品川百景第三十一番『品川寺』



品川寺(ほんせんじ)

 真言宗醍醐寺派の別格本山で、開創は寺伝によれば大同年間(806〜810)といわれ、品川区内では最も古い寺である。江戸33観音札所の第31番。
 本尊は水月観音で、弘法大師が東国を教え導きの巡行をしているときに、この地域の領主、品河(しなかわ)氏に水月観音を与えたものを代々同家が伝えてきた。応永2年(1395)足利・上杉の合戦で品河一族は亡び、それからは草堂に安置されていたという。また江戸城を築いた太田道灌もこの像を信仰し、彼の持仏であった聖観音をここに移して本尊としたともいわれている。
 境内の右奥に朱塗りの本堂があり、その前には室町期に鋳造したとされる鉄灯籠1基や、第2時世界大戦に関連して出陣学徒慰霊の「まことの鐘」、戦争裁判殉国者慰霊の「仁慈の鐘」がある。毎年5月には、火渡り荒行修行が行われている。
 寺蔵の「絹本着色仏眼曼茶羅図(けんぼんちゃくしょくぶつげんまんだらず)」(東京国立博物館寄託)は鎌倉期のもので国指定の重要文化財である。


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