連続推理小説『黄昏の死角』 第4話

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 村上の報告は続く。
「さらに、犯人が着用していたと思われるポロシャツとスニーカーです。これもまた犯人が着用しているのを岩岡と中原が目撃しています。裏の川に浮いているのが発見されました。ポロシャツは一見香川急便の配達員が着ている横縞のものに似ています。香川の本社に明日一番で確認を取ります」
「確認中のものが多いですね」
 ここまで来て初めて笠井は異論を唱えたが、彼自身も本気で言っているわけではなかろう。
「はい、なにぶん夜も遅いものですから」
「それで、スニーカーというのは?」
「最近はやりのマイキのものです。サイズは26.0、白の新品です。自分はマイキに詳しくないので、手に入りやすいものなのかどうかは今のところわかり兼ねます」
「それこそ明日調べることにすればよいでしょう」
「はい。ただし、今のところ発見されたのは右だけです。左は川底か、あるいは流れてしまったものと思われます。念のため、明朝早くから川をさらえるよう手配はしておきましたが」
「見つかったとしても、あまり期待はできないかも知れませんねえ」
 雅なしゃべり方だが、それが鼻につくということがない。笠井の不思議な魅力であった。
「しかし、シャツはともかく、どうしてそのスニーカーが犯人の物とわかるのです? 岩岡君か中原君が見たのですか?」
「室内に、スニーカーで走ったような跡があったのです。これも詳しくは確認中ですが、昨夕は小雨が降っていたため、絨毯や古新聞の上に靴の形が比較的明瞭に残っていたんです」
「じゃ、これも結果を待つとしましょう。あとはどうです?」
「犯人がかぶっていた帽子です」
 帽子と聞いて、岩岡がぴくりと反応した。小さく「くそっ」という声と、どん、と机を拳で叩く音が鈴木の耳に届いた。
「これもよくあるマイキの帽子です。紺色でサイズは56センチ。やはり科研に回してあります」
「被害者のものではないのですか?」
「それは2つの理由で否定されます。1つは、犯人と見られる配達員がその帽子をかぶっているところを岩岡と中原が目撃しているからです」
 ちょっと得意そうに中原がうなずいた。
「第2に、これは厳密には司法解剖の結果を待たないといけませんが、頭のサイズが異なるようです。ガイ者の部屋にあった他の帽子を2つほど調べましたが、どちらも55センチで遺留品より小さいのです」
 村上の長いが的確な、そしてやや熱い報告が終わった。

(続く)

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