすることでC2のキャパシタ成分が生じるはずです。
これにより、C1がスピードアップコンデンサの役目を果たし、C2が蓄電による放電時間の延長効果を果たすと予想されます。

特徴としてはケーブルが低抵抗タイプであるため、C2の蓄電効果が小さく(時定数が小さく)、C1の効果が目立つと思われます。
つまり、点火パルスのピーク電圧重視ということになります。
一般的に回転が上がるほど点火パルスのピーク電圧が下がる傾向がある様ですので、高回転でも電圧低下の少ない
「高回転型ケーブル」の特性になると考えられます。

ケーブル全体で抵抗を持っている純正プラグコードでもC1の効果が出ると思われます。
ただ、抵抗が高い分C2の効果の比重が大きくなるはずです。

また、このタイプのケーブルの場合はアースをせずに銅線で被服だけ巻いてもC1だけの効果が出る可能性があると思われます。
むしろこのタイプの場合はアースしない方がパルス波形が鈍らずスピードアップコンデンサの特性が活かせるかもしれません。

ただし、アースしない場合の注意点としては、ピーク電圧の伝達性をかなりアップさせるので電磁波ノイズは大きくなると思われます。
Bタイプ.内部抵抗を巻き線抵抗などを用いてケーブルの長さに影響されず一定に保ったタイプ。(ウルトラ等)
アーシングを施した場合のプラグコードの等価回路予想図は下の通りです。

なぜコンデンサ成分がひとつしかないかというと、ウルトラ製などのケーブルはケーブルの両末端に抵抗を配しているため、
アーシングの被服部分はほとんど抵抗がないと予想されるからです。
つまり、R1とR2はソケット内の抵抗で、C1は抵抗にはまたがらないということです。
したがって、スピードアップコンデンサの効果はほとんどないと思われます。

その反面R1、R2の抵抗が充分大きいため、時定数が大きくなり放電時間の延長効果はかなり大きくなるはずです。
CDIの効果に喩えるならマルチパルス点火のような感じになると思われます。
点火パルス立ち上がりのピーク電圧は、2KVを大きく超える様ですから、これが一度貯め込まれて2KV程度の放電
時間を延ばすわけです。
つまり、これはトルク重視「中低回転型ケーブル」の特性になると考えられます。
扱い易いエンジン特性になることが期待できます。

また、パルスピークが鈍るはずですから電磁波ノイズもかなり減ると思われます。
上の等価回路はまさにノイズフィルター回路そのものな状態です。(笑)

逆に欠点として考えられるのは、スピードアップコンデンサとは対称的に波形を鈍らせてしまうため、中低回転は
供給パルスに余裕があるため長所が発揮されるものの、供給パルスが弱くなる高回転時にはスパークが
弱くなってしうまうと思われる点です。
そこで、供給パルスから強力にすることが可能なエンジンのアーシングとの組み合わせが活きてくると考えるわけです!
欠点が補間され、長所が伸びるわけですね。
これをウルトラアーシング理論と命名しましょう。(笑)

効果は低回転にとどまらず、エンジンのトルクカーブのピークがある4000〜5000rpmのダッシュ力も上がっている様です。

さて、注意点としては、このタイプのコードはアースを確実に行わないと効果が出ないということです。
C1のグランドアースの(バッテリーまでの)電気抵抗が低ければ低いほど良いです。


尚、1の特性も2の特性も両方欲しい!!つまり、低回転のトルクも高回転の馬力も欲しいという人は高価なCDIを買いましょう。
プラグコードのアーシングとの組み合わせは無意味ですが、ボディーアーシングを併用する価値はあるでしょう。

ただ、ここで書いています通り、エンジン&ボディのアーシングと組み合わせると、強力に効くケースもあるので、
比較的安価に出来る自作アーシングプラグコードを試してからでも遅くはないでしょう。

興味があるのはこれまた高価なノ○ジーのプラグコードです。
恐らく抵抗値を測って高ければBタイプに族するでしょうし、低ければAタイプでアースはノイズ対策と思われます。
どちらの特性なのかを知らずに買って、自分の乗り方や求める特性とミスマッチだと高価なだけに失敗したときが痛いといえます。
#その意味でもやっぱり自作が有利か?


10-4.プラグケーブルアースの○と×

(2000/03/26)
さて、ボディ&エンジンアーシングと同時にプラグコードアーシングを施してから少し走り込みましたので、
○と×、というよりも向く人、向かない人をまとめてみたく思います。

私が行ったプラグコードのアーシングは10-3.「プラグケーブルによるコンデンサ効果の違いについて」にて
書きましたBタイプです。
少し乗ってみて考察通りの特性だということを確信しました。
つまり、ウルトラ製コードをアーシングしたものは中低速重視のプラグコードであるということです。
ボディ&エンジンアースの強化との併用で5000rpmまでは明かなトルクアップがあります!
ただ、それ以上(5000rpm〜7000rpm)がイマイチ
これが私にとっての×なのです。
どうも高回転でのパンチ力や吹けあがりに欠ける気がするのです。


では、どういう人にウルトラコードのアーシングが向くのかというと
1.燃費を改善したい人
2.混雑気味の都会で低速トルクを活かして楽に走りたい人

になると思います。
この人たちにとってはになる可能性が高いです。

逆に向かない人は
1.高回転を好み、スポーツ走行の機会が多い人。
2.サーキット走行をする人。

となります。
この人たちにとっては×となる可能性が高いです。
好みが合わないんですね。
私もこちらです。(笑)

原因は、おそらくというか、考察通り、点火パルスの波形が鈍ることが、ピーク電圧が重視される高回転域で
不足するためだと思われます。
ウルトラのプラグコードをアーシングするとエンジン音が低くなります。

私は、今までの経験から次の様に考えています。あくまで、私個人の推測ですが
エンジンの音が低音になるということは、燃料の混合気が点火スパークの着火力に対して濃いめの
傾向を示しているということです。

なぜならば、エンジン音が低くなる場合については次のケースが思い当たるからです。
1.燃調を濃くした場合。(ある濃度まではトルクは上がる)
  アクセルの踏み込み量が減る点もプラグコードのアーシング(Bタイプ)と似ています。
2.プラグの熱価を高くして冷え過ぎ気味の場合。(この場合はトルクも出ない)

某ノ○ジーホットワイヤーがAタイプかBタイプかわかりませんが、Bタイプだとすると購入者が後者なら
後悔することになる可能性もあると思います。
Bタイプで、放電時間が長くなってもスパークは明るく派手に見えるはずですからね。
スポーツ走行重視の人が問題とするのは
「ガス流の速度も高くなり、点火電圧も下がる条件で点火スパークは充分強力に確保されるのか?」
なのです。
普通の空気中で、高速ガス流もないところ、かつ、スパーク電圧に余裕のある状態でデモスパークを
「どうです凄いスパークでしょ?」と見せつけられても何の意味もありません。(笑)


次に、ウルトラプラグコードをアーシングした場合(つまりBタイプ)の燃調について感じたことを書きます。
私のクルマにはサブコンのFIELD HYPER-Rを付けています。
どうもノーマルに対して濃くすると、吹けあがりが悪くなり安い様です。
薄めにする方が、低速でもパワフルに走ってくれるみたいです。

もともと燃調操作には濃い目の方がトルクが上がる作用がありますが、Bタイプコードは
中低回転でも充分にトルクが出ることと、スパーク時のピーク電圧が低いため空燃比が薄めの方が
むしろ着火性が良くなると思われることからも私は薄めが良いと思っています。
これによって、更に燃費は良くなるはずです。