品川百景第四十八番『日本酸素記念館と庭園』


 


 この場所は、1911年(明治44年)5月に、日本酸素が酸素の製造を開始した、歴史的な場所です。
 酸素ガスが、将来のわが国の産業の発展に不可欠なものであると考えた山武商会の創始者・山口武彦氏は、当時の日本銀行副総裁・高橋是清氏ほかの後援を得て、1910年に日本酸素合資会社を創立しました。これが現在の日本酸素株式会社の前身です。
 この場所を酸素工場の用地に決めたのは、「空気から酸素を取るのだから、山の中がよい。人家の少ないところが酸素がたくさんあるだろう」という、今では信じられない理由からでした。実際、その頃この土地は、ヤブや雑木林に囲まれていました。
 その後、産業の発展とともに酸素事業も急速に拡大して、日本酸素の工場は各地につぎつぎと建設されました。その結果、この工場は新しい工場にその役割をゆずり、1934年(昭和9年)に閉鎖されました。
 この工場は、幸いに関東大震災にも、また第二次大戦にも被害をまぬがれました。そこで、わが国酸素工業の貴重な歴史をつたえるものとして、1965年(昭和40年)に開設されたのが、この日本酸素記念館です。
 記念館の建物は、当時のレンガ造りが保たれています。また、館内に展示されている機器は、いずれも当時使われていた歴史的なものばかりです。

品川百景一覧へ