MEET THE RESIDENTS


ミート・ザ・レジデンツ

Recorded:1973.02〜.10
Released:1974.04


 記念すべきデビューアルバム。これを聞かずしてレジデンツを語ることは許されないという名盤中の名盤。その後の彼等の音楽性を決定づける全ての要素が詰まっており、当時から今日に至るまでの「誰にもマネできないし、マネしようとも思わない」サウンドが完全に確立されている。意外なことにシンセサイザーは一切使われておらず、楽曲はピアノ・管楽器・ギター・ベース・ドラムス・声といった生楽器で構成され、その全てに、何をどう繋いで加工してるのかさっぱり解らないグロテスクなエフェクトと、意図的に個々の楽器の輪郭をボヤかしたイコライジングとが施され、全体として悪夢&狂気の音像が鳴り響くという、シンセに頼らずとも非現実的な音空間を作り上げられることを立証した問題作だ。実のところ、当時出始めたムーグなどのシンセサイザーは、若きレシデンツには予算の都合上手に入らない高価な代物であっただけであるが。多くの曲がピアノから録られたためであろう、びろびろでゆるんゆるんなリズム感もこの1stで既に全開しており、聴く者の緊張感や勤労意欲を全て排除せしめる脱力感は他に類を見ない。かと言い、リズムが甘い事による不快感は全然感じさせないのが不思議なところで、「いい湯加減のお囃子」的ツボが(おそらく無意識に)押さえられているようだ。また、録音状態と過剰なエフェクトに隠れがちだが、メロディーとアンサンブルは異常なほど奇麗に洗練されており、コンポーザーとしての音楽性の高さは注目に値する。ちなみに、1曲目にはナンシー・シナトラの「Boots」をカヴァーしているが、この頃から原曲を無茶苦茶に解体・再構築する悪意に満ちた姿勢は変わっていないと言える。

変態度★★★★★★
ゴーホームアメリカ度★★★





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